「タイトルなし(ネタバレ)」母性 とまとまとさんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルなし(ネタバレ)
1回目:2022.11.10 試写会
2回目:2022.11.11 試写会
気分悪くなるとコメントを見ていたから覚悟していったけど、かなり好きだった。
重いストーリーが好きなんだなと改めて思った。
終始異様な空気の作品だけどその中でも特に母とその母の関係は特に"作りもの"感満載で、でもお二方の演技がぎこちないとかじゃなくて確実に"演技っぽい異様な関係性の親子の演技"をされていてその異様な空気に徐々に慣れていった。
とにかく終始キャストの皆さんの圧巻の演技で、異様な世界観に気付いたらどんどんのめり込んでいた。
母(戸田さん)が異様なように思われがちだけど、毒って遺伝するともいうし、母(戸田さん)も娘(永野さん)も、同じように母と同じ答えが正しいと思っていたことから、母(戸田さん)も母(大地さん)に同じように育てられたのかもしれないと思った。
私自身、自分の経験を思い出すシーンもあって。娘でいたい母ではなかったし、ここまでではないけど、母親の言った通りに、決められた道を進むべきという考えを昔から植え付けられていたなと思った。
母親と同じだと嬉しいとか母親に毎日その日のことを報告して褒めてもらうとか、自分もやっていたなと。褒められたくて認められたくてやっていて、母と同じ答えが正解なのだと長年思っていて、それが当たり前だとも思っていたけど高校生の頃に友人に母が毒親要素少しあるよねと言われ、そこで初めてなんとなく自覚した。あまり実感はなかったけどこの作品を見て、皆さんのコメントを見て、ああ本当に普通ではなかったのかと初めて実感した。もし自覚せずに見ていたら何がおかしいのか分からなかったかもしれないと思うと、当たり前とか無意識って怖い。
私は共感できてしまったけど、毒親育ちではない人にはどう映るのか、気分悪くなる人にはどういうところが嫌にうつるのか、凄く知りたいと思った。
この母娘も一見普通に見えるし、実際やっていることが(エスカレートするとはいえ)犯罪とも言えず何とも言えないからこそ家族って難しいし、閉鎖的で怖くもあると思った。
娘視点に同情しがちだけど、お互いの視点で描かれているだけで客観的に、真実を描かれていないのが面白さでもあり怖さでもあるという講評を聞いて凄く納得した。
母目線と娘目線、同じ場面でも表情や細かい動作から全く違うように伝わってきてその演技が凄かった。
娘視点で語られた母にとっては"小道具"という言葉が最後まで覆されることがなく、ずっと作り物感が変わらず、異様な空気感だった。
ラストシーン、突然JUJUさんの良い曲流れて金10ドラマみたいな普通の恋愛ドラマのような雰囲気で終わるところまで含めて異様で、世界観として凄く凄く引き込まれたし、忘れられない作品。
〜細かいシーンの話なのでよりネタバレ含む〜
最後の方、娘が名前を初めて呼ばれた時、思わずドキッとしてしまった。確かに、名前、一度も呼ばれていなかったじゃん、、、と。
「子どもはまた産める」ってセリフ、本当凄かったな、、ここで多くの人が抱いていた「母(戸田さん)、、、ほんの少しでも良いから娘に対して母性を持っていてくれ、、、」という願いが消滅して絶望に変わった瞬間だと思う。その後の死の真相も衝撃的だったな、、、
高畑さんが最後、恐らく認知症になってずっと介護してくれている母のことを娘だと誤認識していて、そこも何か考えさせられたし意味がありそうな気がした。
結局、おめでとうではなくあの言葉が出てくるということは、最後まで母(戸田さん)は自分のお母さんを通してしか娘を見ておらず、この関係性はまだこれから先も続いていくと思ったし、娘の娘も同じ経験をするかもしれないと思った。
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2度目観賞後
1度目は、私自身娘ということもあり、娘視点になってしまいがちだったので母親視点で観るよう意識した。
最初に桜の花びらが窓から入ってくる場面がある、ルミ子がお母さんだと言ったのも桜。
ルミ子と母の時は玄関に置いてあった絵の中の花は、赤い薔薇、父がこっそり使っていた時は青い紫陽花。花言葉にも意味がありそうだと思った。
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農業を手伝うシーン、それ以前にもあったけどルミ子曰くルミ子が周りの人に奉仕したい気持ちを持ったのは母からの愛を受けたから(母から愛された証拠)。なぜ義母にあそこまで言われても我慢できるのかと1度観た時は疑問だったけど、あんな義母でも敬うことができる=母から愛を受けたから、なのかもしれないと思うとゾクっとしたし、だから清佳が祖母に口答えした時、反抗した時、あんな風に怒ったのかと納得した。
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途中手伝うシーンで、一生懸命頑張れば義母の娘にもなれるのだみたいなセリフがあった、実際それは叶って、最後は認知症になった高畑さんに娘と誤認識されていた。清佳のセリフで、「母か娘」か2種類とあったが、結局ルミ子は娘でいたい母だったのか、義母の娘になることができてきっと幸せなのだろうと改めて腑に落ちた。
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「私たちの命を未来へつないでくれてありがとう」というセリフ、妊娠した清佳におめでとうより先に「怖がらなくて良い〜未来へ繋いでくれてありがとう」という母の言葉が出てくるということは、やはり娘のことはまだ母親を通してしか見られないのだと思ったのに加え、なぜあのルミ子が火事の中助けてくれたのかと最初に見た時疑問だったけど、きっとあの瞬間母の遺言(願い)が命を繋ぐに変わったから、清佳に死なれては困るので火事から助け出したのかと思うと、母の無償の愛、母性は恐らく無く、母の遺言のために助けてもらっただけなのかもしれないと気付いて切なすぎた。
やはり何度見ても家も、何か違和感があるような、作り物感があってやっぱり奇妙だったけど、どこかでまた観たいと思っている自分もいる。