「タイトルなし(ネタバレ)」コーダ あいのうた りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
タイトルなし(ネタバレ)
年明け1月下旬公開の『Coda コーダ あいのうた』、ひと足早く、試写会で鑑賞しました。
米国の港町で暮らす高校生のルビー(エミリア・ジョーンズ)。
父フランク(トロイ・コッツァー)、母ジャッキー(マーリー・マトリン)、兄レオ(ダニエル・デュラント)の3人はいずれも聴覚障がい者。
いわゆるCODA(Child of Deaf Adults)と呼ばれる存在。
父と兄が、船で沖に出て漁をして生計を立てているが、障がい者ゆえ、仲買人に安く買いたたかれることも多い。
家族の「通訳」、外の世界との連携役のルビーにとっては、そんな扱いを受けることにひどく腹を立てていた。
新学期、憧れの同級生マイルズ(フェルディア・ウォルシュ=ピーロ)と親密になりたいルビーは、クラブ活動で彼と同じ合唱部を選択する。
かつて、自身の発声を嗤われたことのあるルビーは人前で歌うことにしり込みしていたが、クラブの顧問ヴィラロボス先生(エウヘニオ・デルベス)はルビーの歌に天賦の才があることを気づき、名門バークリー音楽大学の受験を強く勧め、受験すべく練習に励む。
だが、ルビーの歌声が聞こえない両親は彼女の才能を信じられず、家族のの方が大事、単身での音楽大学進学などとんでもないと大反対・・・
といった物語で、あれれ、なんだか過去に同じような映画があったぞ、と調べてみると、2014年のフランス映画『エール!』のアメリカでのリメイク。
なのでストーリーラインは同じで、見どころもほぼ同じ。
ですが、家族の描き方が陽気であけすけなところがアメリカ映画らしく、音楽もルビーとマイルズが歌うデュエット曲もマーヴィン・ゲイ&タミー・テレル「You're All I Need To Get By」と好きなジャンル。
見どころでは、聞こえない歌声を家族に伝える演出が上手く、段階を経ているのがいいです。
一段階目は、学校での発表会。
家族三人にはルビーの歌声は届かない。
コーラスでは、他の歌い手たちに混じってしまってわからない。
周囲の観客が楽し気にしているので、楽しいのだろうな、と感じるだけ。
マイルズとのデュエットでは、音楽を消して、囲の観客がふたりの歌に感動しているようすを、家族たちが感じるように描いていく。
オリジナルでも感じたましたが、やはり、音のないこのシーンは秀逸。
二段階目は、発表会のあと、父親がひとりでルビーに、もう一度デュエット曲を歌ってもらうシーン。
ここで、父はルビーの喉元に手を当てて、その歌声を指先で感じようとする。
そして、感じる。
聞こえないものが伝わる、そういうシーン。
そして三段階目が、バークリー音楽学校受験でのルビーの独唱のシーン。
曲はジョニ・ミッチェル「青春の光と影」。
歌の後半で、歌詞にのせた気持ちを手話で伝える。
一、二段階があるからこそ、心に伝わってきます。
と、わかっていても胸にジーンときました。
オリジナル映画を観たひとも、是非、観てください、と伝えます。