劇場公開日 2022年4月1日

  • 予告編を見る

やがて海へと届くのレビュー・感想・評価

全96件中、1~20件目を表示

5.0親友が旅に出かけたきり戻らない、心の葛藤のお話。 イラストに浮遊す...

2023年7月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

幸せ

親友が旅に出かけたきり戻らない、心の葛藤のお話。
イラストに浮遊するメッセージ、
R45のトンネルから抜けた広田湾の景色、
もう12年になるのですね…。

出だしの小説っぽさ、旅先でのドキュメンタリータッチ、海へと届くアニメーション、深さと悲しさと暖かさが混在していました。

コメントする (0件)
共感した! 2件)
woodstock

5.0詩情にあふれ 心に届く傑作

2022年5月7日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

幸せ

三回劇場で観ました

味わいはあせることなく、理解も深まりました
稀に見る高い次元で結実した名作と言い切っても良いのでは

発せられた言葉
口にされなかった言葉
海の描写

役者さんはメインの2人が圧巻でしたが
皆さんそれぞれ存在感がしっかりと感じられました
音楽も素晴らしいし
懐かしいパフィを浜辺美波さんが歌うシーンもあってサービスも充実

とにかくすごい純度で丁寧に作り込まれていて、鑑賞中ずっと温もりに包まれます

どのシーンもさり気ない美しさがあるのですが、クライマックスではほんとうに
息を呑むほどの美しいシーンが何度も

最初は分からないな、テンポがゆっくりだな と感じられる人もいるかもしれません
いえいえ、実は行間の味わいが凄まじいので2回3回と観れば、感動はきっと増していくでしょう

自分は、1回目は終映後のトイレで号泣してしまい我ながら驚きました
2回目はスクリーンで何度か泣けました
3回目は、残された謎の部分に辿り着きつつあると思いました

「わたしは光をにぎっている」も大好きな作品ですが、こちらはさらに熟成されていて、邦画史に輝き続ける名作の域に達していると感じます
上映館が少なくなり、寂しいしもったいない(観れば感動間違いなし)と強く思います

こういう映画をこそ、多くのひとが味わえるといいなあ!

コメントする (0件)
共感した! 4件)
ラピタン

5.0実写とアニメーションの活かし方

2022年4月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

生命の流転が私たちの生きる社会の日常レベルで描かれていることにおどろいた。震災の日から戻らない友人を想う主人公の旅を通して、観客がたどり着くのは、生命は自然に還り、海を経て、そこかしこに偏在しているという万物を見通す視点だ。そのことを描くためにアニメーションが決定的な役割を果たしている。震災で死んだと思われる友人は主人公にとって決定的な喪失だったはずだが、彼女の残したビデオ映像という記憶を記録する装置と、自然に還り、変化してゆく生命のあり方という二つが主人公の人生を前向きなものにしていく。固定された過去の記録映像を実写、自然に還り変化していく可塑的な生命はアニメーションで表現する。現実を切り取り固定化する実写と、変化するものを描くアニメーション。実写とアニメーションの両方の素晴らしさを最大限に活かしている。記録という点では震災の経験の語りを記録するシーンも示唆に富んでいた。しかし、記録できずに流されていったものもある。それをアニメーションで描いている。中川監督は新世代の作家の中でも本作で一つ抜けた存在になったと思う。

コメントする (0件)
共感した! 8件)
杉本穂高

5.0自分の思慮の浅さを痛感しました。

2022年4月3日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

難しい

萌える

浜辺美波さん、やっぱり綺麗だなぁ。
って感じで見てたら、よく分からなかった。
もう一回見に行ってきまーす。\(^-^)/
--------------------------------------------------------------------
2回目視聴してきました。
作り手の意図が私にどれだけ伝わったのかは
分かりませんが、
忘れることも、忘れない事も、
終わったことにするかしないかも含めて、
自分の中で消化されるのを待つしか無い
気がする。
--------------------------------------------------------------------
時間が出来たので、3回目の視聴。
私にもやっと理解出来た気がする。
3回目めにして、涙が止まらなかった。
感想はテーマがテーマなだけに
控えたいと思います。

ただ、この作品の俳優さんに
岸井ゆきのさんと浜辺美波さんを
キャスティングされた事に感謝します。

有り難う御座いました。

コメントする 1件)
共感した! 21件)
ぷぅ

5.0無題

2022年4月1日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

言葉に出来るような感想は思いつきませんでした。観て頂ければ、と思います。

コメントする (0件)
共感した! 5件)
hirakihimi

5.0大切な人を想う気持ち

2022年4月1日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

幸せ

この作品は大切な人を想う気持ちが終始あふれています。深い海に優しい風が流れていく感じです。とても心が落ち着きました。映像も音楽も素晴らしいです。
岸井ゆきのさんが魅力的ですね。アニメーションがありましたが良かったと思います。とても完成度が高い作品です。

コメントする (0件)
共感した! 9件)
ゆきとう

5.0浜辺美波さんが美しい

2022年3月31日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

こんな浜辺さん見たことない!というくらい、浜辺美波さんがお美しく、輝いていた。
どこかミステリアスな一面のある役どころがとてもハマっていて、今までみてきた浜辺さんとはまた違った一面がみれました。

コメントする (0件)
共感した! 9件)
ayaka

5.0映像美◎演技◎

2022年3月31日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

魅力的な人物たちと役者の素晴らしい演技力、日本的な映像美が印象的だった。気の合う友人と鑑賞してゆっくりと話したい映画。

コメントする (0件)
共感した! 5件)
Ricks

5.0映画館で、丁寧に観たい作品。出会えてよかった。

2022年3月31日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

この2年で配信が台頭してきましたが、映画館で映画を観ることの素晴らしさを、
この作品の上映を通して実感しました。
監督、役者、全てのスタッフが心を込めて創り上げた映像を大きなスクリーンで堪能できること、
生活音や他者の介入なく作品に没頭できること。
「やがて海へと届く」という作品自体の素晴らしさは言うまでもありませんが、
本作だけでなく、映画、映画館自体の良さを味わわせてくれる一作でした。

作品については、
自己と他者が重なり合って生きているこの世界の中で、
何を大切にしたら良いのかを問い直される感覚がありました。
当たり前に続くと思いがちな日常は、実はそうではない面をはらんでいるし、
直接的な関連のない出来事も、自分に変化を与える可能性を持っている。
先の見えない社会だからこそ、その変化を恐れるのではなく、
実感を軸に、急ぐことなく丁寧に自分に向き合って生きていきたい、と思いました。

このタイミングでこの作品に出会えてよかったです。
ずっと大切に観つづけたいと思いました。

コメントする (0件)
共感した! 6件)
shoppy

5.0二人の女優さんが超綺麗で胸がいっぱいになる美しい作品

2022年3月31日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

二人の女優さんと海が主役の美しい映画。
絶対に映画館のスクリーンで観るべき作品。
流れる時間も映像も音も映画館のためのもの。

題名にふさわしく海の映像が素晴らしい。
いろんな表情を見せる海。
海は人間を遥かに超えた永遠の存在であり、みな最後は海に帰っていくのだという感じ。

海辺にいい感じで風が吹いてて、浜辺美波さんの髪が海の風に揺れてるのがとても美しい。
初めて観た女優さんだけれど、もう名前がこの映画にぴったり(笑)だし、すごく綺麗で素晴らしい女優さん。いろいろ微妙な表情の変化と今この年頃でしか出せない眩しい輝き。

とにかく本作のいちばんの魅力はなんと言っても主演の二人の女優さん。
岸井ゆきのさんも浜辺美波さんも役になりきって役を生きていて素晴らしい。
二人のツーショットが美しすぎてすごい尊みを感じる。

二人それぞれに想いを語るスタイルの原作小説をベースにしながら、本作では魅力的な俳優さんたちの演技とか、様々な表情を見せる海の情景とか、ビデオカメラがお守りになっているようなすみれのキャラ設定とか、大震災の被災者の方々のインタビューシーンといった映画向けのアレンジも含めて映画ならではの独自の表現が物語の魅力を増していると思った。
なんと言っても原作より主役の二人がイキイキと生きている感じがするのがすごく良い。役への愛を感じるし。

特に作中のビデオカメラとか留守番電話の使い方が印象的。
声とは、きっと写真よりもずっと生々しくその持ち主のことを思い出させてしまうものではないか。
もう絶対に会うことがかなわない人がいて、でもその人の声はビデオや留守番電話に残っていて声が聞けるという状況では、なかなかその人のことを忘れられないし、その人がこの世界にもう存在しないこと自体もなかなか信じられないだろう。
この映画観ながらそんなことを感じた。

本作はこれまでの中川監督のいろんな作品がこだまのように響きながら、更にいろんな新たなチャレンジを重ねてる意欲作だと思う。
量産型の映画に比べるとかなり実験的要素があるし明るい内容の作品ではないので賛否両論分かれると思うけれど、僕は観てて楽しかったしスターシステムの映画を無難にまとめずにけっこう攻めてるのがすごいなと思った。

浜辺美波さんが美しすぎて心を奪われてしまうので彼女とのデートで行くには危険かもしれないけどw、美しくて素晴らしい作品だと思う。

コメントする (0件)
共感した! 9件)
Makoto Yoshida

5.0音楽のような映画

2022年3月31日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:試写会

泣ける

悲しい

興奮

X JAPANの音楽のような激しさと切なさを感じる超大作。
良くも悪くも超大作らしい濃厚なストーリーが一番二番…と展開していく。
ライトな映画ファン層が初見すると少し重たいかも知れないが、この作品に引き込まれていく人も多そう。。。
(個人的には同監督の「走れ、絶望に追いつかれない速さで」の世界観を踏襲している作品と思いました。)

コメントする (0件)
共感した! 5件)
Yoshitsune

5.0過ぎ去った昔の友人に無性に会いたくなる

2022年3月31日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:試写会

泣ける

怖い

幸せ

観終わってすぐ、アニメーションの美しさと、岸井ゆきの演じる真奈の演技に圧倒されて言葉が出なかった。
浜辺美波の周りには、既にあの世に行っているかのような、怖さにも近い透明感が常に漂う。

帰り道にふと、学生時代のサークルの仲間に会いたくなった。

真奈にとってすみれは、(物理的にも)絶対に帰ってこない存在となり、彼女はその事実と向き合った。

初めはその事に感動していたけれど、自分にも(物理的には会えるけど)もう会わなくなってしまった、会うことをやめてしまった恋人や友達がたくさんいる事に気が付いた。
それは悲しい事なのかもしれないけれど、彼ら彼女らがいて、今の私がいる。

真奈のように、大きな暴力に友人を奪われた訳ではないけれど、社会人になって一人でやっているつもりだった自分も、これまで過ごして来た人との時間や、これから
過ごす人との時間という、大きな世界の中に包まれて生きているのだと思い直す。

だから、会ったところで今更何にもならないかもしれないけれど、あの頃の友達とまた時間を過ごしたいと強く思った。

30歳の今、とても大切な作品になりました。

コメントする (0件)
共感した! 10件)
ばばろあ

5.0エモーショナルなドラマがありながら、非常に表象的な映画

2022年3月31日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

岸井ゆきの演じる真奈と、浜辺美波演じるすみれ。
二人の女性の想いとそのすれ違いの切なさを描いたとてもエモーショナルなドラマ。

一方で、「喪失と再生」「記憶と記録」「過去と現在」「生と死」といったテーマを、映像を通して表象的に映し出す映画でもある。

この二つを同時にやり遂げている傑作。

コメントする (0件)
共感した! 5件)
酔ってコアラを拉致

5.0俯瞰の愛に包まれる

2022年3月30日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:試写会

なんでもないときに、ふと、ずっと会っていない友達のことを思い出す瞬間がありますよね?
何かを見たり聞いたりして思い出したのではなくて、自分でもなぜこのタイミングで思い出したのかわからないけれど、フッとイメージが現れたとしか言いようのない瞬間。
そんな不思議な瞬間、実は相手も自分の事を思い出しているんですって。
遠く離れていても、オンサのように共鳴し合っているってことですかね?お互いに響き合っているのだとしたら素敵ですよね。
私もあなたのことを思い出しているよ。

では、もっとずっとずっと遠く離れてしまって二度と会えない人とも響きあえる?
私が思っている時、あの人も私のことを思ってくれているの?
ものすごい俯瞰で捉えたところに、その答えがありました。

どちらの目線だか分からなくなる瞬間があります。
もしかしたら一人の人物だったのかも?と思える程。
自分が見ているようで実は見られているような感覚だったり。
不自然に感じる違和感は全てテーマに繋がってますので、あちらこちらに散りばめられた違和感を安心して拾っていってください。笑
しんのすけさんのトークは『はじまりのうた』の上映会以来でしたが、映画愛にあふれる監督への質問のお陰で作品への理解が深まり、「あぁ。あの違和感は感じて良かった違和感だったのだ。」と思えました。
左手の握手って、確か別れの握手ですよね?その事についても聞いてほしかったです。

コメントする (0件)
共感した! 9件)
shiron

4.5難解すぎ不思議な作品だが妙に涙がこぼれてきてしまう

2024年4月11日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

難しい

冒頭のアニメーションから謎。やがて友人のスミレが死んだということがわかってくる。
ただ、それが行方不明というニュアンスは伝わってこない。死として受け入れるのかどうか、この部分がなく、マナの心境がわかりにくい。
親友のマナは、職場に突然訪ねてきたスミレの彼だった遠野に促され、彼女の遺品の処分と彼女の実家に行こうと提案される。
マナは遠野と一緒に住んでいたスミレのベッドに横たわると、彼女との、つまりこの物語が始まる。
この物語は、マナによってスミレという人物像を探し出す物語なのかなと思いながら見ていた。マナがどうしても探し出したいのが「スミレの心」で、それがどうしても探せない苛立ちが遠野に向けられるのだと考えてしまう。
同時にマナが自分探しをしているようでもある。サブタイトルが「喪失と再生」ということなので、マナはスミレの喪失に折り合いをつけられないのだろう。
マナが反応するのは遠野の言動だ。そこに彼女の問題の核心があると思った。
遠野の考え方は至極一般的だ。同時にどこかスミレを他人に見ている。そしてスミレの本心がどこにあったのかを考えようとしないことに苛立ちを覚えているようだ。
スミレはビデオカメラを持ち歩き、マナや遠野を撮っている。
スミレは言う「カメラを持つと落ち着く」「私たちは世界の片面しか見えてない」
マナ側から見たスミレとの思い出には、そこに起きたスミレの出来事は「見えていない」
それは作品の最後に、スミレが主体となっている出来事によって示される。
大雨の中、大きな荷物を抱えてマナのアパートに転がり込んだこと。
1年後にそこから出て、遠野のアパートに引っ越したこと。
スミレが撮った映像とともに、マナの記憶が足されて物語のパートが映し出される。
スミレがなぜ死んだのかは後半まで明かされることはなく、その間にレストランの店長が自殺した。新しい店長の方針は、前の店長の痕跡を消し去るようだ。
悲観するマナに休暇を取るように勧める料理長。彼と一緒に出掛けた先が、マナが行けないままでいたあの大震災の津波で崩壊した場所だった。
集会場では津波による被害や肉親を失った人々が、それぞれの体験談を語る。
マナはそこで初めて「友人がここに出かけていなくなった」ことを話した。
早朝の海辺 荒波 少女のわらべ歌は鎮魂歌だ。
マナは少女に「久しぶりに夢を見た」という。それがあの1年間スミレと一緒に住んでいたアパートで眠るマナと、そっと横に座ったスミレの夢だ。
「またね」 スミレが別れを告げに来たのだろう。
目覚めたマナは青い服に着替えて、彼女のビデオカメラを取り出し、再生した。
次にスミレが主体の物語が始まるが、二人が出会うきっかけとなった「猫のポーチ」がこの作品最大の謎だ。
スミレは落としたポーチをマナが拾ったのを見るが、「それ私の」と最後まで言わない。
当然マナはそのポーチがスミレのものだとは知らないままだ。ところが遠野のアパートで遺品整理する段ボールの中から、このポーチが出てきた。ポーチを手にしたマナに当時の記憶がよみがえってくる。夢の中で。
「猫」はスミレが実家で買っていた三四郎と呼応する。三四郎は自分の存在を鳴き声で知らせるが、信頼できない人の前には出てこない。
スミレと最後になってしまったバス停。スミレはポーチのことを言いだそうとするが口をふさぐ。言おうとしたのは、「なぜマナを選んだのか」ではないだろうか? 捨てられていた三四郎がスミレを選んだように。
ポーチはスミレにとってもマナと出会うきっかけだった。意識的にマナを選択したのだ。ポーチはスミレにとって心と心をつなぐの糸のようなものなのかもしれない。スミレはマナに何かを感じたに違いない。
スミレには母との確執があった。実家を飛び出したのも母とのけんかだ。
彼女の心境の変化は、ロングヘアーがミディアムヘアーになって、ショートヘアになっていくことで表現されているが、段々と余計な部分がそぎ落とされて、「ありのままの自分」になっていっているのかもしれない。
マナもパーマを当てた髪から、ストレートヘアー、それが少し伸びてゆく。それはごく一般的な時間経過…のようだ。
スミレのチューニングの話 「ありのままの自分を引き出してくれる人に出会えるかも」
マナはもうすでに出会っていた。それがスミレだ。それはおそらくスミレも同じで、マナこそがスミレのありのままを引き出してくれた人だからポーチをしばらくマナに預けていたのだろう。
スミレは遠野に質問する。「アツシにインタビューしても楽しくない」「カメラがないとしゃべれないんでしょ」「一緒に暮らそうか?」「でも小谷と一緒がいいって」「ずっと一緒にいられるわけがない」
同じ場面の映像を2度繰り返しているが、マナの側とスミレの側との心境の違いがよくわかる。
マナにとってはそれらはただの偶然の出来事で、スミレの考えで、それはそれで仕方ないことだと考える。
スミレは意識的で、ポーチの持ち主を名乗らず、実家を飛び出しマナのアパートへ転がり込んで、彼氏を見つけ、一緒に暮らし始める。この時スミレは自分に嘘をついたのかもしれない。本当は、ありのままの自分でいられるマナと一緒に居たいのだ。
しかし彼女の「本当の気持ち」はマナにも遠野にも、母にさえも分からないのだ。
ここで遠野の考えとマナの考えの対立がリアルに感じる。「スミレの本当の気持ちを知る必要はあるのだろうか?」
「心から信じている」飼っている猫や犬との無償の愛… そして、マナに対する心からの信頼と愛情。それがマナの夢の中で登場したスミレが、マナにキスをしようとする場面に現れている。考えすぎて自分を見失っていたのはスミレだったのだ。
実家、三四郎、母、マナ、遠野… それらを一旦置いたまま一人旅に出たスミレ。
彼女の目的は何だったのだろうか? それは、自分についた嘘と自分探しだったと思う。
白装束を着た老婆は言う「電車は来ない」 スミレは「思い」を抱え込んだまま逝ってしまう。
彼女と1年間暮らした学生時代からのアパートは、今でもマナは住み続けている。彼女からの伝言もずっと消せずにいる。
そしてやはり冒頭のアニメの続きがあった。ショートヘアの人物はスミレだった。彼女に駅で話しかけてきた老婆は、白い着物を着ていた。アニメの白骨と菊の花。スミレは菊にも白骨にもならず、肉が朽ち果て海になって、そして海の中から海辺に立つマナを見ていたのだ。マナを見届けたスミレの雫は、天へと昇り、やがて雨とともにマナの庭先の植物に注がれる。
青い服を着たマナ。夢でスミレと邂逅した後、ビデオを撮り始めた。
「覚えていますか、初めて出会った時のことを? そちらからこちらは見えますか?」
そしてタイトルへとつながる。
レビューを書きながら涙がこぼれてくるが、それが何を意味するのか自分でもわからない。
難しすぎて、妙に切なくて、涙だけがこぼれてくる。

コメントする 2件)
共感した! 10件)
R41

4.5もう一度歩き出すために

2024年1月25日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

泣ける

難しい

すみれは真奈を愛していたのだと思う。そして、真奈も。大切な人がいるか問うすみれに、「フフ、秘密」と誤魔化し仄めかしたのを、勘違いして遠野の所へ出て行ってしまったのだろうか。引っ越しの時は気まずかったけど、そのまま別れてしまったのではなくて、少し大人になってから再会してはいる。けど、わだかまりはあったのかな。
それが引っ掛かっているから、真奈は先に進めなかったのだろうか。何度も探しに行って、見つからなくても諦めきれなくて、そのうち何を探しているのか、本当は何を見つけたいのかわからなくなって、探しに行くのをやめて、でも踏ん切りはつかなくて。遺品の整理も納得できなくて、悶々と過ごしていた。
身近な人の突然なできごとをきっかけに、もう一度、真奈の心が動き出す。大きな喪失で喪失感を埋めるかのように。他の遺された人々、地元に伝わる童歌で、生命の循環を知る。輪廻転生。止めていた録画をもう一度回すことで、すみれの知らなかった一面を知る。そうして自分も、もう一度歩き出すことができる。
人間の感情は単純ではなくて、辻褄も合わないし一貫してない。その揺れが物語をわかりにくくしていて、深く考えるきっかけをくれる。良く出来た映画。素晴らしい。

コメントする (0件)
共感した! 2件)
あらP★

4.5人の死

2022年4月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

人の死って、本人は死んで終わりですよね。
だけど、残された人はそこで終われないわけです。
それでですね、残された人にとっての死って、溶けるように終わっていくんじゃないかと思ったの。

すみれの母や遠野は、自分の中ですみれの死を溶かしていったんだと思う。
一方の真奈は、終わらせたくなかったんじゃないかな。
それでも、運命的な出会いをした日の天気が思い出せなくなるように、少しずつ溶けていってしまうんだと思うし、そうであるべきなんだとも思う。

あの震災から十年以上が経って、いなくなってしまった人の記憶が、残された人の中で、能動的にも受動的にも溶けていってるんじゃないかな。
それでも、終わらせてはいけない部分も有って、そういう時に映像の力は、手助けになるんだと思うの。

この映画の記憶も、やがて私の中から消えてしまうかもしれないけど、例えそうだとしても観て良かったと自信を持って言える映画かな。

コメントする (0件)
共感した! 5件)
やきすこぶ

4.5映画を観た。という気持ちになった

2022年4月8日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

舞台でもなくドラマでもなく、映画を観終わったという気持ちになれた。

他の方が書いている通り、津波を絡めていることが却って焦点を暈している感は否めないが、それを差し引いても真奈とすみれ二人の視点で紡がれる淡くも切ない物語は優しくそして確りと心に沁みてくる。

台詞も少なくこれだけ空白の多い感情の隙間を埋めて余りある二人の演技は圧巻。
特にすみれが真奈を見つめる時の表情は息苦しいほど熱く、そして切ない。

もう一度観てしまうかも知れない。

コメントする (0件)
共感した! 4件)
take-c

4.5派手さはないが染み染み見入ってしまう

2022年4月3日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

中川龍太郎監督らしい作品です。
いつも通り、風、波、風景、日光を生き生きと描写し、寡黙な演者が目の動きや表情、仕草で感情を表現していく様は絶妙です。心の襞をうまく表現してるなと感心します。

コメントする (0件)
共感した! 12件)
ちゆう

4.5今、観てほしい映画

2022年4月3日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 突然目の前からいなくなった親友すみれ。その喪失感を抱えながらも、自分は友人のいったい何を知っていたのかと葛藤する心情を、岸井ゆきのさんが見事なまでに表現してくれています。終盤は、すみれの人として普通に悩んで生きていた生、その後のアニメーションにつながる現実。友人の思いは自分に届き、自分の思いは海へと届く、そんな再生の物語だと思います。
 美しい映像と丁寧なつくりで、気持ちにも時間的にもゆとりのある時にじっくり観てほしい映画です。今、作って欲しかった映画、今、観てほしい映画です。

コメントする (0件)
共感した! 4件)
chapo