虹が落ちる前にのレビュー・感想・評価
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普遍的な「素敵な表現」
主人公コウヘイ
体裁のいい立ち居振る舞い
人と同調や協調することを大切にしているが、周囲を取り繕っている中で見失っていく自分自身という存在
夢という憧れ
現実という妥協
どれがいいとか正しいの問題ではなく、「私」の意志がどこにあれば私は納得できるのか?
これがこの作品が解いていることなのだと感じた。
コウヘイの「いや」という口癖の裏にあるのは、自分の意志がはっきりしないから。
その口癖はやがて「自信」の裏返しの言葉となる。
その伏線として描かれた「一応バンドやってます」
その言葉は体裁上の言葉
それに対し「一応建築士です」は、自信の表れ。
彼女だったトモエはコウヘイのそんな言葉に敏感に反応した。
寝ているトモエを起こさないように電気もつけずに入るアパート。
何もかもに体裁よく協調性と同調を基本にするコウヘイの「優しさ」を、トモエは最初好きだった。
「一応…」
その時からすでにトモエには、「虹が落ちる」のが見えていたのだろう。
少なくとも心の隅には感じていた。
「どうして歌わないの?」
「タカアキがいるよ」
コウヘイの音楽才能を感じていたトモエにとって、コウヘイが夢を追いかけているのにその才能を十分発揮させられない理由が少しずつ分かりかけていた。
それでも、信じていたことに変わりはなかった。
ドラムのヨウイチは、裏カジノでヤクザ大崎兄弟の金を使い込み、レーベルのために苦心して用意した100万を盗んだ。
大崎は100万返すと言ったにも拘らず、コウヘイはその100万を保釈金にして300百万用意するから、病院へ行かせてほしいと懇願する。
病院から戻ったヨウイチは、コウヘイに一言も謝罪しないで親に300万借りると言った切り音信不通となってしまう。
実家が隣で幼馴染のタツヒコ ヤクザ
彼の昔の因縁相手だった大崎兄弟 タツヒコが動くきっかけとなったこの事件
タツヒコはコウヘイに100万持ってきたが、コウヘイは「この100万と失くした100万は別物だと思う」などと言って受け取らない。
メンバーはその言葉に絶句するが、そもそもすべてコウヘイのしたこと。
タツヒコは決着をつけたのだろう。
タツヒコはこの町には戻れなくなり、大崎も300万損をしてこの町を出て、コウヘイは100万失った。
当然コウヘイにはレーベルとの契約は破棄、ドラムも消え活動停止状態となる。
コウヘイはお金が無くなったことをトモエに話す。
トモエが言いたいことはコウヘイにはわかっていた。
「僕から言うよ」
これだけが本当のコウヘイの優しさだったのかもしれない。
「コウヘイの一番好きだったところが、そうは思えなくなった」
「損得ではないけど、一番損するのが私」
トモエの言葉
そもそもバンド活動に力が入っていなかった仲間がいたこと
それをわかっていながら続けてしまったこと
その先には成功など見えなかったはずなのに、「その答えはコウヘイ君にはわかってるんじゃないの?」
「終わらせるのが怖かった。君と釣り合わなくなるから。バンドマンのフリをしていた」
コウヘイはおそらく、夢を夢見ていたのだろう。
夢が夢のまま終わるのを先延ばしにしていた。
さて、
タイトルが表示されるまでの冒頭のシーンは、その後のコウヘイの成功した姿を描いている。
タワーレコードの店員に対し、「いえ」と相変わらずの口癖だが、それはもう自信の表れへと変化していた。
彼は東京から帰ってきて、ライブハウスのオーナーに電話する。
冒頭でのオーナーとの電話
それは、彼女のアパートの前と彼女が好きだと言ったそこまでの道をもう一度辿るため。
その道をもう一度辿ってから、当時の駅に着く。
そこで見た彼女 ホームの反対側に立つ彼女は、彼の新アルバムを見せる。
岐路になった駅
いつか彼女が「この先の場所に住みたい」と言っていた場所へ、彼女は向かっていった。
彼女もまた新しい未来に向かって進み始めたのだ。
さて、
まず脚本がすばらしい。
この作品のポイントは純文学のように少々掴みにくいが、ずっと違和感になっていくのがコウヘイの体裁を繕う言動
ここに焦点を絞り込みにくいのがこの作品を鑑賞する上での難しさとなっている。
しかしそこにこそ主人公がなぜうだつが上がらないのかがよく描かれているし、最後にトモエが言葉で説明してくれる。
また、
時系列を組み替えているにもかかわらず、「1年前」とか余計な提示をしないのがいい。
冒頭 本編 そして最後のシーン その時系列と場所の持つ意味がよくわかる。
トモエと別れ、音楽に本気になったことでボーカルをクビにして新しいドラムスを加入させた。
夢への向き合い方が人生を作り出す。
物事に妥協すれば、夢を失う。
自分は本当は何がいいのか、ここを明確にし選択していくことで夢はビジョンへと変わるのだろう。
普遍的な概念を描いている。
素晴らしい作品だった。
公平にイラつく僕は、監督の思う壺なんだろうなぁ
Tatooガッツリ入ってて、チーマーみたいな服装で、ガタイがデカくって見るからに怖くて近寄りたくないなぁって思っていたが、実はとても礼儀正しくって真っ当な社会性を持ち、青臭い夢を今でも当たり前のように追っている・・・みたいな人と出会ったような気持ちにさせてくれる作品でした。
書いてる自分もよくわからなくなっていますが(笑)いいバランスでの清濁、ご都合、青春(青臭さ)があり、エンタメとして十分成立しているのでないでしょうか?主人公の公平が非常に良いです。人物像として秀逸ですね。監督自身が音楽業界の方ですからこのような方をたくさんご存知なんでしょうねぇってくらいに、いい塩梅で中途半端でイライラします。何度心の中で「おいっ!」ってつっこんだことか。それほどにわかりやすいです。その他の登場人物も皆明確なキャラクターで、安心して見られる作品です。あーだこーだと思考を巡らせなくても楽しめる一本だと思います。
良くも悪くもわかりやすい物語なので、どこか物足りなさを感じるかもしれません。また、えー、それってベタすぎない?そんなポエム的展開ある?格好つけすぎじゃない?ってのが多くて、青春マンガかよっ!って思うことも多々ありましたが、でしっかり作られている作品だと思います。個人的な好みで言えば、リアルな楽曲は入れてほしくなかったし、心情の深掘りに時間を割いて欲しかったかな。内面が大事な物語のはずなのにその辺りの描写が薄いんですよね。
けど十分楽しめる一本です。
どうせその100万はドブへ…
今では売れる様になったバンドの中心人物を軸に、売れなかった時代のトラブルと売れる切っ掛けとなった出来毎と。
地元のタワレコを訪れた主人公をみせた後、程なく昔の話になっていくけれど…20人も呼べないって言われるまでさかのぼったの気付かなかったっす。ちょっと判り難い。
売れない5ピースバンドという体だけど、そもそも2人はヘルプですか?演奏シーンもないし、ただバンドかやりたいのか、ただ音楽がやりたいのか、やりたい形や目指すところが良く判らないし、結果としてはこれで良いけれど、元々のバンドやメンバーの設定はこれじゃない方が良かった様な気がする。
最後の展開も、あれ?別れたんじゃ?別れてない?やっぱり別れた?と釈然としないやり取りだったり、それだけでこんなにということは、2人が余程のものだった?とちょっと急展開過ぎるし。
話自体はなかなか熱かったし面白かったけれど、ちょっと大袈裟に設定を振り過ぎちゃってしっくり来なかった感じ。
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