劇場公開日 2021年12月24日

「ドキュメンタリーの根性とセンス」香川1区 菜野 灯さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5ドキュメンタリーの根性とセンス

2023年3月1日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

前作のドキュメンタリー「なぜ君は総理大臣になれないのか」が感動したので、続編が出ていることを知り、観てみた。小川淳也というまっすぐで誠実で繊細ながらも、魑魅魍魎が棲むような政治の世界に生きる男を追っている。
滑稽でもありながらも、いや、だからこそ、応援したくなる。この人を応援すればたのしい、ワクワクすると思える。もっと言えば、少なくともきちんと話しは聞いてくれるという気がする。激務であることが伝わってくるので体力勝負で政治は体力だとも思う。
着目シーンでいえば、懇意にしている老成した政治ジャーナリストに熱くなって思いをぶつけて、後になって電話で謝っているシーンは滑稽でありながらも誠実さを象徴するシーンだし、最後辺りの選挙戦のクライマックスで、自民党候補を破って当選したときに、娘さんが、父が負けるたびに正直ものがバカをみると思ってきたんですが、声が届くとき、報われるときもあるだと、途中、涙ながらに言うシーンは感動。
ドキュメンタリーは編集が勝負だと思っていながらも、材料はとにかくイメージを思い描きながらも、現実を予測しながらも、カメラの位置、画角を準備して回し続け、膨大な録画データのどこを切り、どうやってつなげるかという根性とセンスも、この映画には詰まっている。
155分。長くは感じなかった。

菜野 灯