「【全ての主要人物が地獄に叩き込まれる、非情で、殺伐と絶望感溢れる作品。】」恐怖の報酬(1977) NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【全ての主要人物が地獄に叩き込まれる、非情で、殺伐と絶望感溢れる作品。】
ー 完全版公開時のフライヤー2枚を読むと、今作は1977年の全米公開時、興行的に失敗し、フリードキン監督に無断で約30分カットされた92分の”短縮版”が公開されたと、記載されている。 勝手な憶測であるが、序盤のアイリッシュ・マフィアのスキャンロン(ロイ・シャイダー)や、フランス人投資家マンソン(ブルーノ・クレメル)のシーンがカットされたのかなあ・・、と思う。
何故なら、メキシコ人の殺し屋ニーロ(フランシスコ・ラバル)や、アラブのテロリスト、カッセム(アミドゥ)が、南米奥地で起きた油井の火災を消すためにニトログリセリンを運ぶ4人の決死隊に加わる過程の描き方が、粗いからである。
だが、フリードキン監督は今作では、細かい繋ぎや曖昧なショットは途中から全てはぎ取っているように見える。
それが、1977年の全米公開時、興行的に失敗した理由にも思える。
だが、私はこの2時間の作品に引き込まれるように見たモノである。ー
■感想
・序盤の、アイリッシュ・マフィアのスキャンロン(ロイ・シャイダー)や、フランス人投資家マンソン(ブルーノ・クレメル)が、南米の奥地に来ざるを得なかったシーンは、前菜の様に鑑賞。
・今作が本領を発揮するのは、南米奥地のどこかの国の油井で起きた火災を消すために、多額の金を積まれた上記4人が、2代のニトログリセリンを乗せたトラックに乗車し、道なき密林を走破していくシーンの圧倒的な迫力である。
・かの有名な、腐った吊り橋を渡るシーン。
・道を塞ぐ大木を爆破する、命懸けのカラクリシーンの手に汗に握る迫力。
・では、多大なる犠牲を払ってミッション達成かと思いきや・。
・年代的に、リアルタイムで聴いたわけではないが、中坊の頃に時折聞いていたドイツ・プログレッシブバンド”タンジェリン・ドリーム”の夢幻サウンドが随所で効果的に使われている。センスが良いなあ。
ー 因みに、クラウス・シュルツェは「アングスト/不安」で、実在した猟奇殺人犯を演じている・・。アワワワ・・。ー
<フリードキン監督のお友達:大木爆破を考えたという爆弾魔とか、アイリッシュ・マフィアのスキャンロンが教会を襲うギャングのモデル、とか、どれだけ通常社会では生きられないアウトローがいたのさ!と思わず突っ込みたくなるが、そういうお友達がいないと、こういう映画は撮れないんだろうなあ・・、とも思った作品である。>
<2018年12月 ユナイテッドシネマ豊橋にて鑑賞>
<2021年9月14日 別媒体にて再鑑賞>
今更ですが、参考までに。
日本公開短縮版は、本来の『Sorcerer』タイトル部分から、現地の油田に関わる描写の前までの部分はバッサリ完全削除で、存在しません。
別タイトル『Wages of Fear』からいきなりそれ以降の部分開始です。
ニトロトラック走行中、フラッシュバック処理でダブらせ登場人物たちの過去の一部を紹介するだけの、ただのアクション映画に貶められてしまい、フリードキン作品ではない。
NOBUさん、こんばんは。
そっかぁ、興行的失敗の原因がそこに・・・
わかりやすいです。
迫力の点ではこのリメイクが凄いとは思ったけど、やっぱり心理描写などの細かな点はオリジナルが好きですね。