「いかに喪失と向き合っていくか」やがて海へと届く 牛津厚信さんの映画レビュー(感想・評価)
いかに喪失と向き合っていくか
手の温もりが伝わるアニメーションで幕を開ける冒頭から、この映画が一体どのような境地や風景へと我々をいざなおうとしているのか、すぐには想像がつかない。ミステリアスとも浮遊的とも言いうるタッチで浮かび上がるのは、二人のヒロインが人知れぬ思いを抱えながら歩み続ける人生だ。なぜあの時、彼女は声をかけてくれたのか。なぜ彼らは無二の友になれたのか。そして私(主人公)は親友のことを一体どこまで知っていたのかーーー。他人の心を理解するのは難しい。ましてや当人が亡くなると、残された者はこの答えなき問いをずっと抱えることになる。それは時に悲しくて、苦しい。しかし本作は、ずっとその人を思い続ける、忘れない、という一つの決意と寄り添いを優しく、尊く描いていく。若き女優たちの移ろいながら葛藤し続ける存在感に魅了された。そして観賞後はなぜか自分の人生における”もう二度と会えない人々”の思い出がなぜか強く思い出された。
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