偽りのないhappy endのレビュー・感想・評価
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恐ろしく難解
作品の内容はおろかタイトルさえも難しい。
問題の根幹が行方不明の「妹」ユウ 主人公のエイミは妹を探しながら同じ妹が行方不明になっている日和と出会い、妹を探す物語。
琵琶湖で上がった水死体女性。彼女はユウではなかった。
日和の妹美月は琵琶湖の橋から飛び降り自殺した可能性が高い。
日和は妹は自殺なんかしないと真相を探し始める。
やがて、
美月が友人となった筋ジストロフィーのアオイの父は滋賀県の風俗店店長で、その事を娘に知られたくなかったことがわかる。
当然美月の死と店長は関係ない。
最後にアオイが、美月の水死の件でTVやSNSに振り回され自殺しようとする。
美月と同じ場所で死を選んだものだとわかる。
しかし美月の死の真相ははっきりしない。
妄想幅を広げれば、
美月がアオイに対し良かれと思ってしたことが、アオイにとってはショッキングなこととなってしまい、美月は自責の念に堪えなかったのかもしれない。手紙を書いたことでそれが助長され、思いきってしまった…のだろうか?
物語で明らかになったのは、店長の娘がアオイでアオイの親友が美月。
美月が行方不明になってから死ぬまでの期間も不明だが、ポスターまで作っているのでそれなりに時間が経っていたと思われる。しかしこれは設定上のミスのように思えてならない。
さて、
ユウの失踪の手掛かりは何も出てこない。
問題はユウがエイミに言った「私は幸せだと思う?」というセリフが失踪の理由につながると感じた。
エイミは滋賀県でその理由を垣間見る。
その一つが中学の同級生 彼女の中学時代の出来事 親友が仲間外れにされたこと 自殺前の電話を取らなかった事がエイミが携帯を持たない理由。
そのすべてが中学校の同級生にあるとエイミは決め付けている。この出来事がエイミの心をすべて閉ざしている原因だ。誰にも何も話したくないのだ。
その同級生は今や高校の教師 生徒にバレエを習うアカリがいる。
アカリは自宅に帰りたくない。その理由は不明だが、エイミのどこかに自分自身を重ねている。
アカリは失踪したユウを心配している。しかし彼女の言葉は少し的を外している。
日和が風俗店を粗探しして発見したのがユウのプロフィールだった。
1年前から寮生活をしながら風俗店で働いていた。ユウの友人の「ユウのこと何も知らないんだね」という言葉の意味がはっきりする。
姉が中学を卒業し逃げるように上京した理由をユウは知らない。それを知りたかった。しかし、ユウの寂しさと孤独というユウ自身にとって「最大のこと」は姉も知らない。同時に「それを知ろうともしない」これが決定的になってしまったと想像した。わざわざ姉の誕生日にすっぽかしを入れて決行した。その理由は「忘れさせないため」だろう。
これが私が勝手に妄想するユウの失踪の真相だ。
一緒に住んでみたところで何も変わらなかった。
時折彼氏と使っているであろうエイミの寝室は、その雰囲気からも立ち入り禁止としている。だからユウもまた、リビングにシーツで仕切りを作ったのだろう。兄妹あるあるがこのような些細な言動によって描かれている。
ユウの方が姉を理解したい思いが強いが、姉は自分の世界に他人を入れないようにしていることがユウにはよくわかってしまったのだ。
姉妹たちの母も、仕事をしながら家事をしており、彼女らの悩みなど聞く余裕もなかったのだろう。ユウが姉に「お母さんと同じことばっか」というセリフに現れている。
結論から言えば、ユウは単に家を出ただけだろう。その背景にあったのが「孤独」
日和はエイミの群像だが、日和は美月が風俗店に言った理由が判った。店長の歯にモノが詰まったような話も納得できた。
しかし日和には、美月の死因はわからないと思われる。美月が店長に宛てた手紙の中で「この手紙を投函した後はもう滋賀には行きません」とあることから、アオイと一緒に滋賀に行った後、橋から落ちたということになる。
日和は店長が犯人ではないことを確信しエイミを探す。ボートに乗った二人。エイミは店長を突き落とすが、手を差し伸べる。一瞬手を掴んだが苦手な着信音に手を放し、店長は沈んでいく。
エイミと携帯電話の相性は最悪で、最初が自殺直前の親友からの着信を無視したこと。続いて初めて買った携帯で日和に電話するが、彼女は店長に包丁を突き付けていたところだったこと。そして3度目がアカリからの電話に驚いて手を放してしまったこと。
この作品で起きてしまった取り返しのつかないこと。そして電話に出てもアカリの声はない。エイミはアカリが自殺したと考える。かつての親友のことが脳裏をかすめた。
しかし事実は、エイミは自殺しようとしていたアオイを止めたのだ。
そして「新しい私の人生」というユウの声でナレーションが入り、エンドロールとなる。
妄想なしではわかりようのない作品。
物語上でわかったことは「相関関係」のみ。
しかし、ユウの失踪理由も美月の自殺理由もわからないことはないのだろう。
ただ、店長宅の強盗はあまりにもご都合主義だった。物語上詰めざるを得ないこともわかるが、エイミの同級生とアカリの相関関係にどんな意味を持たせたいのか? 不要ではないかと思う。最大の問題は、なぜ店長を沈めてしまったのか? ということだ。
これがタイトルの「偽りのないhappy end」であるならば、エイミは「ユウに何かした」と思われる店長を殺害することで自分自身を納得させたことになる。同時に蘇ってきた親友の自殺。悪いのは同級生ではなく、仲間外れにされたくなかったエイミ。携帯電話とは、彼女にとっては呪いのアイテムなのかもしれない。その封印が解かれ、この出来事が起きたのだ。
そもそも、妹のことをほんの少しでもわかってあげようとしていたならば、妹は黙って去ったりはしなかっただろう。
そう考えると、すべての責任がエイミにあったことになる。「偽り」とは、逃げてばかりのエイミに対する言葉だろう。
「新しい私の人生」というユウの声の最後のナレーションの意味は、「贖罪の始まり」だろうか?
妄想なしでは理解不能だ。
終始に渡って漂う陰鬱なムード
難解な作品……。
どこにも明るさが視えない世界観。
ネットリとした厭な空気が張り付いてた。
怖いとか恐ろしい、じゃなくとにかく厭な雰囲気だった。
きっと、それぞれにもっと背景が在っての上で進行してるんだろうけど、視えない部分が難解にさせてる。
そうであるならば、ラストの二人の出逢いは無い方が良かった様に感じた。
よくわからない
最初から???母が亡くなり、1人になった妹を気遣い東京に出ておいでと勧める姉のエイミ。エイミの彼氏も田舎にいるのは可哀想と言う。なんか偏見だよね。東京で暮らすことがいい事だと決めつけてない?エイミも妹ユウに幸せ?楽しい?と聞く。妹がどんな暮らしをしているのか知りもしないのに幸せじゃないと決めつけている。地元でも充分楽しい、幸せと感じている子だっていくらでもいるよね。東京になんとしても来させたいエイミと彼氏に違和感。
エイミとヒヨリのつながりも偶然すぎるし、滋賀での風俗店の店長とエイミの彼氏はどう関係があるの?
結局ユウはどこに居るの?謎だらけのまま終わってしまった気がする。
琵琶湖から脱出出来ません
今年度5本の指に入るレベルのトラウマ映画。東京に出て広い視野を持った筈が、地元の琵琶湖から脱出すら出来ていなかった姉。その姉の真っ直ぐな狂気が恐ろしい。
なお出演されている女優さんはみんな美形でした。
これはホラーファンタジーとして見るべき映画です。
率直に言いまして、ストーリーの蓋然性やツジツマを考えたら理解不能になります。これはあくまでもホラーファンタジーとして見るべき映画であり、見終わった後の後味の悪さは、皮肉ではなく、「よくぞこれで終わらせたものだ」とある意味感心する出来です。作者の意図はそこにあるのだと思いますが、もし私がこの作品を作ったとしたら、陳腐であっても最後は夢オチにしないと気が収まらないでしょう。それぐらい後味の悪さは絶品でしたし、その意味ですごい映画です。
終始疑問(良い意味で
今まで見た映画の中ではじめて、見終わったあとにこころがモヤモヤしたままだった。なぜそうしちゃうかなとかそのあとどうなったのだろうとか、とても続きが気になった、完結のない作品なのかもしれないけど。
偽りがないのは主人公ではなく失踪した妹関連の人であって、ハッピーエンドは結局誰のものだったんだろう、最後の娘と女の子のその後の関係とかも気になるし、色々想像が膨らんだ。
この世の中の全てはどれが偽りこ真実かは不明確で、信じたい方にいくのは人間の性。
姉妹だからこその距離感の中で気づけば何も知らないことへの怒りと不安が事態を思わぬ方向へ……
今作の松尾大輔監督から、直接試写の招待をしていた作品だからといって、忖度する気は全くないのだが、個人的に今作は今年公開された邦画の中で、上位にランキングされる作品である。
滋賀で母と暮らしていた妹ユウと、単身上京した姉エイミ。母が亡くなったことで、ひとりぼっちで、かつて家族が暮らしていた一軒家で一人暮らしをしていたユウとエイミの久しぶりの再会から物語は展開される。
東京観光をする2人は、決して仲が悪いというわけではないが、どこかよそよそしく、互いに観照しあわない。他人に興味がなくなっているといわれる現代社会ではあるが、それは家族においても同じことがいえ、さらに家族だからこそ、姉妹だからこその距離感というものもある。
そんな中、急に妹がいなくなる…….。
外見上の特徴などはわかるが、交友関係や滋賀での生活環境を知らないことを改めて痛感する。
例外的なことはあるだろうが、気づけば身近な人のことを良く知らないというのは、現代においては、いわゆる「普通の家族」でもあるのだ。
ユウのことを知っている気でいたが、それは上京する前までの止まった記憶の中で作り出されたエイミの想像上の妹像でしかない。
だから単なる突発的な家出なのか、事件に巻き込まれたのかも判断ができない。警察に駆け込むが、そこには行方不明者の張り紙もあり、不安が過ぎる。舞台は日本ではあるが、東京国際映画祭で上映された『市民』や『箱』のような、治安の悪いメキシコを連想させるような画も、また不安をかきたてる。
治安の良い日本とはいえ、2020年度の行方不明者の届け出は7万7022人 。自分の身近な人であれば不安にならずにはいられない。
そんな中で、同じく行方不明になった自分の妹の張り紙を見る女性ヒヨリと出会う。
警察から似た年齢の遺体が発見されたと連絡があり、滋賀に急いで向かうエイミ。幸いにもその遺体はユウではなかったが、ヒヨリの妹だった……。
ヒヨリの妹は殺されたと思い、警察の捜査が信用できないヒヨリは独自で犯人捜しをするうえで、エイミも多くの共通点を感じ、行動を共にするようになるが、それはエイミの不安から導き出されたミスリードであるかもしれないし、本当にそうなのかもしれない。
事故か事件か、それともただの家出なのか……確証をもてるほど、ユウのことを何も知らないかったこと、取り戻せない過ぎ去った日々、母親を失って、ひとり暮らしには広すぎる実家で感じて寂しさも理解していなかった……そんな自分自身への怒りと後悔が、事態を思わぬ方向に向かわせてしまう。
今作のラストはタイトルの通り、ある意味では希望があるという意味で、「happy end」といえるかもしれないが、一方では新たな絶望を生んでしまったことにも間違いないのだ。
終盤が残念。鳴海唯さんは良かったです
妹を探す話かと思ったら関係者がどんどん増えて関係者同士のつながりが明らかになり隠れていた事実が顔を出してくる。終盤に出てくるイベントが多すぎて整理が付かないまま終わってしまったのが残念でした。あとセリフとBGMの音量のバランスが悪かったような。監督の次回作に期待です。
主演の鳴海唯さんはセリフが無いときも表情と眼光で観客を引きつけるオーラーがあり大物の片鱗があります。映画、ドラマでの活躍を期待しています。最後のトークショー、監督でも鳴海唯さんでもなく、MCが一人でしゃべっていてオイオイって感じでした
後ろめたさの果て
滋賀の実家から上京して一緒に暮らし始めた妹が行方不明になり、妹を捜す姉の話。
母親が亡くなって2年後、姉の誘いで急遽上京した妹がいなくなり、妹を捜す中で妹のことを殆ど知らなかったことに戸惑うと共に、同様に行方不明となった女性と出会い巻き起こっていくストーリー。
ちょっとムリがある展開もいくつかあったけど、亡くなった女性のことや主人公の妹のことにと生臭くサスペンスフルで引き込まれる。
そしてまた明らかになる姉の過去や抱える問題にととても良かったんだけど…なんか投げっぱなしの問題とか、起こした問題とか色々やり残しがデカ過ぎません?
姉をみる物語としては良かったけれど、もうちょいしっかり終わらせて、もっともっと重苦しさを残して欲しかった。
若手女優のアンサンブルと容赦ない世界に慄く、監督の力量感じる意欲作
今をときめく若手女優のアンサンブルに独特の緊張感。深く潜りこんだ真実の果てに観るhappyendに、ただ言葉を失う。
園子温監督の元で腕を磨いた松尾大輔監督の初長編。 監督直々にDMをいただき、試写室にて鑑賞した。今年は有り難いことに、たくさんの自主映画を見させていただいているが、特に力量とエネルギーを感じさせる作品だった。失踪が巻き起こす空白と正義感。入口の景色は出口に無く、見える部分が見えない部分の想像を駆り立て、そこに容赦がない。
撮影は2年前。まだ河合優実も見上愛も駆け出しだった頃なはず。今となっては豪華なキャストになり、そのメンツの数々に驚くが、才能は皆光っており、見応えがある。その中でも、主人公のエイミを演じた鳴海唯は、今まで見たことのない表情と演技が強烈で印象的。沼のように堕ちていき、何処までも妹を探す姿に慄く。一方、仲万美は初めましてだったのだが、シリアスな雰囲気に潜む真っ直ぐさに息を呑んだ。パワフルな演技は作品の核となって滲む。また、奥野瑛太が出る事の安心感ったら。作品の深みにいざなってくれる。
内容は非常にハードボイルド。年に8万人が失踪する日本で、彼女の姿をただ探す。東京と琵琶湖、2つの街に隔てられた壁が、彼女の行方をくらます。琵琶湖という絶好な景色に隠れた痛みが、まさしく妹の2面性のよう。そこに潜む「影」といくつもの出会い、ネットや疑惑が謎に拍車をかける。そうしてたどり着く答え。96分を止め処なく彷徨った最果てに、つい体は疲れを覚えた。
豪華キャストの偶然と、鬼才のもとで磨かれた感覚、鋭く靭やかなプロット…非常に見応えのある作品だった。是非とも拡大上映して欲しい。
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