「もう2度とできないであろう 常軌を逸した奇跡のフィルム」恐怖の報酬(1977) やさぐれ旅芸人さんの映画レビュー(感想・評価)
もう2度とできないであろう 常軌を逸した奇跡のフィルム
文句のつけようもありません。
だってねぇ。
パラマウントとユニバーサルと言う2大メジャー映画会社が2,000万ドルものお金を出したという。
これは当時のフリードキン監督がフレンチコネクションでアカデミー賞5部門も受賞し、エクソシストで世界中にオカルトブームを巻き起こし、当時の歴代興行成績でも、トップ3 (ちなみに1位がスピルバーグのジョーズ 2位がコッポラのゴッドファーザー ) の監督なんだから。
今、こんな凄い監督がいるだろうか?
それくらい期待されていた新作なんだから、そりゃもう贅沢に予算も期間もかけて作られた訳です。
出来上がった脚本を読んで、是非出演したいと言ったスティーブ・マックイーンでさえロケ地や制作にちょっと口出ししために監督が激怒し一蹴され、おかげで他の出演者のキャスティングにまで影響したそうです。
脚本作りに行き詰まった際、参考にした「戦場にかける橋」のデビッドリーン監督をわざわざ訪ねて「今撮り直すとしたらセリフの三分の1はカットする」と言う言葉をヒントに、大幅に脚本から無駄な台詞をギリギリまで削るなどしてほとんど台詞のない絵だけでも観客を納得させる色褪せることのない名場面の連続を、そして映画を完成させたのでした。
あの「吊り橋」だけで2回も作り直し、300万ドルもかかり、リハーサルと本番だけで5回もトラックが落ちたらしい…。
ところが公開前の一ヶ月前に、その後の映画を一変させる問題作が公開される。
それがジョージルーカスのスターウォーズ。
今現在も続くVFX映画の元祖の作品で興行成績でも圧倒的でありました。
不幸にも単なる名作のリメイク作品と見なされ、評論家からはこきおろされ、お金をかけたわりには興行成績も伸び悩んだために…映画会社はタイトルを変え、前半とラストを大幅にカットし、全く別の作品として、流通させたのです。
そんなこんなで、日本では映画公開から割合早めにテレビでも放送されました。結構おじさん世代ではこの短縮版を見ていて子供の頃に衝撃を受けた人も多いのです。
( 自分がまさにそれです。)
今回、40年ぶりに監督の執念で完全版がデジタルリマスターされ日本のスクリーンでも見れることとなり、まさに幸せの極みなのでした。
「本物」だけ持つヒリヒリするような緊迫感と人間ドラマを是非ともできるだけ多くの人に堪能体感して欲しいと思います。
そしてこの映画がこれから映像制作を目指す人達の目に少しでも多く触れられんことを。
この映画がこれからの映画界にとっても良い影響を与え続け、名作が生まれることを切に願ってやみません。