「【映画を三作公開したがヒットに恵まれない女性映画監督が、60年代の女性監督の映画”女判事”を修復する過程で徐々に人生を見つめ直す物語。余韻良き作品である。】」オマージュ NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【映画を三作公開したがヒットに恵まれない女性映画監督が、60年代の女性監督の映画”女判事”を修復する過程で徐々に人生を見つめ直す物語。余韻良き作品である。】
■今作を鑑賞すると、女性映画監督になる事の大変さが伝わって来る。いわんや、60年代であれば尚更であろう。
邦画の女性監督と言えば、西川美和監督、河瀬直美監督の名が思い浮かぶが、私の好きな監督として、荻上直子監督、大九明子監督、タナダユキ監督も忘れてはいけない。
だが、男性監督の数と比較して女性監督の一線で活躍している方は限られているし、男性でも長年助監督を務め、漸く監督になり作品を公開したがそれっきりで再び助監督の道を歩む方が多い気がする。
持論であるが、映画監督で名を成すという事は、東証一部上場企業の社長になるより難しいと思っている。
■最新映画の動員数も奮わず、投資家にも見放され、新作を撮影する目途が立たない49歳の女性映画監督・ジワン(イ・ジョンウン)。
ある日、後輩から'60年代の女性監督ホン・ジンウが残した映画”女判事”の音声修復作業を紹介され、作業を引き受けたジワンは不自然に抜けているシーンがあることに気づく。
◆感想
・ジワンは夫サンウ(クォン・ヘヒョ)と息子ボラム(タン・ジュンサン)とマンションで暮らしているが、素っ気ない夫との生活や自身の三作目の作品を見に行くがお客が全然入っていない事で、閉塞感を感じているように見える。
・そんなジワンに依頼された、60年代の女性監督ホン・ジンウの”女判事”のフィルム”で抜けていた音声を吹き込む仕事が新鮮に思え、のめり込んでいく姿。
・だが、ある日男性の声優からシーンが繋がっていない事を指摘され、ジワンが失われたシーンのフィルムを探す所から物語は一気に面白くなる。
彼女は、ホン・ジンウと一緒に映っていた年老いた女性編集者の元を訪れ、”女判事”が上映されていた古い映画館を教えられ訪ねる。そして、映画館主に導かれ映写室で古いフィルムを探すが見つからない。
だが、映写室に有った帽子を家に持って帰ると、息子のボラムが見つけた帽子に巻かれていた切られたフィルム。
そして、彼女は再び映写室に戻り、多数の切られたフィルムを発見する。
■印象的なシーン
・ジワンが、古くて天井に穴が開いている映画館の中で、穴から降り注ぐ陽光の中でフィルムを透かして見るシーンがとても美しい。
<そして、ジワンはフィルムを再生し、その過程で身体の病気も見つかるがその場で見せた夫サンウのぶっきら棒だが優しき姿や、母に”引退したら?”と言いつつ支える息子ボラムの姿。
更には、近所の駐車場で練炭自殺をした女性が乗っていた車の跡地に浮かび上がる60年代の女性監督ホン・ジンウらしきコートと帽子を被った女性の影も幻想的で良い。
今作は、心地よき余韻が残る作品であると思います。>