劇場公開日 2022年11月23日

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「"母性"その無償の全肯定の愛の矛先が狂った時、家庭は歪に瓦解する...  "愛"のボタンを掛け違った人々が織り成す世にも醜悪な自己愛群像劇映画」母性 O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5"母性"その無償の全肯定の愛の矛先が狂った時、家庭は歪に瓦解する...  "愛"のボタンを掛け違った人々が織り成す世にも醜悪な自己愛群像劇映画

2022年11月11日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

 noteクリエイター特別試写会にて鑑賞。
 湊かなえさんの2012年刊行のミステリー小説の映画化作品。
 生々しくも釘づけにされてしまう女性の内面描写に人を食ったようなどんでん返しが印象的なストーリーテリングが最大の持ち味かと思いますが、その中でも同じく映画化された『告白』『少女』と並ぶほどの女性心理の残酷さと孤高ぶりで、ショッキング映像こそ無いものの登場人物それぞれの人間的歪さが織り成す不協和音への嫌悪感は本作が屈指だと思います。
 満たされない愛の代償として無自覚に他人を傷つける劇中の各々の姿に言いようの無い眩暈と胃もたれを禁じ得ませんでした。
 過去の映像化作品同様に鑑賞には些か覚悟の必要な一本だと思いますが、時として自分がとある相手を慈しむ気持ちが別の誰かを歪ませることはあるにせよ、それが多重構造になるとこんなにも醜悪で救いようのない様相を呈するのかとハッとさせられます。
 また、"恋愛映画の名手"と称される廣木隆一監督作品ですが、たしかに視点を変えれば娘・母・祖母の一途ながらも絶妙に噛み合わない凄惨な恋愛にも見えるかもしれません。

O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)