「幸せな気持ちにしてくれます」劇場版 からかい上手の高木さん おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
幸せな気持ちにしてくれます
テレビアニメ3期で初めて作品に触れ、すぐに虜になり毎週楽しみにしていた「からかい上手の高木さん」。原作未読なので、そのよさが生かされているかわかりませんが、テレビアニメ版のよさは本作でも存分に生かされ、高木さんと西片の二人が醸す甘酸っぱい雰囲気が観る者を幸せにしてくれ、最後まで飽きることなく作品世界に浸れます。
ショートストーリーを重ねるテレビ版とは異なり、本作では卒業を控えた高木さんや西片を含めたいつものキャラたちの中学校生活最後の夏休みが、主な物語として描かれます。高木さんと西片の二人の関係性はもちろん、脇を固めるキャラにも見せ場を用意し、彼ら彼女らにとっても思い出深い最後の夏休みだったことが描かれ、好感が持てます。
メインとなる西片と高木さんの関係については、偶然見つけた子猫を二人でかいがいしく面倒を見るシーン、虫送りのシーン、夏祭りのシーンと、どのシーンからも、二人の思いが伝わってきてキュンとなります。互いに意識しながらも、その思いをはっきり口にできずにいる二人に、もどかしさと初々しさを感じ、誰もが自身の甘酸っぱい初恋を思い出すのではないでしょうか。主人公たちは中学生で、恋愛初心者であるものの、まだまだ子供の男子に対してちょっぴり大人の女子という構図がとてもいいです。
また、舞台となる小豆島がとにかく素敵に描かれていて、ノスタルジックな気持ちになれます。以前に一度だけ訪れたことがあり、その時も日本の原風景を見るようで風光明媚な素敵なところだと感じましたが、本作でもその魅力は存分に伝わってきます。虫送りという行事は知りませんでしたが、実際に行われているようなので、その季節にぜひもう一度訪れ、ついでにロケ地を聖地巡礼したくなりました。こんな自然に育まれたからこそ、作中の人物はみんな魅力的なんだなと改めて感じました。
あと、エンドロールの歌もとてもよかったです。I WiSH「明日への扉」の歌詞、カバーする高橋李依さんの優しい歌声、映し出されるテレビシリーズの映像が一体となって、西片と高木さんの軌跡を描き出し、心に深く沁みてきます。そしてラストシーンで描かれるのは…。完全にとどめを刺されました。
今回は上映後に舞台挨拶ライブビューイングがあり、キャストや監督らの話が聞けたのもよかったです。中でも、楽曲や劇伴の大切さを語る梶裕貴さん、「スタッフ含めて誰ひとり1話も手を抜かなかった」と語る高橋李依さんの言葉が印象的でした。キャスト、スタッフ全員が全力を注いで作ったからこそ、ファンの心をつかむ素敵な作品になったのだと思います。