「やりすぎ感が……」ラーゲリより愛を込めて pekeさんの映画レビュー(感想・評価)
やりすぎ感が……
予告編を観て「お涙ちょうだい的な映画だな」という印象を受けたので、それほど鑑賞したいとは思いませんでしたが、僕自身が大東亜戦争終結後の東南アジアにおける抑留に関心があるということもあって、何か勉強になればと劇場に足を運んだ次第です。
というわけで、『ラーゲリより愛を込めて』。
思っていた以上に見応えがあり、つくり手たちのメッセージや熱意も伝わってきたけれど、脚本や演出や演技に過剰だと感じるところが多々見られたのが残念でした。
とくに引き揚げ船での「クロ」のシーンでは、「アカン、アカン、いくら映画とはいえ、ここまでやったらやり過ぎやろ」と胸の内でツッコミをいれていました。
それまでは「動物の使いかたがうまいな。犬を登場させることで画面がなごみ、物語にふくらみが出来たな」とひじょうに好意的に観ていたのですが、この引き揚げ時の場面では完全にひいてしまった。それから、その後のクロの扱いにも「やりすぎ感」を感じました。
こんなこと言って、クロに関する件(くだり)が事実だったとしたらゴメンなさい。でも、そんなわけないよなぁ。
――と、ここまで書いたあと、念のために調べてみたら、な、な、なんと!!! クロのことは、ほぼ実話だというではありませんか! いや~、参りました。
「事実は小説よりも奇なり」と言いますが、まさに事実は映画よりも奇なりですね。自分のひねくれたものの見方を反省するとともに、抑留者たちは、僕の想像を上回る様々な体験をしたのだなと思い至りました。
しかし、いま挙げたクロの場面を差し引いても、うーん、やっぱりこの映画からは、前述したように、脚本や演出などの過剰からくる「やりすぎ感」というか、わざとらしさのようなものをちょっと感じてしまいます。
ついでに個々の俳優について少し言わせていただくと、北川景子はうまいと思ったけれど、二宮くんや桐谷健太は、いささか「演技」が前に出すぎているような気がしました(というか、そもそも桐谷健太は、あんまり役にフィットしていないように見えた)。
なかなかの力作だし、悪くない作品なのだけれど、上記のような理由からか、残念ながら僕はこの作品に深みや厚みといったものを感じなかったです。
あと、作品の終盤に少し冗長な印象を受けました。
追記
恥ずかしながら、シベリアにあれだけ長期にわたって抑留された方々がいたということを本作ではじめて知りました。
それにしても、ひどすぎる。理不尽にもほどがある。今更ながら、ソビエト(ロシア)という国に対して怒りがこみ上げてきます。
ところで、僕が本作を鑑賞したとき、劇場には予想以上に多くの観客が訪れていました。
僕の席の近くにも4人組の男子高校生や2人組の若い男の子などがいて、シベリア抑留を題材とした映画に、こんな年代の人たちも関心を寄せているんだなと意外に思い、少しうれしくも思いました。