「アメリカ人の限界なのか?」聖闘士星矢 The Beginning ぺこぽんさんの映画レビュー(感想・評価)
アメリカ人の限界なのか?
客入りが悪いのは知っていたがあえて鑑賞。
やはり酷い出来であった。
これはもう外人に作らせたのが間違いと言う他ないのではないかな。
見事に世界観がぶち壊されている。
この作品は原作からそもそもとんでもない世界観ではあるのだが、舞台が日本だからこそ成り立っている部分が大きい。それをアメリカにしてサイバーパンクなファイナルファンタジーみたいにしてサイボーグ兵など出してしまっては何が何だか分からなくなる。こんなのは神話や超能力の存在を納得させる世界観じゃないんだよ。もうずっと画面が暗いし。
文句は山ほどあるのだが、ビジュアル面だけでも以下の様なところが気になった。
・アテナが18歳
→原作では13歳の設定だが、見た目は16歳くらいだろうか。ここが何故か改変されており18歳の設定。しかもこのアテナ役の女優は26歳だそう。さすがにこれでは女神を宿す無垢な感じが全く出てこない。特に気になったのは腕の太さ。アテナ降臨の際のシルエットに違和感ありまくり。
・魔鈴さんがマッチョ
→これもシルエットの問題だが、魔鈴役の女優がプロレスラーの様な体格。聖闘士はコスモを燃やして戦うのだからこんな体格は必要ではない。特に女聖闘士の体躯は割と華奢なはずだ。あと仮面もゴツすぎ。
・ペガサスの聖衣が黒い
黒いというか灰色なのだが、ペガサスと言えば白だろう。原作では明るい灰色や青みのかかった灰色が使われているが、全く尊重されておらず、くすんだ灰色が使われている。実写に合わせて造形を鎧ぽくしたというところは理解するが、この色はおかしい。
ストーリーの建て付けもなんだか意味の分からないことになっている。
悪さをする神話の神々に対して唯一人類のために戦うアテナという解説がされているのに、アテナが復活しては世界が滅びると信じる母親の存在。最初の解説は何だったの?そもそもこういう解説があること自体、観客に対して世界観を雰囲気や見た目で納得させる気がないことの現れであるからいろいろ望みがない。
そういえばロッククライミングシーンが必死で登ってる感がないのも気になった。
一番目立ってたのがカシオスってところも酷い。こんなにカシオスに焦点当てて作ってたら十二宮編を作り終わるまでどれだけかかるんやって。
フェニックスもなんでそこにいるのかわからんしね。続編もないだろうしほんと意味わからんまま終わったな。意味ないと言えばあの親父は何のために自爆したんだろうかな。娘が巻き込まれたらどうするんだ?
あとペガサス幻想が流れると楽しみにしていたけど、結局BGMでさわりのメロディがすこし流れただけ。オリジナルの歌が流れるかと思っていたので肩透かし。
そうだ、もっとも気に入らなかったのは必殺技のコールが無いことだ。
流星拳らしきものや鳳翼天翔らしきものが一瞬だけ出てくるけどコールが無いのでなんだかわからん。
いくら実写版とはいえ、必殺技のコールは必須だろう。この世界観ではマッチしないだろうが、コールできる世界観を作れなかったこと自体が大失敗だろう。
それと勝者が正面を向いた決めポーズの背後で敗者が飛んでいく構図も無かった。これらがないと聖闘士星矢とはいえない。バトル漫画なんだからね。アニメはよくできていたよね。
とにかく監督が聖闘士星矢の名前を使って薄っぺらい映画を作ってしまったというがっかり作品。どうしてこうなるのか、ハリウッドには構造的な問題があるのではないかな。