リフレクションのレビュー・感想・評価
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これだけ観ても分からない
シアター・イメージフォーラムで隔日上映とこちらのスケジュールの関係で『アトランティス』よりも先に『リフレクション』を鑑賞。『アトランティス』を観る前に『リフレクション』だけを先に観た印象としては、「ぽかーん」である。戦争によるPTSDの話であるのは分かるにしても、前半の捕虜体験と後半の愛娘の溺愛ぶりがどうにもつながらない。
前半での元嫁の(『アトランティス』の主人公を演じたアンドリー・ルィマルークが、その名もアンドリーで演じる)パートナーを情けで殺害したのはやむにやむを得ない状況であったとしても、後半での主人公のマンションの窓にぶつかって死んだ鳩の火葬だの、落馬による娘の骨折とドローンのプレゼントだの、ランニング中に公園で野良犬の集団の襲撃だの(個人的にはこれが一番ショッキング)、ラストシーンの舞台での足音当てだの、「なんじゃこりゃ?」というエピソードのオンパレードである。
ただ、『リフレクション』を観た翌日に『アトランティス』を観て、『リフレクション』がPTSDを被った兵士(この映画では軍医)がどうでもよい些事に遭遇することで日常を回復する映画だということがようやく腑に落ちた。しかし、この『リフレクション』だけみてもそのことは実感できない。その点では、前作を観ずに次作を観た方が悪かったのかもしれないが、形式的には独立の映画であるのだから、それだけで完結すべきではないのか。マーベル映画じゃあるまいし。
それにしても、アンドリーを恋してやまない元妻に、またそのアンドリーと自分を比較して「なんでパパは志願しないの?」と戦場に行くように暗に勧める娘(考えてみれば、これもひどい娘だ)に、自分こそが彼のとどめを刺したことを黙っているという偽善に基づいて、元妻と愛娘との家族の再団らんなどあり得るのだろうか。どこかで絶対に最悪な形で破綻することが見える。その点で、ポスターでのこの映画の謳い文句は「魂の回復を描く」であるが、主人公のロマン・ルイツキーの「魂の回復」はうわべだけのものに過ぎないのではないだろうか。ある意味、『アトランティス』よりも業の深い映画だし、現実も過酷である。
救われない鳥と群れる犬
冒頭の白衣の子ども達と、白衣の大人達。どうにも始まりから、死の匂いが拭いきれない。救われない鳥は、ロシア連邦人道支援物資の世話になれとでも、言いたいのでしょうか。
捕虜交換や、捕虜虐待疑惑の報道を、よく耳にするようになりました。ただビジュアルがないと、ふーんで終わっちゃう。当然、映画は、創り手の思惑が編集される。事実ではない。ただこの映画が創られたことは、事実です。創り手の思惑は、何処にあると思いますか。
死に抗えない記憶と、地獄の番犬に噛みつかれながらも、ヒトは生を全うする。だって、ここなら、家族の足音がするから。地獄の底辺にも、希望の足音くらい、あってもいいよね?。
さて、明日、飛んで死に入るリフレクションを見るのは、誰かな。本作をエンタメ映画として片付けるか、私達の明日のリフレクションとするかは、未来を生きる皆様が、ご決断下さい。
「戦争は女の顔をしていない」
クニ同士の戦争は終わっても、1人1人の戦争の記憶との闘いは、決して終わらない。
私、マンガ版しか読んでませんけど、近日、映画版も公開されるようです。タイトルは「戦争と女の顔」。チェックしてね。
錯覚の空
2014年、ロシアによるクリミア半島侵攻をきっかけに、戦場に赴こうとした医者が捕虜になり、癒えない傷を抱えたままキーウに戻ってからの様子を描いた作品。
終始静かで、かなりの長まわしの1シーンをいくつもつなぎ合わせてできたような作品。
医師としてウクライナ東部の戦場に向かうも、所謂ドネツク人民共和国とかいう場所に不法侵入したとされて、拘束されてしまう。
前半は捕虜(従軍医師?)として酷い仕打ちを受けるセルヒーの様子が描かれる。直視するのも憚られる程の拷問の数々。本当に怖いですね。こんなご時世、もはやこんな事言う方がおかしいのかもしれないが・・・ホント良心は痛まないのだろうか?何故こんなことができるのか。。
後半は街に戻ったセルヒーが、自分を取り戻していく様が描かれていく。
・・・ということで良かったのかな?
全体を通し、何をしているのか、何を伝えたいのかわかりずらい。特に後半。セルヒーが娘や元妻(?)、そしてアンドリーを想い、苦しみつつも自分を取り戻していくというのは何となくわかるけど。
犬ってあんなに強いのか・・・?
最後の訓練(ゲーム?)も何がしたいのかよくわからず。。
まぁ最後の3人の「画」に意味があるような気もするが。
セルヒーは何を思いアンドリーを・・・?それでいて、彼の為に、娘達の為にした行動。。
この題材でもっとストレートにわかりやすいドラマにしてたら高評価だったかも。
ストーリーだけを見れば、狂おしくも心に響く良いものなんだろうけど、如何せん描き方がとにかくスローというが長ったらしいというかという感じで、この現実を考えさせられはするけれど、単純に映画作品としては心を捕まれるほどではなかった。
感想とあらすじはおさえていこう。
アトランティスよりは分かりやすかったかな。
フィクションだけどノンフィクション。現実もこうなんだろうと思う。
ラストのシーンは???が多い。多分、こうか?と思うが…
葬送
ロシアのクリミア侵攻が始まった戦争元年の2014年、従軍医師となり拿捕された医師と家族の話。
あらすじを読んでいないと、どこに何しに行って検問所を通ろうとしたかも良くわからない中、襲われて捕虜になり…。
アトランティスと続けて観賞したけれど、この監督さんは基本引きの固定カメラの映像がメインなのですね。
観ていれば後でわかるけれど、前述したように誰が何をしようとしているのかわからない描写が多く入って来にくいし、その割に余白が非常に非常に非常に多く、セルヒーとアンドリーの関係も終盤になってやっと入ってきたり。
野犬の件はその前に仏教が何たらのセリフもあったし、そういうことか?と思ったら、全然そんなんじゃないし、ラストは再構築?
1/3ぐらいの尺ならもうちょい評価出来るけど…。
ロシアの非道に壊された日常
ウクライナのバレンチヌ・バシャノビチ監督が撮った、ロシアのウクライナ侵攻(2014~のクリミア半島侵攻)を題材にした映画。
同監督の『アトランティス』(2019)と対になる作品。
「リフレクション」=「鏡映」=「窓に映った空」。
見えない壁(=マンションの窓)にぶつかった鳩は、墜落して死に至る。
その姿が、日常を過ごしていたウクライナの人々に重なっていく。
(2022年に急にロシアが侵攻したわけではなく)
「クリミア半島を占領しに来た2014年から戦争は継続していて、日常は破壊され続けている」
「戦場から帰ってきたウクライナ人たちは皆、PTSDで苦しみ、支援するプログラムもなく、多くの自殺者を出し続けている」
という現実のつらさを、主人公のセルヒーに重ねて表現し、非道さを訴えていました。
ただ、そういった悲惨さだけではなく。
セルヒーが、監禁された収容所で、元妻の再婚相手であるアンドリーを安楽死させるシーンがあり。
これがロシア兵の拷問で死にかけていて苦しませたくなかったからなのか、妻子を取り戻せるチャンスと思って(または内心恨んでいて)殺したのか……
どちらともとれる表現だったのが怖く。
戦争の狂気と相まって、恐怖に背筋に冷や汗が流れました。
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