「匂いに言及する意味」機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)
匂いに言及する意味
初代ガンダムの、エキストラ的なエピソードが映画化するというのは大胆な発想だ。シリーズの中で独立性の強いエピソードだからこそ、アレンジして膨らませやすいのもあったんだろうし、ククルス・ドアンはインパクトのキャラクターだったことは確かだけど。
しかし、なかなか面白い作品になっていたし、戦争をどう描くのかというガンダムシリーズの命題に沿った作品でもあった。戦争孤児たちとの生活描写にかなりの時間を割いているのだが、アムロもそもそもまだ子どもなのだ。普段の大活躍ぶりがそのことを忘れさせてしまう時があるが、この映画ではアムロは一貫して少年だった。
本作の決め台詞「戦争の匂い」とはどういう匂いなのだろうか。映像では匂いを表現できない。匂いに言及されると、観客は想像を働かせるしかない。戦争を知らない観客に戦争のことを想像してもらう手段として匂いに言及するのは上手いやり方だと思う。観客はその匂いを想像するしかないが、アムロが少年なのにそれがわかるのも切ない。
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