マクベスのレビュー・感想・評価
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新たな「マクベス」の傑作
70年代初頭から映画を見始めた自分たちの世代にとってマクベスといえば絶対的に「ロマン・ポランスキーのマクベス」。シェイクスピアのクラシックながらニューウェーブな傑作だった。
今作はデンゼル・ワシントンとフランシス・マクドーマンドを主演に、コーエン兄弟のお兄さん・ジョエル・コーエンが初めて単独で監督した作品。
モノクロ&スタンダードの映像美と名優たちの競演は見応えがある。斬新だなぁと思いながら観始めたが、観終わったときの感触はザ・オーソドックス。紛れもないマクベスの悲劇だった。傑作だった。
演技重厚映像ペラペラ
【キレイは汚い、汚いはキレイ】
冒頭の「Fair is foul , and foul is fair」は、シェイクスピアの戯曲「マクベス」のあまりにも有名な3人の魔女のセリフで、日本では一般的に「キレイは汚い、汚いはキレイ」と訳されている。
英語表現から異論もあるようだが、日本語の”汚い”には様々なニュアンスがあるので、この訳は非常に見事だと思う。
そして、この物語の不穏な行く末をあまりにもよく表している。
戯曲「マクベス」は、世界的にも非常に高い評価を得ていた蜷川幸雄さんの「NINAGAWAマクベス」が非常に有名で、この舞台を見たことがない人でもおそらく知っているような作品だと思うが、この映画「マクベス」は、蜷川幸雄作品をご覧になったことがある人にも是非観て欲しい作品だと思った。
「NINAGAWA マクベス」は、登場人物や場所はそのままの名称で、舞台設定や衣装は、日本の武家文化が花開いた室町や安土桃山時代の絢爛なものを思わせる豪華さだ。
僕は、蜷川さんが亡くなった後の公演も含めるとと、この作品を3回観ている。
この映画「マクベス」は、制作の「A24」的と言ってはなんだが、モノクロであることを考えても、絢爛さからほど遠く、衣装なども質素だ。
そして、建物は現代建築風だ。
だが、物語やセリフはシェイクスピアの「マクベス」ほぼそのままだ。
だから、蜷川幸雄作品をご覧になった人には、その比較感も楽しめるように思う。
「キレイは汚い、汚いはキレイ」は、物語の、この世界の光と影、マクベスの栄光と転落、安心と不安という矛盾が同居している様を示唆しているのだ。
光あることころには必ず影がある。
自らの運命を信じることが出来ず、功を焦り、栄光と安心を求め、策略を巡らせれば、どこかに綻びが見つかり、更に、それを繕うために新たな策略が必要になり、そして、複雑化した策略を自ら支配することが出来ずに猜疑心が広がり、それは止まるところを知らず、栄光には転落を予感させ、安心は不安に変わって行くのだ。
これは、僕たちの世界も同じではないのか。
「マクベス」は、日本でも人気のシェイクスピアの代表的な戯曲だと思うが、蜷川幸雄さんの作品だけが理由なのではない。
下克上のストーリーや、因果応報、盛者必衰、無常などが、日本の歴史や仏教哲学に通じるところも大きな理由のように思う。
自分の運命を信じることが出来ず、功を焦り、あれこれ行動に移すが、実は、それによって運命はあらぬ方向に向いてしまう。
これは多くの人に共通した、人間の弱さや、抱える矛盾の表れではないのか。
この映画のオリジナル・タイトルは「マクベスの悲劇」だが、これは、僕たち多くの人間の悲劇のメタファーなのだ。
だから、この作品は日本のみならず世界中で人気なのだと思う。
紡がれる言葉の多くに、様々な示唆が感じられる。
改めてシェイクスピアの「マクベス」の凄さを感じると同時に、この映画「マクベス」の、映像の中に舞台を持ち込み、しかし、絢爛さを抑え、敢えてモノクロとすることで、演技や会話に集中させるような演出は、やはり、見事としか言いようがない気がする。
ジョエル・コーエン、デンゼル・ワシントン、フランシス・マクドーマンドに拍手だ。
※おまけ。また、魔女のセリフなんだけど、「Double, double toil and trouble;Fire burn, and cauldron bubble.(2倍だ、2倍。苦労も苦悩も。炎よ燃えろ。ぐつぐつ煮えろ。)」は、ハリー・ポッターでも使用されている有名なセリフです。
シンプルな映像美
映画という舞台装置を使った演劇
お詫びの手紙
前略
シェイクスピア様
文学にとどまらず、世界史的にも燦然たる足跡を残されておられるご高名ぶりはかねてより承知しておりました。
しかし、私の脳内の情報処理能力、記憶容量は極めて劣等でして、例えて言えば16ビットのCPU、フロッピーディスク程度といったところでございます。ですから、英語の原文どころか日本語訳ですら拝読したことがございません。
それなのに、単なる直感的な好奇心が、これは面白いに違いない、と唆すものですから、ついつい近くの劇場へ向かってしまいました。
で、映画についての感想ですが…。
さすがレトリックの神様、ともいうべきセリフの洪水を浴びてしまい、せっかくアカデミー賞俳優が熱演しているというのに、字幕を追うので精一杯でした。ついには脳内CPUの冷却機能が追いつかず、ところどころで休眠措置を施すことになりました。それでもセリフと名優たちの表情が一致した瞬間のゾクっとくる言葉の剣先は、十分に感じ取れました。
鈍感な私なので、かすり傷程度にしか受け止めることができていない恐れは否定できませんが。
ご出身地の英国をはじめ、現代世界もまだまだ新型コロナの猛威から抜け出せないでおりますが、一方で、言葉の力だけでなく、表現にかかるすべての営みの重要性も一段と増しています。
21世紀の世界についても引き続き見守ってくださることを祈念しております。
草々
簡素で豊饒
フランシス・マクドーマンドがマクベス夫人をやるのか、コーエン監督がシェイクスピアやるのか、という好奇心のみで見に行った。
少し眠くなった箇所もあったけれど台詞で目が覚めた。本としてしか知らず、日本語翻訳の芝居でしか見てないシェイクスピアのことばが現代の俳優によって英語で発せられるとこうなるのか。リズム、抑揚、韻の快感、スピード(早口言葉くらい速い時もあって感動)に吸い込まれた。台詞自体は謎かけ入りで大仰だが役者の表情と身体の動きは自然でリアルだった。日本で上演される翻訳劇は原作が何であれ両手を振ったり表情や発声が大袈裟なことが多く好きでないのでとても良かった。照明はモノクロ映像を意識したもので美しかった。舞台のようで舞台ではない。日本の昔の白黒映画を思い出した。セットが限りなくシンプルだったからかもしれない。階段と屋敷の冷気に美しさを覚えた。「三人の魔女」のキャサリン・ハンター、デンゼル・ワシントン、そしてマクドーマンドが素晴らしかった。ひんやりと簡素な映像と豊饒なことばに満ちている世界は話の内容とは裏腹に清浄だった。
1800円で割引無し 爺さん婆さんは見るな?
やたら、混んでいる。嫌な予感がする。A24と言うことだから、あまり、期待していないが。予感が外れると良いが。
やっぱり、面白くない。どうして面白くないのだろう?偏見か?
舞台を映画にしたので、映画的工夫を施さない限り、舞台は超えられないと思う。舞台は台詞を発する緊張感がある。間違えては台無し。しかし、映画はカットが入れられるので、間違えても取り直せば良いわけだ。だから、会話の緊張感が無いと思う。
また、CGを多用して、きみの悪い白黒映像を作ってしまっている。だから、白黒の漫画映画の中で、殺陣をやっているって言う感じ。平たく言えば、絵が汚い。黒い物がゴミの様に飛び回るって感じかなぁ。CGなんか使わずに本物を使えば良かったのにと思う。異型の鳥って白黒映画があったが、恐ろしさはあちらの方があったと記憶する。
ハムレットを見た後の印象
全くの駄作だと思う。つまり、奇をてらっただけのおかしな演出になってしまっていると思う。私的だが、-5点
但し
舞台ならば、この演出でも、見てみたいなあかなぁ。俳優の演技力は良いとは思うし、最初はシェークスピアをディスったが、とんでもない事だ。ハムレットを見て、完全に前言を撤回する。でも、映画は駄作だと思う。白と黑の2階調に拘り、俳優は白人と黒人を使い、鳥は黒いカラス 狙いは分からないでもないが、CGでそれを表現しているから、水墨画のようなアナログ感が無い。
兎に角、ハリウッド映画はいい加減、CGを辞めるべきだと思う。co2削除なんだから。
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