「母の母の娘は母」母性 aMacleanさんの映画レビュー(感想・評価)
母の母の娘は母
サスペンスなのかと思いきや、少し哲学的な人間ドラマでした。
母親が、子供を溺愛するが故に暴走するパターンは王道なれど、究極のマザコンの姿はあまり無かったかも。しかも、あからさまな洗脳ではない洗脳。3代の女性のどこにも悪意が無く人のために尽くして善良であるが故に、余計に残酷さが感じられる。
すべて母親の勧めにあわせて生きてきたルミ子。結婚相手も母親の意見になびいて決めるほど。やがて娘の清佳が産まれ、一家三人で幸せな家庭を築く。時折訪問してくる祖母に喜ばれるように清佳を躾けるルミ子だが、祖母の意向を汲み取らない清佳が許せないルミ子。そのあたりから、二人の関係が怪しくなってくる。母親が絶対のルミ子と、そんな母に振り向いて欲しい娘の清佳というややこしい闘いが始まる。
ルミ子の配役は戸田恵梨香、娘の清佳は永野芽郁、祖母が大地真央。なかなか妙味のあるキャスティングだ。特にルミ子、清佳はかなりの難役。おそらく、役者が変われば大きく違った解釈になるくらいの、深さのある脚本と思う。
母娘の一方通行の好意は、切なさより不気味さを感じさせる。キリスト教の「他人を愛せよ」の教えが並走し、ルミ子がそれをひたすら貫く事で、関係がより歪む。それが皮肉なく描かれることで、物語の異質さが浮かび上がる。そんな違和感を感じながらの鑑賞となるのだが、物語が進むのにつれ、居心地の悪さも感じるほどのストーリー運び。人には、母性は温かく、優しくあってほしいという願望があり、その隙間を的確に突いているのだ。心地よいものではないが、印象的であることは確かだ。
個人的な好みとしては、ラストは少し余計だったかな。ルミ子が部屋の電気を消して、ドアを閉じるところで終わったら、余韻が残ってよかったのではないかと思う。その後の清佳のシーンは、救いと含みはあれど、少し平板な終わり方に思えた。
内容の好き嫌いは分かれそうだが、映画としては良い作品だと思う。