「母性愛」LAMB ラム ぷにゃぷにゃさんの映画レビュー(感想・評価)
母性愛
フライヤーの画が、キリスト教の聖母子像をかたどっているようなので、たぶん宗教的ネタが入っているんじゃないかと思っていた。羊飼いとか子羊のワードは聖書に出てくるし、主人公の名はマリアだし、クリスマスの日から始まるし。でも、物語の中でどう関わりがあるか、具体的にはわからなかった。
母性愛がやはり根っこにあるのかな。アダを生んだ母羊は、子供を探してしつこく鳴く。その気持ちは子供を失ったマリアも理解できるはずなのに、アダを自分のものにしたいがため、母羊を追い払う。マリアの夫も傷ついており、マリアがアダによって幸福を感じるとともに、彼も満足感を得る。この夫婦は、なぜアダが生まれたのかも、先々のことも考えない。愛ゆえに狂ってきてるのかも。
夫の弟の来訪で、平穏な暮らしが終わるのかと思いきや、意外に楽しくやっていた。ただ、兄の妻だというのにちょっかい出すから、強制送還。ええっ、弟なんのために登場したの〜? ついでに、デンマークとのサッカーだかハンドボールだかの試合観戦シーンと、ミュージックビデオは必要だったのかな。
アイスランドのラグナル・ヨナソン作「閉じ込められた女」という小説で、冬の情景が描写される。アイスランド山間部の冬は、ほとんど吹雪で、数ヶ月家に閉じ込められる。ほんの数メートルでも、遭難しかねない。アイスランドでは殺人事件は滅多に起こらないが、行方不明者と自殺者は多い。事故、遭難はもちろん、殺したとしても人里離れたところに埋めてしまえば、そうそう見つからない。それくらい厳しい土地で生きるのは、なかなかしんどいだろうな。ほんのちょっとの油断でも、生命が脅かされる。アダ(人間の方)が、何故死んでしまったか、川を探すという言葉に鍵がありそう。
本当は不吉な存在のはずのアダだが、やはりかわいい。花冠をかぶったところや、ぴょんぴょん跳ねるところ、猫がぴったり寄り添ってゴロゴロ言ってるところなんて、きゅんとするわ。この映画、動物のショットが効いている。本当は意味なんてないはずなのに、意味ありげに撮る。騙されてしまう。
天からの贈り物だと思っていたが、実は地獄からだったんじゃないだろうか。受け取らなければ良かったのかも。
アイスランドの野生の馬のコメントありがとうございました。ちょっと調べました。もともとはバイキングが連れてきた馬で、長~い間に純血化して、固有種としては世界一古いとか。道産子みたいだな~と思って見ていました。実写じゃなくてCGだったようなので、ホントか?と疑ってしまいました。予告編を観たのは帰ってきてからでした。かなりネタバレで、ストーリーの8割はトレーラーで十分な感じでしたね。予告編見ないで、観てよかったと思いました。
ダンシング・イン・ザ・ダークのビヨークもアイスランド人で、とても暗い印象を受けてしまいますが、アイスランド、一度は行ってみたいと思いました。