「心からの共感があれば、或いは」母性 つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
心からの共感があれば、或いは
湊かなえ原作の映画は結構好きで、どれも面白く観ているのだが、「母性」はちょっとハマらなかった。
つまらないわけじゃないんだけど、究極言うと「母に気に入られようとする娘」という存在が、理性的には理解できても心から共感できなかったからだ。
私は母と仲が良かった。母に勉強をみてもらい、母の描いてくれた絵で塗り絵をし、母が仕立ててくれたワンピースはお気に入りだった。
大人になってからも母の服を貰ったり、会えばお喋りに花を咲かせているが、やはり独立した大人同士なのであまり頻繁に会うことはない。
思い返せば成長の過程で、だんだん自然に独立していき、自分のしたいことをするために結構勝手に行動していくようになっていった。
そこに「母に褒められたい、認められたい」という気持ちは微塵もなかった。大好きだが、母は一人の大人の女性で、私も未熟者だが一人の大人の女性なのだから、互いの意思決定はあくまで互い自身が持つもの、という意識がそこにはある。
「母性」の主役2人、ルミ子と清佳のように、「まず母有りき」な関係にならなかったのだから、なんでそんなに母ちゃんにこだわるのか、わからん!という気持ちにどーしてもなってしまう。
理解はできるよ?でも共感できないんだよ!
最低限母ちゃんに怒られないくらいは、お手伝いするしかないかぁ、とか思ってた娘には「母の希望に叶う」ことなんてどうでもいいわけで…。
心の底から共感できなかったとはいえ、戸田恵梨香と永野芽郁の演技からは「母」の愛を巡るやるせなさが伝わってきた。
私には響かなかったが、最も近しい存在であるがゆえの距離感と感情のドラマは見応えがあったと思う。