雨を告げる漂流団地のレビュー・感想・評価
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「ひと夏の冒険と成長」を描いた傑作
子供たちの「ひと夏の冒険と成長」を描いた傑作です。いい年して泣いてしまいました。子供から大人までおすすめできる作品です。
ストーリーは十分わかりやすいです。最初は謎めいた要素が多いのですが、終盤にちゃんと種明かしがされます。『エヴァンゲリオン』や『バブル』のような、観終わったあとの「謎が残ったモヤモヤ感」「結局なんだったの感」がありません。
たとえば「ノッポ君」というあからさまに謎の少年が登場します。彼の正体は、最初のうちは謎のままで進行し、途中で「彼の腕に異変が起きる」という手がかりが出るけどまだ謎のまま、次に「彼の脚に鉄筋が見える」ことで正体が少しだけ見えて、そして後半に出てくる遊園地が大きなヒントになり(中学生ならここで正体に気づく)、ラストシーンで正体が明らかになります(ここで小学生でも正体がわかる)。なので小学生高学年くらいの読解力があれば十分に理解できるストーリーだし、それをわからせてくれる細かい演出が光りました。
(しかし昨今は『君の名は。』や『天気の子』ですら「ストーリーがわからなかった」という大人が多いので、そういった「SF要素(すこしふしぎ要素)を含んだ物語に不慣れな人たち」にとってはこの作品もわかりづらいのかなと思います。メジャーになる前の新海誠の作品がわかりづらいのは仕方ないにしても、『君の名は。』と『天気の子』は一般大衆向けに相当わかりやすく作られているので、さすがにこの2つのストーリーがわからないのは「SF要素のある物語に不慣れな人たち」なのでしょう。)
全体的には、「謎解きまたは回想シーン」と「ハラハラするアクションシーン」が交互に訪れるので、飽きが来ないように作られています。少し謎が解けたらハラハラするシーン、また少し謎が解けて回想が挟まってアクションシーン、という進行なので、だらけません。そんなに派手なアクションがあるわけではないのに、作画と音楽と声優の演技がすばらしいので、ハラハラして見入ってしまいました。子供どうしがケンカするシーンが多いのですが、主人公ではない男の子ふたりがコミカルな役目をするので、暗い感じがしません。
以降は細かい感想です。
まず、子供たちの描写がとてもうまかったです。「そうそう、子供ってこんな感じだよね」と思いながら観てました。特に、素直になれない男の子の声優(田村睦心)の演技がすばらしく、「これぞ男の子ーーーっ!」って感じでした。作画の良さと声優の演技のうまさが噛み合っているので、作品に没入できます。(最近の映画はジブリも新海誠も細田守も、声優ではなく役者を使うので、演技の不自然さや違和感を感じることが多く、気になって集中できないことがありませんか? やはり日本の声優は優秀だと再確認しました。)
ストーリー上、子供がケンカしたりいがみ合うシーンが多いのですが、素直になれない様子をケンカすることで表現しているので、ケンカのシーンでも「素直になれない男の子ってこうだよね」と思って観ていました。あるいは別のシーンでは、主役のふたりがいがみ合いながら力を合わせて重いものを持ち上げており、「ケンカしているけど心の奥底では信頼しあっている」ことがうまく表現されていました。なのでケンカやいがみ合いのシーンが多くてもそんなに気になりません。しかしこういった表現から読み取るのが苦手な人にとっては、「ケンカばかりしている映画」という印象になったかもしれません。
またひとつの登場物(アイテム)が複数の役割を兼ねているので、少ない登場物で多くのものを表現できていることに感心しました(尺が限られる映画ならではかも)。たとえば後半に出てくる遊園地は、謎の解明の大きなヒントになっているだけでなく、わめいてばかりの女の子(実は遊園地好き)の心情が変化する役割を果たしており、思わず心の中で「うまいな」とつぶやきました。
このわめいてばかりいる女の子は、何でも他人のせいにして非難するばかり。まるでクレーマーやモンスターペアレントのようで、いい印象がありません。しかしある時、その子を別の女の子(メガネを掛けたおとなしい子)が一喝します。それをきっかけに、おとなしかったメガネの子が行動力を見せる成長をします(作中でいちばん成長したのはこの子かも)。まあ行動力を見せたせいで大きな怪我をしてしまうのですが、今度はそれをきっかけに、わめいてばかりいる女の子が友達思いの一面を見せます。つまり、あるきっかけで子供が成長し、それがまた別のきっかけを生み出すという連鎖が起こります。話の転がり方が自然です。
「団地」という舞台装置も、最初は「なんで団地が漂流するの?」という唐突感があるのですが、観終わってみれば「そういうことか」と納得します。オープニングの、過去に時間がさかのぼって団地が表現される演出が、実にいいものだったと気づきました。二回目をみたら、もうオープニングで泣いてしまいそう。
映画としてとても満足できる作品でした。近年のジブリ作品に満足できていない自分にとって、また新海誠の二番煎じのような作品(←『バブル』!お前のことだぞ!)が多い現状を嘆いている自分にとって、本当にすてきなオリジナルアニメーションでした。制作会社のスタジオコロリドと、石田祐康監督、関係者の方々、ありがとうございました。また今まで存じておらず、申し訳ありません。過去作も含めて、これから注目していきます。
あの子供たちがこれから幸せでありますように。
全体的に謎
なんとなく、少年たちの夏の終わりの冒険的な物を
想像していたのだけど、
漂流する所から謎が始まり、
観てる者を置き去りに話は漂流して行く。
そんな映画でした。
過去に団地で何があったろう事は仄めかしてはいるん
だけど、何があったかはしっかりは明かさず、
なんとなく気まずい関係なナツメとコウスケ。
不協和音のまま団地で漂流する仲間たち、と
全体的に重い空気を感じて、
少年たちだけで漂流すると言うアニメならではの
ワクワク感を感じられなかったのが、
僕的には残念でした。
漂流の理由やノッポくんもイマイチ説得力にかけるし
クライマックスも謎展開と言う感じで
ポカーンとなってしまいました。
過去を引きずったままではいけない。
過去を糧にして素晴らしい思い出として、
前に進んで行かないといけないな。
そんなところでしょうか?
大人になろうとするがやはり子供
ツンツンな少年少女の話
取り壊し間近の自分達が元住んでいた団地。
団地に出るという幽霊を捕まえようと無断侵入するアホな少年達。
何故か取り壊し団地に住んでいる謎の少年、通称ノッポ。
突然の豪雨の後に少年少女のいた団地の一棟だけ大海原に放り出され…
いやシュールだ。何故団地の一棟だけ海の真ん中で進んでいる(流されている?)。
要するに漂流物の冒険譚だ。そこから彼らのサバイバル生活が始まるのだった。
メインの少年少女は小さい頃からご近所さんで近しい関係故にお互いの想いとは裏腹にツンツンだ。まあ小学生のガキだから仕方ない。
他の少年少女もお互い助け合いいがみ合いながらも生きていき成長する。
さて彼らの運命や如何に?
少年文学作品みたいなアニメ。
話のテンポも良く作画も良い。悪くは無いがよくも無い。
なんだか同じ様なシーンや印象のあるシーンがあるしくどく感じた。もっと色々削って良かった。有っても無くても映画自体や主人公達が受ける印象は何も変わらない。もっと整理して良かった。無駄に細かく作りすぎた。
なのでテンポが良くても無駄に上映時間が長いと感じる。
ネタバレにならない程度に、団地や他の漂流物や海は意味があり謎の少年ノッポも含めて見ていけばああそう言う事かと分かる作りは良いのだが、
壮大なスケールの割になんか内容がこじんまりしている。少年少女が冒険で成長しました、それだけ。それが悪いとは言わないが構成的に物足りなさを感じてしまう。何というかちょっと残念。
主人公が苦手
突き放されてモヤる
子どもたちの感情の起伏、その絵と声の演技など、実に豊かな表現はさすがの石田監督作品。
『ペンギン・ハイウェイ』の海の中や水だらけの街を進むシーンを120分みたいな異次元迷い込み冒険系で、世界はファンタジーなのに、子どもが次々と傷ついていき、生死ギリギリの冒険になっていくのが、『メイド・イン・アビス』にも似た残酷なリアリティを伴うものでした。
ただ、子どもを描いているから仕方ない部分もあるけれども、意地の張り合いや、気まずさからの逃避が長すぎる。
対して、団地が漂流した理由や、のっぽの正体などを説明せずに、「感じてね」と突き放したところが、「わからない」「モヤっとする」みたいな感覚を生んでしまう。
主題は、子ども同士がちょっとした言葉の行き違いで、お互い謝れずに気まずくなることと、それを突破して分かり合えることにあり、漂流の理由は明確じゃなくとも快感ポイントはあり、映画として成り立ってはいますが……
脚本の拙さ、刈り込みの甘さが際立ち、後半がダレてつまらなく感じてしましました。
感情のやりとり部分の段階を区別し、漂流の理由をきっちり描き(例えば「落下して死にかけた女の子を助けたいと願った『付喪神』の神通力とかでもいいんだ)、85〜90分に収めたら、多分名作になっていたと思う。
それだけに、もったいなかった。
このままだと配信で倍速再生向き。
かつて無いクラスの駄作
冒険探検
「声優さんがすごい」
キャラクター重視なら楽しめる
少年少女が困難に巻き込まれ、乗り越える物語
映画館で観ました。
まず背景、作画、声優陣の演技は素晴らしいの一言です。
次にストーリーに関してですが、子供たちの心の動きを捉えるのが非常にうまいなと感じました。私自身はいい大人なのでそういった目線にどうしてもなってしまうのですが、彼らが困難な状況や思いがすれ違う場面に遭遇する度に「うんうんそうだよね、みんな偉いよ。がんばってるよ」という心情になりました。
そしてこれは『ペンギンハイウェイ』にも言えることですが、少年少女にぶつけるにはあまりに重すぎる容赦ない概念、世界の理(ことわり)のようなものに関する描写も圧巻です。観終わった後にも残る心地よい『謎』を提供してくれます。
逆に言えば、いわゆる子供らしい喧嘩や意地の張り合いといった類にストレスを感じる人や、「設定や世界観に関するフワッとした描写」にむず痒さを感じる人には受けないかもしれません。
いずれにしろ、映画館やテレビなど大きな画面で最初から最後まで一気に観るのをオススメします。
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