「覚悟」母性 Elyさんの映画レビュー(感想・評価)
覚悟
この作品を観るのに気持ちの整理が必要だった。
題材が母と娘。
重い作品だよな〜と思うとなかなか観るに至らず
観るためには精神状態が正常な時に見なければ。と覚悟が必要だった。
実際、覚悟して観て正解だったかな。
時代は昭和で、
戸田恵梨香さん演じる娘と大地真央さん演じる母
大地真央さんは戸田恵梨香さんを思いやりのある優しい娘に育てあげていた。
ハタから見たら、優雅でお嬢様育ちの普通の親子だったように思う。
優しい言葉、耳障りの良い言葉の裏側には、愛に隠された裏側には一体何が隠されていたのかな、とゾクッとした。
母は娘を確かに愛していてたけれど
一見、普通に見える娘の歪みに蓋をして
家族を持てば変わるとか、良い人と巡り会えば変わるとか、そういう他人任せな思考が昭和の母だなと感じた。
家が火事で燃えた時、自分の娘より自分の母を優先する娘を見てさぞ怖かったことだろうな。
私でも怖い。こんなに依存していたのかと愕然とする。
同時に自分を責めてしまうかもしれないけど
目の前で自殺した時は、大地真央さんも恐ろしい母だと思った。
結局は、娘は母の願いを聞かざる得ない状態になり、思いを縛ってしまった。母の願いを叶えるために。怖い。。。
これじゃあ、願いを込めた人形のよう
思考も、思いも願いも全て母のもので、自分がない。
母が望む娘でいたいという願望だけが残った人形
それは、高畑淳子さん演じる義母が老いた時に叶うという皮肉さ
それを怪演した戸田恵梨香さんは演技がとても上手くて、観ててゾクッとした。
永野芽郁さん演じる娘は
母が喜ぶから、正しくあろうとしていた。
自分本位な正義感を振り撒いていて、歯止めがわからない状態だった。
祖母からの愛は言葉にできて
母からの愛は言葉にできていなかったのに
母に愛されようと顔色を伺う子供だった。
言葉の節々にも、母と同じ考えだ、と母を強く意識していた。
母と娘、二種類いると考えているようだけど
正しく歪んでいる娘は、また、娘なんだろうな。
体面だけを整えられた、とも言っていたけれど
体面を気にしていたのは誰なのかな。
母性は作られるもの、これは分かる。
もともと備わっている人は少ないと思う。
遊び心がないと言われていた子が同僚と飲みに行っている様子から、断ち切れたようにも思われるけれど
自分が自殺しようとした経緯から、同じことをした子を調べようとしていて、その帰りに母に妊娠したことを電話で報告。
母の言葉を聞いて、お腹を撫でながら私はどっちかな、と呟く様も皮肉が効いていたように思う。
理解できるようで、共感できない部分も多く
最終的には夫は何してんの。と思ったよ。
実母に依存している妻から目を逸らして
義母から妻を守らず、他所で癒しを求めるくせに
自分の母親の面倒は押し付ける。
こんな夫は絶対イヤ。
あげく、子供からも逃げて、言い訳だけは立派ってどんだけなんだ。
娘が歪んだ一因を持つ父親。
愛人が自分の子供を傷つけるのを黙って観てるところもイライラしたよ;;
この作品は戸田恵梨香さん視点、永野芽郁さん視点で構成されてて、結局はお互いの証言だけで真実は一切語られてない。ここにも皮肉が効いててお腹いっぱい。