「スパイダーマン・ロスを埋めてくれるのか」アンチャーテッド うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)
スパイダーマン・ロスを埋めてくれるのか
プレステのゲームから発展した映画だそうで、そのことも知らないまま、かなりフラットな状態で見てきました。お目当ては何と言ってもトム・ホランドです。そしてマーク・ウォルバーグとの顔合わせも安心して見ていられる保険のような存在に思えました。何しろ、『スパイダーマン ノーウェイホーム』の成功を受けて、本格的にアクション映画の主役を務めるので、今後の彼の方向性が見えてくるに違いないと。
製作側の思惑はともかく、映画としては、可も無く不可も無く無難な出来上がりになっていると思いました。いや、正確に言うと可もあり不可もありでした。
映画の魅力は、トムホのキャラクターに尽きると言い切れるでしょう。まるで素顔のピーター・パーカーが超人的な冒険を繰り広げているように見えるし、類似性は否定しようがない。その意味では、しばらくスパイダーマン・ロスになっているファンが、その欲求を満たすことが出来るつなぎに過ぎないとも言えます。元ネタのゲームにどの程度リスペクトがあるのか分かりませんが、ゲームの謎解き要素はむしろ奇抜な印象をぬぐいきれません。
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ここからは、ネタバレにもなりますし、悪いことも書くので、見たくない人はとばしてください。
500年ほどの途方もない年月、発見されていない財宝が、ちょっと手の込んだ謎解き脱出ゲームで見つかるなんて、あまりにもウソっぽいし、今までさんざん映画のネタになってきました。なぜもっと工夫して最新のアイデアを盛り込まないのか疑問です。
たった2本の金細工の十字架で、盗掘を防ぐ死の罠が発動するのも、これまで『レイダース』をはじめとして、数々の映画が製作されて来たので、はっきり言って新鮮味は全くありません。それどころか、あれほど精巧で危険な仕掛けが、誰のメンテも無しに何百年もセットされ続けていられる理屈がウソくささの元凶になっています。大きなウソを成立させるためには細部をていねいに作り込まないとダメでしょう。金細工なんて、ちょっとした刺激で変形するだろうし、鍵として使うのには無理がありすぎます。
行方が分からなくなった兄の存在も中途半端で、居てほしいのかそうじゃないのかよく分からない。せめて兄を殺された復讐劇の要素を盛り上げるのか、失踪した行方を突き止めるのか、方向性だけでも見せてほしかった。影ながら絵葉書に手がかりを残しておくなんて、都合良すぎると思いました。
エンドクレジットあとのおまけムービーも、続編への色気たっぷりに「続きがあるんですよ」と言わんばかりのあざとさで、もはやマーベル映画による呪詛と言っても過言ではない。いい加減このやり方を脱却できないものか。
例えばですけど、映画を見た人だけにパスワードを見せて、ネットにおまけムービーを公開するとか、なんか考えてほしいところです。パスワードはたとえ話なので、一度公開されれば劇場に行ってない人でも見られるセキュリティさえしっかり構築すれば、見終わった後の満足度も違ったものになるでしょう。
私が熱烈なスパイダーマン好きで、トムホの熱心なフォロワーでなければ、この映画は魅力に乏しい普通のアクションに過ぎないと思います。
2022.2.20