「家族とは?正義とは?」LAMB ラム LADAさんの映画レビュー(感想・評価)
家族とは?正義とは?
見なれない雄大な自然の中で、言葉少なに進むファンタジーはまるで海外の絵本のよう。だからこそ、マリアやイングヴァルの佇まいからはもちろん、羊や犬や猫の表情からも何かを読み取ろうと凝視してしまう。子を失った夫婦の過去を知り、アダの可愛さも手伝って、彼ら家族を歪ながらも幸せな形と捉えてしまう。
そして、明らかな違和感を平然と受け入れて進む展開に、観る側もどこかネジが外れてしまうのだろう。
(以下ネタバレという名の妄想)
「俺は羊と“ままごと"なんかしないぜ」なんて兄の妻に関係性を迫る弟のセリフや、何かを後悔するような素ぶりを見せる兄。アダを天からの贈り物だと濁すからこそ、その出自がミスリードされてしまう。セリフが少ないからこそ、その一挙手一投足から余計な思いを巡らせてしまう。
半人半獣。母が羊なら父は誰?
アダの手がイングヴァルからすり抜けていくシーンに「可愛そう」なんて思ってはいけない。実の父が拐われた娘を取り戻しに来たのだ。
人間じゃないから悪いやつ?
いや違う。母を殺し、羊にウールのセーターを着せ、美味しそうに食べる草を取り上げる、掴むのはいつもアダの左手。そんな自分勝手な夫婦から我が子を救ったヒーローだ。半獣界のジョン・マクレーンじゃないか。
自らの正義は、相手からすると意外と悪だったりするものだ。迷える子羊は、まるで悪魔のような見た目の父の大活躍で本来の家族のもとに帰った。妻の仇も同じ銃で討った。それだけの実にシンプルなお話が、人間のエゴと偏見によって理不尽で不条理なストーリーに変わり果てる。人って怖い。そしてその緻密な構成に拍手。
今晩は。
”自らの正義は、相手からすると意外と悪だったりするものだ。迷える子羊は、まるで悪魔のような見た目の父の大活躍で本来の家族のもとに帰った。妻の仇も同じ銃で討った。それだけの実にシンプルなお話が、人間のエゴと偏見によって理不尽で不条理なストーリーに変わり果てる。人って怖い。そしてその緻密な構成に拍手。”
うーん、参ったなあ。凄く的確なレビューですね。感服です。では。