「ありのままの自分で。」よだかの片想い しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
ありのままの自分で。
"(not) HEROINE movies" 第2弾。
メ~テレ開局60周年記念作品。
原作は未読です。
松井玲奈の演技がとても良く、アイコの心情が胸に染み入るように伝わって来ました。目線の運び方やちょっとした仕草まで、繊細に構築された演技に引き込まれました。元AKBグループ・メンバーの中でも突出した演技力だな、と…。もっとブレイクしてもおかしくないと思うのですが…
誰しも何かしらのコンプレックスを抱えていると思いますが(斯く言う私もそう)、アイコの場合、当事者でないと分からない偏見や傷つき方をして来たのだろうと想像出来るし、小学生の時の琵琶湖のトラウマは本人にとってはかなり強烈なものとして存在し、その後の人生に影を落とし続けていました。
そこを丁寧に描写していたから、映画監督との恋愛を通してアザのある自分を肯定出来るようになった彼女が、火傷を負った先輩へ言葉を掛けるシーンにじんと来ました。
閉じ込められた倉庫のドアのガラスを割るシーンでは、ガラスに映った自分を打ち砕くことで、成長した彼女を比喩的に表現していたところも素晴らしいと思いました。
目を向けなければ傷つくことも無かったことに真正面から向き合って、それを受け入れる…。アイコが踏み出した一歩には男性である私も共感出来たし、勇気を貰いました。
原作、読もうかな…
[謝辞]
2022年9月30日をもって、テアトル梅田が閉館になることを知った時は、驚きと悲しみが同時に襲って来ました。
私のミニシアター初体験がテアトル梅田で、その後何度か足を運んでいましたが、ここ5、6年ご無沙汰してしまい…
閉館までになんとかして行かなくてはと思いつつ、なかなか都合がつかず焦りが募っていた今日この頃でした。
そしてようやく、閉館前日に時間が空いたので(出来ることなら閉館日に行きたかった)、最後のロードショー作品である本作を観るため、足を運ぶことにしました。
地階へ向かう階段を降りる時のワクワク感と、帰る時の充実感と余韻に浸りながら階段を上る感覚、久しぶりでした。
しかし、これはもう味わえないんだなぁ…
そう思ったら、目に涙が滲みました。
名残惜しそうに看板などの写真を撮っている方がたくさんいて、どれだけ愛されていた映画館なのか実感出来ました。
私も混じって撮りました(笑)。
長年地域活性と映画文化のためにご尽力下さり、また、素晴らしい映画を届けてくれて、ありがとうございました。