「羊たちの沈黙…?」LAMB ラム bunmei21さんの映画レビュー(感想・評価)
羊たちの沈黙…?
どこまでも続く曇天の空、果てしなく広がるアイスランドの大地を舞台に、そこに暮らす羊飼いの夫婦が、破滅への道を歩んでいくスリラー・ミステリー。効果音やBGMも一切無く、聞こえてくるのは北の大地を吹きすさぶ風の音と羊たちの泣き声。それが却って、この作品の謎めいた不気味さを煽ってくる。
本作は、禁断な生業への贖罪といえる内容で、賛否が別れる作品だと思う。最後の最後まで、謎を引き付けて、心揺さぶってくる演出は、素晴らしい。しかし、ラストのオチや正体の部分が、今ひとつハッキリしないまま、非情なまでのイヤミスで、いきなりエンドロール。やや短絡的で、何となく消化不良で観終わった方も多いのではないだろうか?
前半は、トラクターで牧草を刈り、干し草を羊に与え、放牧犬と共に羊を追い込み、羊飼いとしての日常を大変リアルに描いていく。そんなある日、羊の出産に立ち合った時、羊ではない『何か』が生まれる。子供を亡くした夫婦は、その『何か』にアダと名付け、子供の様に育てることにする。
しかし、母親の羊は、夫婦に連れ去られた子供を追い求めて、夜な夜な夫婦の部屋の前で子供に向かって「メェー」と鳴き続ける。次第に妻のストレスが溜まっていく中、夫の弟が借金から逃れて、舞い戻ってくる。当たり障りない夫婦と弟の会話の中にも、少しずつ不穏な空気が漂い始める。
本作のスリラーとしての魅力は、物言わぬ羊の描写にあると思う。音のする方向に、一斉に見つめる羊たちの視線、自分たちの運命を知っているかのような、哀愁が漂う鳴き声、全てわかっていると語ってくるような仕草。まさに、悲哀が溢れる『羊たちの沈黙』とも言える。
妻のマリア役のノオミ・ラパスは、『シャーロック・ホームズ シャドウ・ゲーム』や『プロメテウス』にも出演したスウェーデン出身の女優。本作では、田舎の羊飼いの妻らしくスッピンで、泥臭い体当たりな演技を魅せてくれただけでなく、製作総指揮も務めている。ラストシーンは、いろいろな思いが掻き立てられる、彼女のアップでエンドロールを迎える。
NOBUさん(^^)コメントありがとうございます😊本作の象徴でもある羊に対する,深い読み取り、勉強になりました。最後の羊人間が、理不尽な人間への報復という点,納得しました?
今晩は。
今作は、色々な観方が出来る映画ですよね。
私は、今作は”羊”(犠牲という意味でも古代から使われる存在ですね。)の、人知を超えた羊の王(人間とも関りあり・・。)の羊の悲哀に対する人間への理不尽な報復ではないかな・・として、(最初のホワイトアウトのシーンと併せて)、途中から見ていました。
北欧のダーク・ファンタジー作品は観客に解釈を任せる処が好きですね。
では。これからも宜しくお願いいたします。