劇場公開日 2022年11月11日

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「一種のドキュメンタリー」土を喰らう十二ヵ月 サプライズさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0一種のドキュメンタリー

2022年11月17日
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鑑賞方法:映画館

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「キネマの神様」で演技に不安を持ったものの、松たか子と共演し、しかも大好きな〈ご飯映画〉ということで、そこそこ期待していた、沢田研二最新作。想像通りの出来栄えで、四季のある自然豊かな日本という国に住んでいることに、すごく感謝したくなる作品でした。

この映画、非常に独特で、一種のドキュメンタリーのようなテイスト。1本の映画として綺麗にまとめるために、ストーリーがおまけ程度に加わっているような感じです。そのため、物語としてはパンチがなく、どこかぎこちなさを感じてしまうのだけど、四季折々、美味しいものたくさんの日本の良さが、12ヶ月を通してしっかり描かれているため、全くもって飽きません。

ドキュメンタリーと感じる部分はこれだけでなく、一部の棒読み演技を除き、作品全体がこの上なく自然という点でも。虫や鳥などの生物、そして各月の天候なんかはもちろんのこと、ちょっとした会話や動作も、作られている感じが全くない。ただただ、田舎に住む男のある一年を密着したみたいな。これがすごく居心地が良くて、この暖かな空間にずっと居ていたいと思っちゃう。そんな映画です。

懸念していた沢田研二の演技は、「キネマの神様」からは考えられないくらい良いものになっていて、松たか子との相性も抜群。山に訪れ、植物を採り、家に帰って、料理をする。この姿が沢田研二の良さを存分に発揮できていていました。彼のナレーションも、流石歌手なだけあって、聞き心地が最高です。ジュリーファンは必見でしょう。

この映画見たら、日本愛が深まり、自然の美しさを実感でき、そして何より料理がしたくなります。肉や魚が無くとも、こんなにも素晴らしい料理が出来上がる。不便ではあるだろうけれど、この暮らしにどこか憧れを抱きました。デジタルデトックス(=携帯やテレビなどの俗物的な物に触れないこと)もしてみたい。あと、この映画見たら、ジャンクフードなんかを食べることに、躊躇いを覚えます笑 映画後にマックを食べようかと思っていた私は、急遽定食屋に向かうことにしました。

なんとも味わい深い作品です。
「おいしい給食」「きのう何食べた?」など、日本は料理映画を作る才能に長けています。劇場で絶対に!という映画では無いですけれども、是非とも多くの日本人に見て欲しい良作です。よし、大根と筍、買って帰ろう。

サプライズ