「島国日本の小さな世界。」マイスモールランド はるたろうさんの映画レビュー(感想・評価)
島国日本の小さな世界。
難民認定の申請が通らずビザを失った在日クルド人一家を描いたまるでドキュメンタリーのような映画。ものすごく考えさせられました。自らをドイツ人だと偽ることに後ろめたさを感じながら生きる高校3年生のサーリャ。突きつけられた不条理とも言える現実に必死に向き合おうとする姿はやはり胸打たれます。
度々取り上げられる日本の難民認定における高いハードル。そして人権を軽視するかのような入管施設での生活。世界から見れば日本は豊かで平和な国。しかし残念ながらこの国は生まれた場所を追われ助けを求める人達を受け入れることがまだできずにいる。それは単に自国民を優先すべきということもあるだろうし、制度の悪用を危惧してかもしれない。もっと言えばその数が膨大になれば日本という国そのものの在り方が変わってしまう可能性だってないとは言い切れない。かと言って、長年懸命に日本社会に溶け込もうともがいて来た人から自由を奪って監視することが正しいことのはずがない。
生活に追い詰められたサーリャがパパ活に手を出す。関係を拒まれたサラリーマンが「出ていけ!日本から!」と口汚く罵る。
本当の日本人はどちら側だろうか。
世界のフェーズが確実に変わった今だからこそ私達はしっかりこの問題に取り組まなければならないと切実に思った。もはや遠い国の他人事ではない。「名前や顔は出せないけれど協力してくださったクルド人の方々」というエンドロールの文字から学ぶことは多い。
最後に嵐莉菜の凛とした美しさが逆境に立ち向かうサーリャに本当にピッタリでした。素晴らしかった。
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