「小学生が対峙する"喪失"を描く、弔いの旅の物語。」雨を告げる漂流団地 間々田さんの映画レビュー(感想・評価)
小学生が対峙する"喪失"を描く、弔いの旅の物語。
普段なかなかアニメ映画は観ないのですが、友人の同行で試写会にて鑑賞。
なんかもう、忘れていた色んな感情をはちゃめちゃに刺激されてぼろぼろ泣きました。
子どもたちの爽やかな大冒険!を想定して観に行ったら、小学生が「喪失」を受け入れるための、弔いの旅の話だった。
たぶん「喪失」を経験した全ての人間は琴線を刺激されまくって泣かざるを得ない(というか喪失を経験してない人間なんかいないのでみんな泣くしかないのでは?と思う)作品。
世界はどうしたって進んでいってしまうから、喪失と折り合いを付けて生きていかなくてはいけないということ。一見大人びたテーマで、それはドライブマイカーにすら通じるものだけど、小学生にだってこういう戦いはあるんですよね。というかむしろ小学生の生きる世界からしたらより重大な問題じゃん、と。
いろいろ子どもには過酷すぎるよ、という状況が多いなと思いつつ、ただこれは彼らの精神世界を表していると思うと、まあ現実としてこういう、子どもだけで決着をつけるしかないシチュエーションがあるわけで…
子どもは「辛いことがあったら大人に頼っていい」と思うべきだし、本来ならもっと大人の介入の描写があるべきだな、と思うシーンは多々あるんですが、とはいえ、大好きな思い出を過去として納得する、みたいなことはどうしたって自分で処理しなくちゃいけなくて。大人だろうと子どもだろうとそれは自力でどうにかするしかない。
そういう絶妙な通過儀礼を描いた作品で、自分もその時の辛さとか、でもほとんどは忘れてしまった当時の「執着」とか、もう色んなことを記憶の底から引っ張り出されるようで(そして気付かないうちに忘れてしまった無数の"何か"があることを思い知らされるようで)、涙が止まらず本当に大変でした。
普段なかなか縁のないジャンルですが、思いがけず大名作に出逢えてよかったです。
あとは配信もあるみたいですが、本当に映像が隅から隅までマジで美しすぎるので、劇場で観れるうちに観たほうがいいと思える作品。見え方かなり違うのでは?と思います。