劇場公開日 2022年10月14日

「変われない男と学習しない女」もっと超越した所へ。 ジュン一さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5変われない男と学習しない女

2022年10月16日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

単純

難しい

ここに四組のカップルが居る。

年齢はばらばら、住んでいる所も職業も異なり、
一見何の関係性も無いようには思え。

しかし、ここには
女性の方はしっかりと生計を立てているのにかかわらず、
一緒に居る男性の方がどうにも駄目男っぽい
一点だけの共通点。

『知子(前田敦子)』はアイドル向けの衣装をデザインし生業としているが、
同居の『怜人(菊池風磨)』はミュージシャンを気取るも
収入はライブ配信だけで、それ以外の時間はぶらぶらしている実質ヒモ男。
それでいて『知子』への束縛は厳しく、服装にも細かく指図をする始末。

『七瀬(黒川芽以)』は二歳の子供がいる風俗嬢。
仕事への研究は熱心で、そのためか懇意の客も付き。
中でも最も指名をしてくれる『慎太郎(三浦貴大)』は
元子役で今でも多くの映画に出演しているとの触れ込みだが、
なんとはなしのきな臭さが漂う。

他の二組も似たり寄ったりで、
映画の前半部は彼女・彼等のイマイマの状態を描くことに終始。

が、後半部に至り、我々はこの四組の思いもよらぬ過去を知ることに。
もっとも、幾つかの科白や行動に、その示唆は隠されており、
勘が良い人なら、ははん、と思い付く、
一種{輪舞}形式にも似た展開。

そこからてんやわんやがあり、
最後は観客は快哉を叫ぶのだが、
その後で更に驚愕の展開が待ち受けており。

「第四の壁」を意識した『イヨネスコ』的な不条理劇、
文字通り「壁を壊す」ことで
駄目男と女のテーゼを見せつける。

原作は未読だし、勿論舞台も観てはいない。

とは言え、この見る側の思い込みを利用した意外性のある幕切れは
監督の創意とは思えぬ節があり、おそらくもともとの仕掛けかと。

それ自体は肯定しつつも、
ホントにこの結論で良いの?と
素直に頷けない気持ちの自分がおり。

これでは、自己をなんとなく納得させ、
将来も同じ轍を踏み、駄目男を助長させるだけなんじゃ?と
かなり呆れながらも、エンドロールを迎えてしまう。

再生は示されるものの、救済とは思えぬこれが「超越」なのか?

唯一の救いは、四人が何れもダメ男ではあるものの、
それをDVに向けないことくらいか。

それすらもなかったら、
物語は本当に悲惨なものになっていたろう。

ジュン一