「監督第3作目『幽霊人間』を公開した女性監督のジワン(イ・ジョンウン...」オマージュ りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
監督第3作目『幽霊人間』を公開した女性監督のジワン(イ・ジョンウン...
監督第3作目『幽霊人間』を公開した女性監督のジワン(イ・ジョンウン)だったが、前2作同様、ヒットの兆しすらない。
そんな中、新規オープン映画館の目玉として、先ごろ発見された60年代の映画の修復依頼の仕事がやって来る。
その映画を監督したのは、当時珍しかった女性監督。
フィルムの音声が欠損している・・・ということだったが、調査するうちに検閲でいくつかのシーンが切られていることが判明する・・・
といった物語で、韓国版『ニュー・シネマ・パラダイス』のような趣だけれど、映画愛の映画というよりも、女性映画・フェミニズム映画の側面が強い。
家庭の主婦に収まるべきといった風潮が強かった60年代の韓国で活躍した女性監督。
しかし、ジワン自身も、息子や夫からは、映画監督ということよりも妻・母の役割を求められることが多い。
3作しか撮れずにその後、消えてしまったかつての女性監督。
ジワン自身も3作目の『幽霊人間』で、このまま消えて「幽霊監督」になるかもしれない。
もう若くないし、ミドルエイジ・クライシスにも直面、壁にぶち当たりまくり。
そんな中、出逢ったのが、かつての女性編集者。
もう老女だ。
デジタル編集では、フィルムを切った貼ったの時代の女性編集者の先駆け。
編集の仕事は、とうの昔に引退しているが、余生というか何か、そんなものを愉しんでいる感じ。
とはいえ初対面では偏屈婆みたいだったけど。
と、くだんの失われたフィルムは、取り壊し直前のボロボロ映画館で見つかるのだけれど、その映画館の佇まいがいい。
電気は止められ、発電機で映写機を回す。
館内は暗いままだが、屋根に空いた穴から光が差し込んで、仄かに明るい。
(雨の日はどうするのかねぇ)
発見の経緯もちょっとヒネられていて、そこんところも微笑ましいのだけれど、「ふふーん、60年代の韓国では映画のフィルムは映画館の買い取りだったね」なんて、別のところに関心が移ってしまったりもします。
日本では、配給元へフィルムを返却し、その後、配給元の方でジャンクされるのが通例。
(稀に返却しない館もあったので、80年代くらいまでは配給期限が切れていると思しきボロボロフィルムをかけている館もあったのはあったが)
で、本作で感心したのは、発見されたフィルムを繋いで観たところ。
主人公の女性がタバコを吸うのを背後から写しただけのシーン。
「女性がタバコを吸うシーンは、公序良俗に抵触、よって検閲で切られた・・・」とはビックリ。
虐げられていたといえど、こんな些細なことで・・・ と心が痛む。
が、現在では、どうなのか。
そんなに変わらないかもしれないよね。
そう感じるのは、ジワンが子宮筋腫で子宮摘出手術を受け、退院する際、夫に「これでやっと同志だ、ヘイ、ブラザー」という台詞に現れているように思えたから。
やはり、映画愛<フェミニズム、という感じですね。