劇場公開日 2022年1月21日

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「【「さがす」の意味が深い。ラストまで目を離せない物語構成に魅せられます】」さがす 3104arataさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5【「さがす」の意味が深い。ラストまで目を離せない物語構成に魅せられます】

2022年5月28日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

笑える

知的

難しい

・2022年公開の日本のヒューマンサスペンス映画。
・金銭的な苦労をしながらも仲睦まじく生活する父 智 と娘 楓(中学生)。ある日、智は「電車で300万の懸賞金がかけられた連続殺人犯をみかけんた」「そんな金があったらなぁ」と楓に伝える。しょうもない、と聞いていた楓だが、翌日、智が失踪。困った楓は父を探し回っていると父の働く日雇い現場で父と同じ名前で働く連続殺人犯が。一体何が起こったのか。その真相と父の居場所を見つけるべく、楓はさらに探し回ることに。父は一体なぜいなくなったのか。一体どこにいるのか…  という大枠ストーリー。

[お勧めのポイント]
・「さがす」の意味が深い
・智(佐藤二郎さん)、楓(伊藤蒼さん)の演技が抜群
・読めない物語展開に引き込まれる

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[物語]
・この作品は大きく2つの軸で楽しめました。一つ目は、父 智は「なぜ失踪したのか」「どこに行ったのか」というミステリーに近いサスペンス要素。そして、もう一つは、「さがす」の意味。シンプルな言葉であり、それがタイトル。だからこそ、観客としては「単純に父をさがすだけではないだろうなぁ」と深読みしながらその趣旨を探ろうとします。真意不明なまま鑑賞し、ラストで「さがす」意味がはっと分かると「ふ、深い…」と感嘆。しかも、論理的には明示せず、もう一度物語を観て考察をしたくなるように作られているのです。他の人にも意見を聞きたくなる横に広がる映画でした。

[演出]
・靴底のガムを取るシーン、ラストの卓球のシーン、とても印象的に演出されています。ここに片山監督の哲学が隠れているような気がしました。その哲学を観客に対して、台詞や文字にはしないまでも、映像シーンとして「魅せている」ところも好きです。暗示がすぎる演出だと読み飛ばしてしまうことが多々あります。が、「これ」とは言わないまでも「重要だよ」とわかりやすく提示してくれる演出のように思いました。
・そういう意味では、哲学的でありながら、わかりやすく演出されている映画、だと思います。

[映像]
・泥臭く生きる大人、未来に希望ある子供の雰囲気が共存したような映像に感じました。小汚い智の半面、妙に小奇麗な楓。その2人を取り巻く周囲もそのように構成されているようで、泥臭い世界に透明純粋なものが入り込んでいくような映像に感じました。

[音楽]
・際立って感じたことはありませんでした。

[演技・配役]
・佐藤二郎さん、評価分かれそうですね。笑 個人的には凄く好きな演技でした。普段、求められているシュールな笑いを生み出す演技の90%が封じられた状態でシリアスな演技です。ですが、残りの10%分がそのシリアスさと非常にうまく絡み合って、リアリティが生み出されているように感じます。佐藤二郎さんに対する固定観念がない方なら、一気に引き込まれると思います。佐藤さんの演技を観るときに、どうしても邪魔された個人的な固定観念は「遠い目をするとき(はシュールな笑いを演出する方法と捉えてしまう)」でした💦
・楓役の伊藤蒼さん、凄いですね。私は初見の方でした。苦労の中でも明るく生きている関西系女の子をはっきりと魅せてくれます。彼女たち親子の境遇の中でもつつましい幸せを感じながら生きている希望を感じます。にもかかわらず、ラストで見せる深く思慮的な行動。なんでも発言する子が、多くは語らずに、心で父と会話する。なんて聡明な子供なんだ…と驚嘆です。

[全体]
・ミステリアスなサスペンス。そして、「さがす」の意味。とても見応えのある映画でした。
・見終わった後に、自身の日常生活に落とし込んだ哲学、のようなものはありませんでした。しかし、この物語を「なぜこのように構成したのか」「彼らは何を思い、どんな行動をしたのか」という哲学はしっかりと感じ取ることができました。そういう意味では寄り添う共感、というよりは趣深い物語を傍観するイメージです。にもかかわらず、面白い。映画館で観ても「よかった」と思える映画だと思いました。ありがとうございました。

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3104arata