ドント・ルック・アップのレビュー・感想・評価
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巨大彗星のあとしまつ
強烈な印象、すごく好き
ここ数年観た映画の中でいちばん「好き」かもしれない(じゃあなんで5点じゃないのか、といえば、議論の余地が大いにあって5点をつけちゃうと完結してしまってさみしいから、という感じ)。
劇伴もすごく好きで、特に強烈に印象に残っているシーンの、好きだった曲のタイトルが「メメントモリ」でゾッとしてしまった(笑)
演者もスター選手揃いだけれども、単にスターを揃えました、というだけじゃなくて作品にマッチしていて良かった。
日本版ドント・ルック・アップはもしかしたら大怪獣のあとしまつなんだろうか…などと思いながら(笑)、観終わってしばらく経ちますが余韻に浸り続けています。
日本だったら、半年間では楽観的な方向には触れず、悲観的な方向に触れるんじゃないかなぁ、などなどいろいろ考えるのもまた面白いですね。
こんな映画が作れるのが羨ましいなあと思ってしまった。
全人類のバカ息子ことジョナヒル最高
fu●kのカリスマことレオさまと
全人類のバカ息子ことジョナヒルが
アドリブ満載で不謹慎コメディしてたらそれだけで観る価値ありです。
そのコンビと内容で想起するのは、やはりスコセッシ監督のウルフオブウォールストリートですが、今作はそのスコセッシ的編集技法の継承者であり今やトップランナーのアダムマッケイ。昔からのコメディ畑のバランス感覚、シュールさと、直近数作品で全面にでてきた社会へのメッセージ性を高いレベルでハイブリッドさせてました。
アダムマッケイ監督のマネーショートでもあったような、悲惨な顛末を向かえる確かな事実と変わらない世界の苛立ちを完璧にエンタメに昇華してる!
と思ってました。途中まで。
ところが観ていくと笑えません。今の世の中そのまますぎて。エンタメじゃなくドキュメンタリーに近い。
つまり「映画を観る普通の人間」として観れば爆笑できるのに、「現代社会の一員」として観れば全く笑い事じゃなくなるということです。
今の世の中の気持ち悪さと歪みを認識させられる、ブラックコメディとして最高水準の完成度です。今の子供世代が将来これを観てキテレツムービーとして爆笑できる世の中となることを星に願います。
とにかく豪華!お金がかかっている!
笑うに笑えない極上のブラックコメディ
もし巨大な彗星が地球に落ちてきたら?
そんな題材の映画はこれまで無数にあった。
しかし本作はそれら過去作に埋もれるような凡作ではない。むしろ、その過去作を遥か過去の物に押しやる程に強烈な1本だ。
もし巨大な彗星が地球に落ちてきたら?
全人類が一致団結して彗星を破壊する?
いやいや、この映画はそんなスムーズに話を進めてくれない。それどころか、大統領もメディアも冗談半分に笑い飛ばしてまともに取り合おうとしない。
危機を未然に知り、対策を取ろうと奔走する者。
直面する危機から目を逸らし目先の利益を優先する者。
この相反する両者を見て、視聴者は初めは笑ってしまう事だろう。私もそんな1人だった。
だが次第に気づくのだ。彗星落下はフィクションなどではないと。むしろこれはあらゆる災厄の比喩であり、二分される両者の主義主張は、コロナ禍で分断された世界を生きる私達自身なのだと。
こうなるともう笑えない。
むしろ背筋がゾッとするほど恐ろしくなる。
人間は危機に直面しても一致団結なぞせず、目先の利益の為に本質を見失い自滅していく…そうこの作品はメッセージを発しているのだ。
なんて愚かな事だろう。
しかし、これを単なるフィクションだと割り切る事もさせてくれない。何故なら、今まで見てきたアルマゲドンやディープインパクトこそフィクションであり、本作のテーマこそ現実だと肌感覚で分かってしまうからだ。
人間は彗星衝突で絶滅するわけでも、ましてエイリアンの侵略で絶滅するわけでもない。人間は、人間自身のエゴに食い尽くされて自滅していく。
この余りに重い事実をエンタメとして消費できてしまう業の深さ。これこそが人間という愚かな生き物の本質なのかもしれない。
コメディ要素がやや小粒
天文学専攻のランドール・ミンディ博士は、落ちこぼれ気味の天文学者。ある日、教え子の大学院生ケイトとともに地球衝突の恐れがある巨大彗星の存在を発見し、世界中の人々に迫りくる危機を知らせるべく奔走することに。テレビ番組出演のチャンスにも恵まれ、熱心に訴えかけますが、相手にしてもらえないばかりか、事態は思わぬ方向へー。
とにかくキャストが豪華。その中でもディカプリオはやはり光った。冴えない学者からの、熱の入った言葉にはぐっとくる。メリル・ストリープ達の道化ペアもいい感じに気分を悪くしてくれる。
ラストの展開が途中から気になりだすが、潔くて個人的には気に入った。
ただ、笑える要素の一つ一つが小粒でコメディ映画にしては真面目なトーンが多かった印象。政治やGAFAをいじるあたりはアメリカンブラックジョークだが、どういう顔して見ればいいのかわからない部分もあったり。
政治家やメディアやSNSに踊らされる人間の滑稽さをコミカルに描く
本作はSFの皮を被っているが、中身はブラック・コメディであって今の社会に対する明確な批判だ。
人々は政治家の発表に一喜一憂し、科学を無視して好きかってなことを言う。一方でメディアは話題性ばかりを重視して真実や正確性など無視して視聴者を煽る。そして科学者さえもSNSの人気や意見に振り回れて自分を見失いいつの間にかパンダと化している。
はじめこそ隕石落下の回避に関する科学者の葛藤のような内容だが、中盤から一気に転がりだして社会の醜さや浅はかさを赤裸々に面白おかしく描いている。そして隕石はまさに現実に流行しているウイルスや環境問題の隠喩であることに気付かされる。
いささか悪趣味なところはあるが、風刺ブラックコメディとしては良い作品。
センスの塊
いや〜たまげた。こりゃ凄いわ。どんだけ凄いお金がかかってるのかわからないけど(そもそもキャストが)、でもこのキャストが揃ったからお金が出たのかわからないけど確かに映画館でかかってるどの映画より意欲的で面白くてゴージャスだった。地球滅亡設定の小説映画は数あれど、シニカルコメディでやるなんてスケールが。。でもやっぱり脚本が面白いし、編集が巧みです。地球滅亡設定のセオリー通りの発見から情報伝達、政府の動き、パニック、ディザースターとなる一連のパターンを本当に細かにデフォルメされたキャラクター造形でフレッシュな笑いに転じさせる。最近リメイクされたドラマの日本沈没の無能無気力な硬直ぶりと比べれば、いかに日本の映画づくりがダサいのかよくわかる。だって今まさに日本沈没の予想が立てられた時の人間のドラマって、特に政界と企業においてはもっと描きようあるだろう、と思うし。そんな中で、アメリカの映画界が描き出した「バカバカしさ」の標的が政府とテレビ局というのがよかった。「新聞記者」という同じNetflixのドラマもあったけど、やはり海外はワンランク上ですね。
地球直撃の彗星を発見しても、現代社会では相手にされないこともあるだろう的なアイデアを見事に活かしたと思います。やっぱりアメリカのコメディは凄いな、と思える一作だった。おまえら狂ってないか、という怒りの出し方のセンスに脱帽です。
決してフィクションではない現代社会風刺!これを観ても気づかないことこそ最も恐ろしい事実!!
アダム・マッケイが監督・脚本という時点で社会・政治風刺色が強いのは言うまでもないが、今までにない豪華キャストでやってしまったおバカ映画!!
「俺たちニュースキャスター」シリーズもコメディ俳優が勢ぞろいの豪華作品ではあったものの、今回はレオナルド・ディカプリオ、メリル・ストリープ、ケイト・ブランシェット、ジェニファー・ローレンス、ティモシー・シャラメなどなど……アカデミー賞級の俳優陣を取り揃えてやってしまうところがNetflixの資金力の恐ろしさでもある。
タイラー・ペリーやジョナ・ヒルが辛うじてコメディ枠ではあるが、真面目な役をやるはずの俳優陣がおバカ全開ということ自体がひとつのギャグにもなっているから作品自体の外観からおもしろい。
これは今に始まったことではないが、SNSが普及したことで、真実よりもコーティングされたエンターテイメント性にしか人類が揺るがないという、とてつもない皮肉を描いているわけで、それが決してフィクションとは、いえないところが恐ろしいのだ。
例えば新型コロナウイルスにしても、視聴率のために、科学的、医学的根拠よりも、バカみたいに「今日の感染者〇〇人」と不安感を煽るメディア、一方で極端な陰謀論で中立的である事実が霞んでしまう両極端な世界に生きていいる私たち、そしてそれが視聴率やPV数、発信者の知名度、カリスマ性などでしか判断できなくなっている現代人の腐敗も描いていて、何より恐ろしいのは、ここまで俯瞰で見せているというのに、それが自分にもあてはまると感じることができない者たちがいかに多いかということなのだ。
真実が伝わらない世界で、真実を伝える難しさを描いていて、科学的根拠の全くない『アルマゲドン』や『ディープ・インパクト』のようなディザスターよりもよっぽどリアリティのある物語だといえるだろう。
何度も例にして悪いが、『アルマゲドン』みたいに、あんな短期間で惑星崩壊レベルの巨大な隕石や彗星をどうにかできる技術は現代人にはなく、人間が気づいた頃には、全てが遅いということ。
それを知らせたことで、仮に国がすぐに動いてくれたとしても、結局は無理で、受け入れるしかない……ここもリアル。
ただひとつ残念だったのは、ジェニファー・ローレンスのモノマネが得意なアリアナ・グランデが出演しているのだから、本人の前でモノマネするシーンを入れてほしかった。
ブラッククランズマン超えのブラックコメディ
本場アメリカの政治ジョークは核が違う、関心の高さを裏打ちする描写も注目
秀逸でお粗末な冗談が変化し続ける、凄い映画だこと…笑。風刺の効いた黒さがたまらない。
単純にネトフリに入っているから、というのもそうだが、割と永く騒がせていたので観てみた。なかなかパンチラインが効いてて面白い。日本沈没みたいな危機感に対し、分断が起きてしまう所がなんともアメリカらしさを写している。「だってありそうじゃん。上の奴は皆、私利私欲だぜ?」みたいなブラックジョーク。隕石が落ちてくるから…のシチュエーションでここまでギミックがあることに驚く。
かと言って、人間の滑稽さも滲み出ているから、その可笑しさも強烈。浮気に暴動、パニック…ありったけのモノを詰め込んで魅せる。ちゃんと差別とか除いた上でジョークを利かす点も良かった。
洋画は疎いのでキャストがどうこう言えないけど、やはり主演の2人が踊らされている姿が凄く作品のインパクトを残してくる。大統領に超大企業の社長…権力的な部分の露骨さに苛まれながら、光を手繰り寄せようとするのがグッと来る…と言いたいけど、皆いろいろ有るから。そこは…。笑
『決戦は日曜日』を先に観ていたので、日本にも政治の風刺が出来るようになったのは凄い!と思っていたけど、本場は違いますね…。何より、政治関心が強いからこそ透けるモノを写している気がして、格の違いを感じた。スケールも含め、ネトフリ、恐るべし。
空を見ろ!
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