劇場公開日 2021年12月10日

「2021年を象徴する“今”がこれでもかと詰まったブラック・コメディ」ドント・ルック・アップ 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)

5.02021年を象徴する“今”がこれでもかと詰まったブラック・コメディ

2021年12月31日
PCから投稿

最低最悪なことがどれだけ進行していても見ないふりをしていたい大衆心理、そのためならどんな不合理な陰謀論にも乗せられる人間の愚かさ、それを利用する政治や資本家の厚顔さ、すべてが現在進行系の現実そのままだと感じさせる切迫感。本当に笑うに笑えないブラック・コメディで、ただただ悄然とする以外にこの映画の鑑賞法はないのかも知れないとさえ思う。

とはいえ初回は笑わせてもらったし、二回目は腐った現実の代わりにフィクションでこの世界を焼け野原にしてくれたカタルシスに感動して泣いたし、三回目はもはや達観レベルで水のようにサラサラと自分の中に入って流れていった。観るたびに違う顔を見せてくれる多層的な映画であり、ハリウッドの現在最強のスターたちによる最高の悪ふざけだとも思う。

ディカプリオの演説は当然『ネットワーク』だろうし、実際ディカプリオ本人のたっての願いだったそうだが、あの渾身の熱演をぶった切る乱暴さもさすがアダム・マッケイだと思う。最高。

村山章