「油断するとまだ泣けてきます」ラーゲリより愛を込めて ke_yoさんの映画レビュー(感想・評価)
油断するとまだ泣けてきます
他の方も書いていたけど、ロシアのどこかの地名かと思っていた「ラーゲリ」は収容所だったのですね。
ある意味、というか私は経験がないので勝手な印象ですが、戦争をしている国にいて、いつ空襲受けるか分からないでいるより過酷な収容所の生活…
あんな極寒の地で、粗末な食事、不衛生で休まらない環境、過酷な労働、何かあれば暴力に晒されて、営倉で南京虫に襲われるとか、もう考えられないことばかり。
そんな中で、人や未来に愛を持ち続けるとは、何と立派な男だったのだろう山本。
穏やかな笑顔と、包容力や知性を感じさせるニノの演技は、立派だけれど普通の人であることを思わせて、とても良かったです。
そんな山本を信じて、笑顔を絶やさず4人も子供を育てる素晴らしい女性を演じた北川景子が見事でした。
元々好きな女優さんで、演技も世間からはあまり認められてないようだけどいやいやなんの、私は好きだったのですが、今作を持っていよいよ文句を言う人はいなくなるのではないかと思っています。
遺書を伝えにくるという展開は全く予想しておらず、再会できて感動するものと期待していた平和ボケの私にはショックも大きかったのですが、その、遺書を伝える面々の名優ぶりは言わずもがなでした。
記憶するという発案、そのキッカケとなった「頭の中で考えることは誰にも奪えない」という意味のセリフ。
これ、ライフイズビューティフルにも同じようなセリフがありましたよね。
私自身も昔からずっと思っていることですが、本当に、生きていく上で一番大切なくらい、大切な心がけと思うんです。
心は自分のもの、ということを忘れないって。
それが本当に感動的でした。
あの過酷な状況にも関わらず、遺書を記憶して、家族に届けるという使命をそれぞれが果たす。
またその使命が、生きる力を生むということ。
話は飛びますが癌になった原因に、あの過酷さや南京虫の懲罰が無関係とは到底思えないと劇中ムカムカもしてしまい、戦後の混乱でどうにも出来なかったとは言え今なら人権問題にしてとか考えてもみたが、皮肉にも訴えたい相手は今またこんな時代に戦争をしている…
悲劇ばかりを生むと分かりきっているはずなのに、今またこんな時代に。
この世にある悲しさで泣き枯れる戦争映画を強制的に全部観せて思い直してもらいたい。
しかし悲しいかな、それをしてもきっと、あの国の自由な心は、戦争をやめないのだろうな。
早く平和になりますように。
そうだ、愛しのクレメンタイン子供の頃から好きな曲で、心の中で共に歌いました。嬉しかった。
ke_yo さん
はじめまして。夏子といいます。お若い方とお見受けしますが、ちょっと気になることがあってコメントします。
シベリア抑留は、戦争中ではなく、終戦後に行われたことです。故に、国際法違反と非難されています。
私は、今、79歳。父は実際にシベリア抑留された人です。ソ連は、8月9日に日本の傀儡国家である満州に侵攻、8月15日に終戦です。我が家は、終戦になって満州で右往左往しているときにソ連から呼び出しがあって、父は、母と子供四人おいて9月5日に強制連行されて、家族とは生き別れです。父は3年で帰国しました。終戦後に、満州の男狩りという感じで民間人も含めて男性は根こそぎ強制連行されたので、シベリア抑留の恨みはなお一層強いのです。