「選曲が素晴らしく、歌唱力も相まってエミリア・ジョーンズが歌う「青春の光と影」に涙が止まらない」コーダ あいのうた Kazu Annさんの映画レビュー(感想・評価)
選曲が素晴らしく、歌唱力も相まってエミリア・ジョーンズが歌う「青春の光と影」に涙が止まらない
シアン・ヘダー監督による2021年製作のアメリカ・フランス・カナダ合作映画(リメイク作品)。原題:CODA、配給:ギャガ。
高校での合唱会で家族の状態を再現する音が消える演出、バークリー音楽大受験で無伴奏になり掛けで先生が駆けつけるところ、出だしの歌い出し失敗でわざと先生が演奏をミスルところ、試験の歌唱で家族向けて手話を加えるところ等、とっても良いと思ったシチュエーションが、後から見たが前作「エール!」と全く同じで、驚かされた。素晴らしいビクトリ・べドスによるオリジナル脚本に拍手である。
とは言うものの、トロイ・コッツァーによる娘の将来の可能性に思いを寄せ娘を音大受験へ導く父親像はとても素晴らしく、前作を超えていた。さらに、妹の将来を考えわざと冷たい言葉をかける女好きの兄ダニエル・デュランの存在感もとても良かった。弟から兄に変えたのが生きている。
また、合唱部を指導し主人公エミリアの才能を見抜き、音大受験指導をするバークリー卒の先生演ずるエウヘニオ・デルベスの演技も、学生への情熱的愛情を表現していて、とても良かった。エミリアの親友役エイミー・フォーサイスも、セックスで頭一杯の女子校生〜手話習い〜兄の恋人役で、今風なのか直ぐにsexしてしまう際どさと兄に妹の歌の上手さを教える重要な役回りで、全作を超える存在感に思えた。
そして何より、音楽プロデューサーニック・バクスターらによる「青春の光と影」(Both Sides Now、ジョニ・ミッチェル1968年作詞作曲)、及び「You’re All I Need To Get By」(唄マーヴィン・ゲイ&タミー・テレル1968年、Valerie Simpson & Nickolas Ashford作詞作曲)の選曲が、素晴らしいと思った。
田舎の高校生が歌う訳で、新しい都会的なものでなくかなり昔の曲というのがgood。また後者は、主人公とフェルディア・ウォルシュ=ピーロのデュエット曲として、歌詞がピタリとはまっていた。そして、バークリー音大の試験でエミリア・ジョーンズにより歌われた「Both Sides Now」は、歌詞は勿論、スローで唄われるアレンジが最高であった。様々な歌い手が歌っている曲だが、そのどれよりも良く、分かっているのに涙が出てくる圧巻の歌唱であった。
製作フィリップ・ルスレ、ファブリス・ジャンフェルミ、パトリック・ワックスバーガー 、ジェローム・セドゥー。
オリジナル脚本ビクトリ・ベドス、スタニスラス・カレ・ド・マルベルグ、エリック・ラルティゴ、トーマス・ビデガン、脚本シアン・ヘダー。
撮影パウラ・ウイドブロ、美術ダイアン・リーダーマン、衣装ブレンダ・アバンダンドロ、
編集ジェロード・ブリッソン、音楽マリウス・デ・ブリーズ、音楽プロデューサーニック・バクスター、音楽監修アレクサンドラ・パットサバス。
出演は、エミリア・ジョーンズ(ルビー・ロッシ)、トロイ・コッツァー(フランク・ロッシ)、マーリー・マトリン(ジャッキー・ロッシ)、ダニエル・デュラン(トレオ・ロッシ)、フェルディア・ウォルシュ=ピーロ(マイルズ・パターソン)、エウヘニオ・デルベス(ベルナルド・ヴィラロボス)、エイミー・フォーサイス(ガーティ)、
ケビン・チャップマン。
おはようございます。
コメントをいただき、思い出しながら胸がぎゅんぎゅんする感覚がまだよみがえりました^_^
キレイゴトだけにせずストレートにみせてくれたストーリー、愛おしい家族の姿でした。
> 主人公の友人が、兄と婚約し家族の翻訳役を買って出るストーリー展開を、実は私もイメージしておりました
コメントありがとうございました。うわ、同じように感じた方がいて嬉しいな。自分も鑑賞中にそのストーリーをイメージし、「だけど、その展開だと "主人公が押し付けただけ" に感じられちゃうから、そこを脚本・監督がいかに上手く処置してるか、だよなぁ」と、エンディングを楽しみにしてました。それがまさかの "何もなし" ! 「そしてみんな仲良く暮らしましたとさ」 って昔話かい!! と鑑賞後にはけっこう落胆したというか、拍子抜けしたのを覚えてます。それが作品賞!
実際の聾唖者が配役を演じるというダイバーシティが高く評価されたんでしょうね。それは自分もそう思うので、それに比べれば脚本の弱みは吸収された、ということかな、と作品賞には(驚いたけれど)違和感ないです。ただ、脚色賞はちょっと違和感ありでした。