「未成年への性加害と閉鎖社会」恋い焦れ歌え mさんの映画レビュー(感想・評価)
未成年への性加害と閉鎖社会
この映画が公開されたのは2022年だが未成年への性加害が問題になっている今見てほしい作品。
真実の愛を描いた闇BLとして見ることもできるが、この作品の大きなテーマは性被害者の再生と黙殺されている閉鎖社会への問題提起だと思われる。
狭い社会で幼い頃から当たり前のこととして行われ周りの大人からも受け入れるように促されマインドコントロールされてきた子供達。
「あの人はちゃんと俺たちを守ってくれる」性被害を受けた人間が加害者について話すその言葉はまるで呪文のよう。
そんな閉鎖社会でたった一つの大切なものまで壊されそうになった青年が不器用にそれを守ろうとする姿に涙が出る。
外側から来た主人公は実体験としてその閉鎖社会に触れ多くのものを失いながらも青年を救い出そうとするが、一人の力ではどうにもならない。
閉鎖社会の中にいる大人はもちろん、外側にいる人間もなんとなく感じてはいても自分に直接関わらない狭い世界で完結してしまっているものに対しては見て見ぬふりをしてしまう。しかし外側にいる人間はそれが事件として明るみに出た時は大人になった被害者も含めて丸ごとその社会を批判する。
それでいいのか?最近の性加害報道を見ていて改めて自分に問うた。公開当初に映画を見ていた自分はこの最近の報道を見ながら罪の意識に苛まれた。自分も加害者の一員である気がしてならないから。
映画監督は作品にすることで黙殺せず世の中に伝えている。では自分にはなにができるのか、を考えさせられた。
また演者である稲葉友さん、遠藤健慎さんの熱演とラップが素晴らしい。脇を固めるキャストの方々も印象的で見事。この作品に託して何かを伝えようとした監督、キャスト、スタッフの方々の熱量を存分に浴びて自分の中には残るものがあった。