「本当に大切な事は…」パーフェクト・ノーマル・ファミリー MARさんの映画レビュー(感想・評価)
本当に大切な事は…
ある日突然両親の離婚を言い渡された11歳の少女、エマ。離婚の理由はお父さんが女性になりたいと希望した為、母親から言い出したもの。大好きだった父が女性になるという現実を目の当たりにし、複雑に揺れ動くエマの心を描いた作品。
父親の性転換に関し、拒絶に近い対応を見せる母親。無理もないよな…。対して、寛容的な態度をみせるのはエマの姉、カロリーネ。そしてエマは…。
全体を通し、エマにとって厳しすぎる現在の現実と、良かった頃の思い出が詰まったホームビデオのシーンが繰り返され、そのコントラストが非常に印象的。
いやぁ~やっぱり非常に難しい問題ですよね。
ちょっと自由過ぎるように見える父親。母親との約束も破り、女性の格好で娘達の前に…。
憤慨する母親をよそに、女性の名前で呼んでほしいとまで言い出す始末。正直ワタクシ自身も、母親と同じ気持ちになっていたが…。
でもこれも、娘たちを愛するからこそ本当の自分を受け入れてほしいという父親の願いでもあったのかな。
そしてエマの気持ちやいかに。本件に関し寛容な姉程ではないが、全体を通して、女性となる父親を完全に拒絶している程ではない(ように見える)エマ。
一緒に旅行に行き、踊り楽しむ笑顔には、やはり父親が好きだという気持ちは消えていない。
それでも、友人達やその他第三者が絡む場面が来る度、思う所あるエマは問題を起こしてしまう。
どうなんでしょう?やはり本人にしかわからない、多感な時期の少女の気持ちがあるのでしょう。
クライマックスに向けての流れは切なかった。どんな形になっても、やはりエマの中にある根底の気持ちは…。ワタクシ自身、自由に振る舞う父親の気持ちが理解できなかったが、僅か11歳の少女が見せた姿に、ハッとさせられた気持ちになった。
男か女かではなく、本当に大切なのは、好きな人がその人である、ということなのかな。子どもながらそんな父親と向き合おうとするエマに心が洗われる。そして、幸せのホームビデオに追加された場面は…。
厳しくも、幸せを感じることのできる暖かな作品だった。