劇場公開日 2022年6月3日

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「ガンダムの姿をしたイビツな何か。」機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島 ジョイ☮ JOY86式。さんの映画レビュー(感想・評価)

0.5ガンダムの姿をしたイビツな何か。

2022年11月5日
iPhoneアプリから投稿

ガンダムファンを30年以上やってきました。これまで全ての映像作品を見てきました。
なので本作も見ました。
感想はタイトルの通りです。

ビジュアルこそハイクオリティな現代風作画になっていますが、褒められる点はここだけ。
他は目も当てられないほど酷い改変がなされていました。

そもそも論として、ククルス・ドアンという作品はTVアニメ15話の時点で完成した作品です。
それを本作は映画化にあたり、回想シーンや戦災孤児とヤギのギャグシーンで無理矢理108分まで引き伸ばしています。
その為とにかくテンポが悪い。ダレます。
加えて過剰な劇伴の多用、無駄に多いスローモーション、大仰な演技をするキャラクターの芝居によってとにかくクドい。

序盤の戦闘シーン以降、蛇足としか言いようが無いパートが1時間以上も続きます。
この構成にはストレスを感じずにはいられませんでした。

次に問題なのが本作のタイトル。
「機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島」
このタイトルだと、まるで富野由悠季監督によるいわゆる"ファーストガンダム"の1エピソードのリメイク作品のように見えますが、現実には異なります。

上映前にこのようなテロップが表示されます。
「この映画は1979年に放映された機動戦士ガンダムの15話を"翻案"したものです」と。
翻案…というのは"内容を別の作品に書き改める事"を指します。
そう、本作は富野監督によるファーストガンダムのリメイクではなく、安彦良和によるジ・オリジンなのです。
この点を伏せたタイトルには違和感を感じずにはいられません。

「劇場で最新のファーストガンダムを見れる!」
そう誤解してスクリーンで見た多くのファンは、既にリュウさんが他界しスレッガーがジムに乗っているホワイトベースの様子に混乱した事でしょう。
初対面でタメ口をきく安彦版アムロや、ポンコツな安彦版スレッガー、エースパイロット化した安彦版ドアンに疑問を抱いたはずです。

ここまで改変されたククルス・ドアンの島は果たして我々の知る「機動戦士ガンダム」と言えるのでしょうか?
否、絶対に違うと私は断言します。
これはあくまでも、安彦良和による独自解釈のオリジンユニバースなのです。

他にも不満は数え切れないほどありますが。酷評が延々と続きそうなのでこのあたりにしておきます。
生理的嫌悪感にも似たストレスを感じたガンダム作品は後にも先にも初めてでした…とだけ言っておきます。

安彦さん、ガンダム成功における貴方の功績は非常に大きいものでした。それは疑いようのない事実です。
とはいえ、ファーストガンダムをこれ以上の改変するのはやめていただきたいです。
やるならオリジン名義でお願いします。

そしてファンの方、特に富野由悠季作品を愛するファンには視聴をオススメしません。
ガンダムを知らない層にもオススメしません。
いっそ水星の魔女を見てください。
宇宙世紀に触れるのはアナザーを見てからでも遅くなんてないのです。

ジョイ☮ JOY86式。