「偉大な父親の愛に号泣」マイスモールランド あささんの映画レビュー(感想・評価)
偉大な父親の愛に号泣
クルド人についてどれほどの人が知っているのだろうか。トルコから難民として逃れてきた約2000人近くのクルド人が日本で暮らし、そのほとんどが難民申請中とのこと、さらには入国管理局の理不尽さと恐ろしさを私は本作で知ることになる。
本作は在日クルド人への取材を基に製作されたフィクションではあるが、その中には日本で暮らす外国人が受けるイジメやどこへ行っても“ガイジン”と言われたりする苦悩と疎外感が描かれている。一方で自分たちのルーツや文化、しきたり、仲間同士で助け合う姿も描かれていて、取材から忠実に描かれていることが感じられる。
埼玉県川口市に住む高校生のサーリャは、幼い頃にトルコから父や仲間とともに日本にやってきた。小学校教諭になることを夢見て真面目に学業とアルバイトに励む日々。もちろん友達との時間も大切にし、日本の文化に溶け込もうと頑張っている。他にも家事や小学生の弟の面倒を見たり、日本語ができないクルド人たちの通訳も担ったりと、あまりに多くのものを背負う17歳の少女を見て応援せずにはいられない。
そんな中、難民申請が不認定に。在留資格を失ってからの一家に襲いかかる出来事に、見ているこっちが心が折れそうになる。
これまでの生活が徐々に壊れていく反面、アルバイト先で出会った聡太との距離が徐々に縮まっていく二人の関係性に希望が感じられる。
主人公サーリャ演じた嵐莉奈と聡太演じた奥平大兼の二人が透明感溢れ瑞々しい。鑑賞前はシリアスな社会派映画だと思っていたけど、青春映画要素もたっぷりだった。
難民問題や在日外国人の問題を知るきっかけとなる作品、教育現場などでも取り扱ってもらえたらいいな。