劇場公開日 2024年3月15日

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「古典SFをほぼ完璧に映画化。凄い。新解釈もあり。」デューン 砂の惑星 PART2 あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5古典SFをほぼ完璧に映画化。凄い。新解釈もあり。

2024年3月10日
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鑑賞方法:映画館

たった今、IMAXで先行上映を観てきたところ。
凄い。まだ呆然としている。パート1、2あわせて5時間20分という長大な作品で仮想宇宙であるDune世界を表現し尽くした。IMAXによる割増効果はあるもののこれだけ緩みなくテンション高く走り切る作品はなかなかない。
感想をいくつか。字幕版で観たのだけど用語が分かりにくいのではないだろうか。例えば「マフディー」、「リサーン・アル=カイブ」。どちらも救世主を表す。「クウィサッツ・ハデラック」なんていうのもそのまま出てくる。これは救世主に近いけど違う概念。種族や階層によって同じものに違う表現をしているのである。「ベネ・ゲセリット」とか「サーダカー」とかもそのまま出てくる。パート1から観た人は知っているかもしれないが。要するにチンプンカンプンでなんのことだか全然分かりませんでした、だから退屈で苦痛でしたという評価になるのではと恐れているのである。いつもならば原作を読めというのだが、第一作の「砂の惑星」だけで文庫本3巻ある。かつお世辞にも読みやすいとは言えない。多分、パンフレットで懇切丁寧に解説されているだろうから手に入れて観る前に読んでおいた方が良いです。それと普段は絶対勧めないのだけどこの作品は吹替版の方が良いかもしれない。少なくとも用語は整理されるだろうから。
2つ目の感想。また原作の話です。フランク・ハーバートのDuneシリーズ第一作「砂の惑星」が上梓されたのは1965年。私が最初読んだのは学生時代で1970年代になってから。その頃、友達と話していたのは、まず、この作品(繰り返しますが原作です)は「アラビアのロレンス」の影響を受けているんだろうね、ということだった。デヴィット・リーンの「アラビアのロレンス」は1962年の公開でハーバートの著作に先行している。主人公が砂漠の民の力を借りて帝国を倒す構造も同じ。西暦10000年とかの超未来の話で星間宇宙船だとか技術力は格段に進んでいるが、政治は封建制で、血縁社会であり、家庭内は家父長制度が強く、文化文明はロレンスの時代のアラビア首長社会と同レベルじゃないのという批判もありました。(昔の学生は理屈っぽかったのです)
今回、そのあたりを思い起こしながら映画を見ていたのですが、多分、映画化にあたって原作から改変されたところがありました。
ポールの恋人であるフレメンのチャニの行動です。原作ではチャニはポールの子供を産みます。(この子が本筋と関係のないところで死んでしまうのですが意味もなく殺したということで原作者に対する根強い批判があります)そして原作ではチャニは最後にポールの側妾になる道を選ぶのですが、映画のチャニは子は産まないし、皇帝の娘と結婚するポールとは決然として別れる道に進みます。
原作から60年近く経って、ようやくDune世界に家父長制から決別して自由を選ぶ女性が現れたのです。私はこの新解釈というか改変を支持します。
最後に、この映画の続編があるかということですが、まだ生まれていないポールの妹が1カットだけ登場します。これがなんとアニヤ・テイラー=ジョイ。わざわざ彼女をもってきたのはおそらく次回作「砂漠の救世主」では、ポールを巡ってイルーラン皇妃(フローレンス・ピュー)と彼女の対決が中心として描かれるのだと思います。今作と同様に原作から踏み出した女性像で新たなDune世界が表現されることを期待しています。

あんちゃん
琥珀糖さんのコメント
2024年3月23日

コメントそして共感ありがとうございます。

「オッペンハイマー」は29日からですね。
はい、IMAXで観ようと思います。
難しそうですが、しっかり観てきたいと思います。

琥珀糖
琥珀糖さんのコメント
2024年3月23日

見事なレビューですね。

原作を読まれた方の批評は説得力がありますね。
私はPart1で難しくてお手上げでした。
Part2の方が多少、1で免疫がついていたのか、
分かり易かったのですが・・・。

壮大な宇宙ロマネスク、映像と音楽で大満足でした。

琥珀糖