「生きるという力強さ、生き物のひたむきさ」GUNDA グンダ jollyjokerさんの映画レビュー(感想・評価)
生きるという力強さ、生き物のひたむきさ
子ブタは生きるために母ブタの乳首を吸う。
お腹がいっぱいになると身を寄せ合って眠る。
兄弟と戯れてエネルギーを放出する。
母ブタは絶えず乳を与え子どもを見守る。
鶏はそのか細い足で大地をしっかり捉え、片足でさえ踏みしめて進む。鶏たちに合わせてローアングルで鶏たちを見据えるカメラは、自分が同化したようにさえ感じられる。
牛たちの巨体は轟音をたてて広い草原に放たれ、一時の自由を満喫する。それぞれの顔には個性があり、その目はどこを見ているのか、何を感じているのか、ハエの鬱陶しさは大したことではないようでもある。
子ブタの絶え間ない鳴き声が、トラックが遠ざかるとともに聞こえなくなると、母ブタは鼻を鳴らしながら何度も周辺を探し回る。延々とも思える時間が経過しスクリーンが暗転すると、これは人間の営みの一部を切り取ったものなのだと気づく。BGMもセリフも背景説明も一切省いたモノクロのスクリーンに映し出された光景は、生きるということを繰り返し考えさせる構成である。肉食を揶揄するわけではないが、生きるという力強さ、生き物のひたむきさを強く感じる。野生の本能に、たぶん「感情」というものも含まれているのだろう。
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