「フランス革命前夜に」デリシュ! ゆみありさんの映画レビュー(感想・評価)
フランス革命前夜に
特権階級のためのものだったフランス料理(今のフランス料理とは形態は異なるようですが)がフランス革命と前後して、初めて開かれたレストランによって庶民のものにもなった(ここで今のフランス料理の形態になったようです)という実話をもとにしたお話。
この実話の陰には貴族たちの特権意識と庶民に対する理不尽な振る舞いがあり、その被害者の一人に公爵家の腕利きの料理長マンスロンがいた。そして理不尽な理由でマンスロンを解雇したシャンフォール公爵は陰謀で一人の男の命をも奪っていた。その男の妻であるルイーズの協力もあってマンスロンは"みんなのためのレストラン"を何もないのどかな田園地帯に開く。
最後にルイーズの恨みを晴らすため、マンスロンはある企てを計画しシャンフォール公爵を店に招待する。何も知らない公爵はガールフレンドを連れてレストランに現れる。公爵がマンスロンの料理に舌鼓を打っている最中、彼が軽蔑する庶民たちがぞろぞろとレストランに現れる。招待されたのだから当然貸しきりだ思っていた公爵はびっくりする。「食べ物の味もわかるわけのない奴ら(庶民)と一緒に食事ができるか!」という怒りと軽蔑の眼差しを他の客に向けるわけだが、庶民は庶民でこの先客が貴族だとわかると敵意剥き出しの眼差しを向ける。それを察知したシャンフォール公爵はマンスロンにはめられたことに初めて気付く。公爵は「こんな店潰してやる。覚えてろよ」と捨てぜりふを吐くが、ルイーズは公爵の悪事の証拠をつかんでいるわけで、それを伝えると公爵は黙って逃げ出すしかなかった。
そこに「バスチーユ牢獄の襲撃事件が数日後に起きる」というクレジットが入る。なるほどそういうことだったのか。他の客のシャンフォール公爵に向けた敵意剥き出しの眼差しと悪意に満ちたひそひそ話の理由、この映画の時代背景がわかり我々は納得する。
この映画では美しいフランス郊外の田園風景とそれを背景にテーブルの上に並べられたフランス料理の美しさ(絵画のよう)を視覚的に堪能することができる。面白くてためになる良い映画です。