「青春の光と影」コーダ あいのうた 山の手ロックさんの映画レビュー(感想・評価)
青春の光と影
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聴覚障害のある家族の中で、唯一健聴者である主人公が、家族への愛と葛藤を抱えつつ、自分の生き方を求めていく姿を描く。世評の高さに引かれて観に行った。
音が聞こえない家族と、歌の才能を開かせていく娘という設定は、とてもつらいものがあるが、ユーモアとバイタリティに溢れていて、しっかりエンターテイメントに出来上がっていた。セックス関係のネタが多いのは、アメリカのハイティーン映画ならでは。
マーリー・マトリンの母親をはじめ、父親、兄の役者も、本当の聴覚障害者とのこと。特に、父親が素晴らしい。コンサートでの無音のシーン、そしてその後の娘ののどに手を当てて振動で歌声を聞くシーンは、ぐっとくる。
最近では「ドライブ・マイ・カー」でも印象的だったが、手話というのは美しいね。
音楽映画としては、マーヴィン・ゲイ、デビッド・ボウイといった選曲が良い。特にハイライトは、ジョニ・ミッチェルの「青春の光と影」(Both Sides,Now)。主人公にとっての夢と現実の両面という意味とともに、音が聞こえる人と聞こえない人の両方をつなぐ主人公自身の姿を表しているようにも思う。
最後は、主人公が音楽大学に合格して自分の行きたい道へ踏み出し、ハッピーエンドに見えるが、昨今言われる「ヤングケアラー」でもある主人公が独立して、そのあと家族はどうなるのか(漁はできるの?罰金はどうしたの?)が気になってしまった。現実を振り返ると、周囲の理解や支援が必要だと思うが、そこまでこの映画に求めるのは、ちょっと酷かな。
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