「Don't think! Feel.」雨を告げる漂流団地 TF.movさんの映画レビュー(感想・評価)
Don't think! Feel.
団地が突如として海上にテレポートし、元の世界に戻るまでの冒険ファンタジー。その中に、彼らの人間関係があり、小学生を題材にするならありがちのいざこざがあり、そして失われる団地への想いがある。設定としては面白いのだ。しかし、あらゆる点で、その設定が活かしきれておらず、また、細部において話の詳解な説明がなされていない。謎が謎のまま、いやむしろ、「こういうものだ」とでも言うように、首尾貫徹話が進む。ファンタジーを描くなら、その設定を語るべきであり、観客が納得できるように演出すべきである。
例えば、話の大前提である、なぜ団地はテレポートしたのか。その説明がない。団地の他にも壊された建物があり、それらに宿る神?のようなものが「帰る」のだと説明されていたから、建物が解体された後に集まる場所、「建造物の天国」のようなものがあり、そこに向かうためにテレポートしたのだ、と何となく解釈することはできる。しかし確信は持てない。他にも、海の底にあるダークマターの謎についても、謎のままだ。「のっぽ君」の足が無くなってしまったという重大な演出がなされたのにも関わらず、それの説明はなく、あまりにも呆気なくスルーされてしまう。そして、同時に明かされるのかと思われた「のっぽ君」の正体も、身体の中に鉄筋があることから、団地の化身?擬人化?という何となくの予想はできても、真実は知り得ない。
最も重要な設定、青く光るお助け要素、「のっぽ君」が言う「彼ら」の存在。それすらも、何も語られることはなかった。「帰れるのか否か」がこの話の主軸なのだから、帰る上での一番の肝となった「彼ら」の存在は説明されて然るべきだろう。私の理解では、何だかよくわからない団地に宿る何か、魂?なのか、兎角光る存在が団地を押してくれて、なぜか空を飛んで元の世界に戻れた、と、このようになる。散々冒険して、どうやったら帰れるのか模索するも、終盤までまるでその糸口が見えず、結果的に帰る方法は彼らの冒険とは全く関係のない謎の力。これで納得できる観客がいるのだろうか。
世界観や設定は面白い。観る前の高揚感は、まさにこの世界観への期待に他ならなかった。それゆえに、残念な気持ちが大きい。もう、これ以上は考えても無駄だろうから、考えないことにする。どれだけ理解しようとも、この作品は何も教えてはくれないのだ。考えるな、感じろ。そういうことなのだろう。