「音楽の視覚的表現の凄み」BLUE GIANT image_taroさんの映画レビュー(感想・評価)
音楽の視覚的表現の凄み
本物のジャズプレーヤーが演奏しているのだから、そりゃもちろん演奏が素晴らしいのだけど、それ以上に演奏シーンの映像表現が、共感覚的と言ってよいレベルで音が視覚化されているかの如く、色と線が激しく躍動している。それを眺めていると、プレーヤーが演奏している時の内蔵感覚まで伝わってくるような感じがした。私は原作漫画を未読なので、原作にある絵の表現に、こんな映像表現を作り手の中に喚起しうるポテンシャルがあったのかどうかわからない。しかし、とてつもない凄みを感じたことには違いなく、圧巻という他ない。超弩級の大傑作と言って差し支えなし。必見です。
(2024.3.21追記)
その後、どうしても原作を読んでみたくなり、映画化されている部分に該当する最初の10巻を読んでみた。音が躍動する様をこんな風に視覚化できる原作者の力量はやはり舌を巻くレベルで、アニメーションでの表現がああなったのを十分に納得させられるものがあった。
そしてそれ以上に、10巻分のストーリーを過不足なく120分の映画の中に凝縮して見せたその力量に驚嘆した。映画では相当にエピソードが削られていたり(にもかかわらず、そのエピソード匂わすように、随所にシーンがはさまれている)、クライマックスに原作にはないくだりが(実に効果的で、物語をより豊かにする形で)追加されていたり、かなり大胆に映画として成立させるためのアレンジが施されている。私はこの出来栄えから、大友克洋の『AKIRA』を連想した。こちらも、長大な原作を一本の映画に見事に昇華した類稀な成功例と言って良いが、『BLUE GIANT』の出来栄えは、これに匹敵すると言って良い。