ドント・ルック・アップのレビュー・感想・評価
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見上げるな、と囁く罠
ある日、彗星が発見された。
それはどんどん地球へ向かっている。
ぶつかれば間違いなく人類滅亡。
果たしてどうなる、というドタバタ劇。
コメディーとも聞いていたため、
もっとあからさまに笑えるナンセンスものかと思っていたが、
ナンセンスではなく「ハイセンス」だった。
ゆえに見ながら心の中でツッコミを入れること幾たび。
ニヤリ、とさせられたり、オーノーで首を振って肩をすくめてみたり。
そんな愛すべき人間臭さと、あきれるべき醜聞の波状攻撃が
このドタバタ劇を加速させてゆく。
うちにも終盤、哀愁漂う無力感に
ディープインパクトにも似た感動を覚えてみたり。
「見上げるな」
先導する政治家の演説シーンを見たなら、
ああこれがアメリカの悲劇なのね、と思ってみたり。
そう、これをブラックユーモアというのだろうな。
ポジティブシンキングとかもてはやされるが、
乗せて操られるだけの幻影なら
現実に対抗すべく
ネガティブシンキングも同等に大事にされるべきだよな、とも思った。
ある意味全く笑えないコメディ
ルックアップ
人類最期の物語
人類はコミュニケーションができたからこそ、繁栄ができたとどこかで聞いたことがある。自然環境や外敵などに、皆で協力して問題に対処できたからだと。
結果、共通認識しやすい危機は激減した。しかし、認識と相性の良くない物事についてはどうだろうか?瞬きの暇もないあっという間に起こる危機、変化がなく思えるほどじわじわゆっくり起こる危機。そして誰も知らない密室が絡み合って進行する人的危機。
認識できないため、一人一人は事実を誤認する。目についた共通誤認に身を委ねて満足する。それを横目にひと握りの権力者の考えが、社会全体の意思決定として強行される。その結果が全ての人に降りかかり、危機がはっきり認識できた時にはあとの祭り。
コミュニケーションで繁栄した人類は、コミュニケーションで自滅する。滑稽で恐ろしい、人類の最期。それを提示してくれる、現代人が観ておいて損はない映画。
今の世界情勢を思うと、フィクションだと笑うことはできない。社会のありように向き合うことは、大事。
アメリカンジョーク
評判も良くアカデミー賞候補だし超豪華キャストだし、Netflix作品なので今後観る機会がないかもしれないしで、近くの劇場で上映してくれたので観に行きました。
勘違いされると困るので最初に言っておきますが、私の大好きな作風でとても面白く、一級品の作品だと思うし観られて本当に良かったと思っています。
ただ、あまりにも専門家筋の高評価に対し少し戸惑う部分もありますので、その事に焦点を当てて書きますと、この手の作品って今までにも何本もの傑作が既に作られているし観て来ました。
なので、個人的には新鮮味は感じられませんでしたし、特別の驚きや衝撃もありませんでした。
逆に言うとなんで評論家筋がこんなに騒いでいるのかが、少し不思議な気がしましたよ。
本作クラスのブラックコメディやパロディ作品ならアメリカ映画には既に沢山の傑作が存在し、少なくとも私にとっては(楽しみましたが)衝撃であったり魂に響くほどの作品ではなかったです。
『博士の異常な愛情』や『ネツトワーク』等の作品を知っている世代なら、今もこのテーマでアメリカは全く進歩していないというか、長年アメリカ映画を観続けている者からすると、その様な捉え方も出来る作品でしたね。
「いやいや、人間の普遍性を描いた作品なんだよ」という方も当然いるとは思いますが、若い映画ファンの様にはしゃいで欲しくはないですよね。
実際危機になっても、こんなものかも
ブロンテック、あとでわかるw
巨大彗星のあとしまつ
強烈な印象、すごく好き
ここ数年観た映画の中でいちばん「好き」かもしれない(じゃあなんで5点じゃないのか、といえば、議論の余地が大いにあって5点をつけちゃうと完結してしまってさみしいから、という感じ)。
劇伴もすごく好きで、特に強烈に印象に残っているシーンの、好きだった曲のタイトルが「メメントモリ」でゾッとしてしまった(笑)
演者もスター選手揃いだけれども、単にスターを揃えました、というだけじゃなくて作品にマッチしていて良かった。
日本版ドント・ルック・アップはもしかしたら大怪獣のあとしまつなんだろうか…などと思いながら(笑)、観終わってしばらく経ちますが余韻に浸り続けています。
日本だったら、半年間では楽観的な方向には触れず、悲観的な方向に触れるんじゃないかなぁ、などなどいろいろ考えるのもまた面白いですね。
こんな映画が作れるのが羨ましいなあと思ってしまった。
全人類のバカ息子ことジョナヒル最高
fu●kのカリスマことレオさまと
全人類のバカ息子ことジョナヒルが
アドリブ満載で不謹慎コメディしてたらそれだけで観る価値ありです。
そのコンビと内容で想起するのは、やはりスコセッシ監督のウルフオブウォールストリートですが、今作はそのスコセッシ的編集技法の継承者であり今やトップランナーのアダムマッケイ。昔からのコメディ畑のバランス感覚、シュールさと、直近数作品で全面にでてきた社会へのメッセージ性を高いレベルでハイブリッドさせてました。
アダムマッケイ監督のマネーショートでもあったような、悲惨な顛末を向かえる確かな事実と変わらない世界の苛立ちを完璧にエンタメに昇華してる!
と思ってました。途中まで。
ところが観ていくと笑えません。今の世の中そのまますぎて。エンタメじゃなくドキュメンタリーに近い。
つまり「映画を観る普通の人間」として観れば爆笑できるのに、「現代社会の一員」として観れば全く笑い事じゃなくなるということです。
今の世の中の気持ち悪さと歪みを認識させられる、ブラックコメディとして最高水準の完成度です。今の子供世代が将来これを観てキテレツムービーとして爆笑できる世の中となることを星に願います。
とにかく豪華!お金がかかっている!
笑うに笑えない極上のブラックコメディ
もし巨大な彗星が地球に落ちてきたら?
そんな題材の映画はこれまで無数にあった。
しかし本作はそれら過去作に埋もれるような凡作ではない。むしろ、その過去作を遥か過去の物に押しやる程に強烈な1本だ。
もし巨大な彗星が地球に落ちてきたら?
全人類が一致団結して彗星を破壊する?
いやいや、この映画はそんなスムーズに話を進めてくれない。それどころか、大統領もメディアも冗談半分に笑い飛ばしてまともに取り合おうとしない。
危機を未然に知り、対策を取ろうと奔走する者。
直面する危機から目を逸らし目先の利益を優先する者。
この相反する両者を見て、視聴者は初めは笑ってしまう事だろう。私もそんな1人だった。
だが次第に気づくのだ。彗星落下はフィクションなどではないと。むしろこれはあらゆる災厄の比喩であり、二分される両者の主義主張は、コロナ禍で分断された世界を生きる私達自身なのだと。
こうなるともう笑えない。
むしろ背筋がゾッとするほど恐ろしくなる。
人間は危機に直面しても一致団結なぞせず、目先の利益の為に本質を見失い自滅していく…そうこの作品はメッセージを発しているのだ。
なんて愚かな事だろう。
しかし、これを単なるフィクションだと割り切る事もさせてくれない。何故なら、今まで見てきたアルマゲドンやディープインパクトこそフィクションであり、本作のテーマこそ現実だと肌感覚で分かってしまうからだ。
人間は彗星衝突で絶滅するわけでも、ましてエイリアンの侵略で絶滅するわけでもない。人間は、人間自身のエゴに食い尽くされて自滅していく。
この余りに重い事実をエンタメとして消費できてしまう業の深さ。これこそが人間という愚かな生き物の本質なのかもしれない。
コメディ要素がやや小粒
天文学専攻のランドール・ミンディ博士は、落ちこぼれ気味の天文学者。ある日、教え子の大学院生ケイトとともに地球衝突の恐れがある巨大彗星の存在を発見し、世界中の人々に迫りくる危機を知らせるべく奔走することに。テレビ番組出演のチャンスにも恵まれ、熱心に訴えかけますが、相手にしてもらえないばかりか、事態は思わぬ方向へー。
とにかくキャストが豪華。その中でもディカプリオはやはり光った。冴えない学者からの、熱の入った言葉にはぐっとくる。メリル・ストリープ達の道化ペアもいい感じに気分を悪くしてくれる。
ラストの展開が途中から気になりだすが、潔くて個人的には気に入った。
ただ、笑える要素の一つ一つが小粒でコメディ映画にしては真面目なトーンが多かった印象。政治やGAFAをいじるあたりはアメリカンブラックジョークだが、どういう顔して見ればいいのかわからない部分もあったり。
政治家やメディアやSNSに踊らされる人間の滑稽さをコミカルに描く
本作はSFの皮を被っているが、中身はブラック・コメディであって今の社会に対する明確な批判だ。
人々は政治家の発表に一喜一憂し、科学を無視して好きかってなことを言う。一方でメディアは話題性ばかりを重視して真実や正確性など無視して視聴者を煽る。そして科学者さえもSNSの人気や意見に振り回れて自分を見失いいつの間にかパンダと化している。
はじめこそ隕石落下の回避に関する科学者の葛藤のような内容だが、中盤から一気に転がりだして社会の醜さや浅はかさを赤裸々に面白おかしく描いている。そして隕石はまさに現実に流行しているウイルスや環境問題の隠喩であることに気付かされる。
いささか悪趣味なところはあるが、風刺ブラックコメディとしては良い作品。
センスの塊
いや〜たまげた。こりゃ凄いわ。どんだけ凄いお金がかかってるのかわからないけど(そもそもキャストが)、でもこのキャストが揃ったからお金が出たのかわからないけど確かに映画館でかかってるどの映画より意欲的で面白くてゴージャスだった。地球滅亡設定の小説映画は数あれど、シニカルコメディでやるなんてスケールが。。でもやっぱり脚本が面白いし、編集が巧みです。地球滅亡設定のセオリー通りの発見から情報伝達、政府の動き、パニック、ディザースターとなる一連のパターンを本当に細かにデフォルメされたキャラクター造形でフレッシュな笑いに転じさせる。最近リメイクされたドラマの日本沈没の無能無気力な硬直ぶりと比べれば、いかに日本の映画づくりがダサいのかよくわかる。だって今まさに日本沈没の予想が立てられた時の人間のドラマって、特に政界と企業においてはもっと描きようあるだろう、と思うし。そんな中で、アメリカの映画界が描き出した「バカバカしさ」の標的が政府とテレビ局というのがよかった。「新聞記者」という同じNetflixのドラマもあったけど、やはり海外はワンランク上ですね。
地球直撃の彗星を発見しても、現代社会では相手にされないこともあるだろう的なアイデアを見事に活かしたと思います。やっぱりアメリカのコメディは凄いな、と思える一作だった。おまえら狂ってないか、という怒りの出し方のセンスに脱帽です。
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