「肝心のとこが無い」ダ・ヴィンチは誰に微笑む SP_Hitoshiさんの映画レビュー(感想・評価)
肝心のとこが無い
ドキュメンタリーを映画館でみることはあまり無いのだけど、ダビンチ作が新たに発見されたと日本でも大いに話題になったサルバドールムンディって結局どうなったんだ?と気になったんで観た。
正直よく分からなかったところが多い。僕自身の知識不足の面もあるけど、分かりやすいようにするという配慮にやや欠けていたと思う。
まあ、NHKスペシャルとかの子供からお年寄りまで誰でも分かりますよという分かりやすいドキュメンタリーに慣れすぎてるのかも知れない。
美術品が投資の対象になってからというもの、絵そのものの価値と売買価格が乖離した異常な現象が起こり、金にまみれた世界になったということには今更驚かないが、真贋の鑑定がこんないいかげんなんだ?ということには驚いた。
終盤でルーブルに展示を検討する段階ではじめて科学分析されたみたいな話だったが、えっ! まさかそれまでやってなかったん?という感じ。いやいやいやいや、まさかそんなはずないよね…。
この映画で不満なのは、絵がダビンチ本人のものなのか、そうではないのか、いろいろな立場の人がいろいろな意見を言っているが、ほとんどその意見の根拠をこの映画の中で示していないこと。
もちろん実際には言っているんだろうが、この映画ではなぜかそこをばっさりカットしている。話が専門的すぎて分からないからカットしたのか? 変な話。そこが一番大事なのに。
もしかしたら本当に、名画のオーラがあるとか、技法がダビンチのものと同じだとか、直感だとか、客観的証拠にならないようなもので真贋を見てるのが絵画の世界ってことなのだろうか?
科学的分析の何を見て、この作品が工房のものでダビンチは貢献したに過ぎない、という結論を出したのかきになる。
門外漢だからそう思ってしまうのかもしれないが、ダビンチ本人の作と思われる根拠はこれこれこうで、工房作と思われる根拠はこれこれこうで、と並べて、本人作の可能性は現時点で65%です、みたいに確率であらわしたらダメなんだろうか?
真か贋かとどちらか二者択一になるからこそ、どっちに決めるにしても外れるリスクが生じるわけで…。今真作だとされているものも、本当はグレーなものがけっこうあるんじゃないかと思う。