「痛快!そんな言葉が真っ先に浮かぶのが、本作です。それはなぜか。ほと...」炎のデス・ポリス 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
痛快!そんな言葉が真っ先に浮かぶのが、本作です。それはなぜか。ほと...
痛快!そんな言葉が真っ先に浮かぶのが、本作です。それはなぜか。ほとんどが密室劇にもかかわらず、見終わってすっきり解放感に浸れるから。なにしろ米ネバダ州の砂漠地帯の真ん中にたたずむある小さな警察署が一夜にして「悪vs悪」の巣窟と化し、戦場となってしまうのです。法と秩序の象徴のような場所が、銃撃戦で破壊されるというとんでもない設定のだから、もう何も考えずに見ることをお勧めしたいです。
無駄に多くの銃弾が飛び交う娯楽作に徹していて、B級テイストのタイトルを裏切りません。同時に、不条理な窮地をどう生き抜くかということと、いのちを託さざるを得ない相手は悪人たちという状況に陥ったとき、どちらの悪人の言葉を信ずるべきかという心理劇も展開され、舞台を見るような緊迫感がありました。
とはいえ、斬新なシチュエーションで見せる西部劇並みのガンアクションはぶっ飛びもの。これを痛快無比といわずしてなんと形容したらいいのか考えてしまいます。
ワケありの詐欺師テディ(フランク・グリロ)は、マフィアから逃れるため、わざと暴力沙汰を起こして逮捕されます。警察署の地下の留置場でほっとしたのも束の間、向かいの檻には毛むくじゃらの泥酔男がいることにことに気づきます。ボブ(ジェラルト・バトラー)との名乗る男の話から、彼が自分を追ってきた殺し屋だと感づきます。留置場内で詐欺師が抹殺される寸前に正義感あふれる女性警官ヴァレリー(アレクシス・ラウダー)が止めに入り、阻止します。
さらに、マフィアから刺客として放たれたサイコパス男(トビー・ハス)が、風船の配達員を装って署内に侵入し、警官を次々と射殺してしまいます。ヴァレリーも撃たれ、致命傷を負った彼女は銃弾の中、堅牢な地下留置場に逃げ込むます。出血を早く手当てしないとヴァレリーはもう動けません。救命セットを持ってくるには、詐欺師のテデイか殺し屋のボブかどちらかの悪党と手を組むしかないという苦渋の決断を迫られることになってしまいました。
全編の大半は、吹き抜けの前時代的な警察署内で展開されるワン・シチュエーション。 警察署が舞台の作品にはジョンーカーペンターの「要塞警察」があり、西部劇が下敷きでした。こちらはマカロニウエスタンです。
本作の四つどもえの戦いは「善対悪」の対立ではありません。正義のヴァレリーも含め、それぞれの信条を貫いているだけなのです。それらがぶつかり合って激しいアクションとなっているです。
早撃ちの達人の警官が黒人のヒロインだったり、マシンガンでの銃撃や派手な爆発があったり、マカロニにかかっているソースはモダンです。4人を演じる役者たちが存在感たっぷりで、特にトビー・ハスのサイコパスぶりは見事でした。
それにしてもアメリカの警察官はみんなこんなにアホか、ワルの手先になっているのかと心配になってしまいます。ただひとり正義感にあふれたヴァレリーが映画を面白くていました。孤軍奮闘で悪に立ち向かうヴァレリーを演じた1996年生まれの黒人女優、ラウダーがカッコ良すぎます。44口径の大型銃ブラックホークを巧みに使いこなす場面には、惚れ惚れすることでしょう。
バトラーが本作のようなB級作品に出演しているだけでも、役柄がネタバレになってしまうと思うのですが、それは置いといて(^^ゞ
バトラーが脚本を読んで「これはもっと手を入れれば面白くなる」と思ったそうです。そこでプロデューサーは緊張感あふれる映画作りに定評のあるジョー・カーナハン監督の手を借りることにしたそうです。すぐにジョーは「ブリット」や「ダーティー・ハリー」など1970年代の映画のような傑作を手本に緊張感を膨らませていきました。加えて、彼はサミュエル・ベケットの不条理劇「ゴドーを待ちながら」のスタイルに収めたという。誰が噓を言って、誰が真実を述べているのかわからないスリラー映画です。この心理劇のところでも意外な展開があり、楽しめました。
暑い夏をぶっ飛ばす、警察署内のバトルロイヤルはどう決着がつくのか。B級グルメのおいしさと楽しさは十分に味わますよ。2022年7月15日公開。上映時間:1時間47分。