「フィクションが描く鮮やかさと限界」コーダ あいのうた おたけさんの映画レビュー(感想・評価)
フィクションが描く鮮やかさと限界
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コーダである主人公の彼女の物語としては、感動的。
上映中、何度も涙した。
終映直後の快感のあとに残ったのは、主人公の周りにいたひとびとの存在…
主人公の父は、母は、兄は、恋人は、一体どんな葛藤を抱えていたのだろう?
主人公の葛藤は、コーダの少女の生きざまが見事に描かれていたように思う。
一方で、主人公の夢を送り出す、周りのひとびとの葛藤については解像度が粗く、一見めでたしめでたしのようだが、モヤモヤが残る。
性生活を主人公である娘にオープンな両親、マリファナを吸う父、娘の都合を鑑みずに何度も手話通訳を頼む母、キレやすい兄。
学校のクラスメイトたちの主人公へのいじめ紛いないじり、疲れ切っている彼女の居眠りへの教師の嫌味、学校全体の彼女への差別的な空気、家庭環境が良いとは言えない恋人(ここは気になったが、あまり描かれていない)。
ろう者であるとか障碍の以前に、全体的に難ありな環境下にいる主人公。
そんな状況の中、主人公だけが清潔に描かれる。
家族の通訳を生まれてからずっと担い続け、家業の漁もし、自分の学校生活や私生活の多くを犠牲にして、ろう者である家族のために尽くす娘。
そんな悲惨な状況にある彼女には、歌の才能がある。
障碍を才能で乗りこえるパターンの物語をみると、いつもなんだかな〜という気持ちになってしまう。
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