「ザ・スミスが好き、もしくは好きになれれば良い映画に思えるだろう!!」ショップリフターズ・オブ・ザ・ワールド バフィーさんの映画レビュー(感想・評価)
ザ・スミスが好き、もしくは好きになれれば良い映画に思えるだろう!!
今作で描かれるてる人間ドラマ自体は、かなりオーソドックスなもので、若者たちの苦悩や葛藤を描いているティーン映画と同じようなもの。ところが今作において特徴的であり、逆にそこに魅力を見いだせるかどうかによっても楽しい映画となるか、退屈な映画となるか……両極端にわかれる作品だといえるだろう
それはすごく単純なことで、ザ・スミスの魅力にハマるかハマらないかによるということだ。
映画的魅力というより、好きな音楽ジャンルであるか、もしくは好きではなかったジャンルやアーティストに触れることで好きになれるかどうかが重要な映画だといえるだろう。
実際にあったとされている、ザ・スミスのファンの青年がラジオ局をジャックして、ただひたすらザ・スミスの曲をかけさせたという事件をベースに描かれているらしいが、事実は不明確である。
『ビッグバン・セオリー』の中でもネタにされていたジョー・マンガニエロが演じるラジオDJ・ミッキーは、メタル好きであって、ザ・スミスには全く興味がないという立ち位置であり、私たちの視点に一番近いキャラクターである。
このミッキーは、ザ・スミスの曲を聴いているうちに魅力に気づいていき、心が揺れていくのだが、その部分にいかに感情移入ができるかどうか……というのが最重要な評価分岐ポイントといえるだろう。
ザ・スミスに限ったことではなく、様々なアーティストに影響された若者たちは多く存在しており、何に影響されるかは本人の自由であって、きっかけ程度ならいいが、強要されるものでは決してない。いかに、自分の趣味・思考を相手や世間に押し付けることの難しさもメタ的に提示しているようである。
『ハイ・フィデリティ』スタイルで、レコード的の中で仲間内でうんちくを言い合うオタッキーな音楽マニア映画ならキャラクター側に感情移入させられたのだろうが、良くも悪くもザ・スミスの楽曲の印象が強く残ることで、人間ドラマがどうなっているのかが、どうでもよくなってきてしまうのは難点だ。
『スコット・ウォーカー 30世紀の男』『BACKSTREET BOYS: SHOW ‘EM WHAT YOU’RE MADE OF』など多くのミュージシャンのドキュメンタリー作家でもあるスティーヴン・キジャクだが、劇映画はあまり向いていないのかもしれない……